ホワイトデー
放課後。
私は日直の仕事で遅くまで残っていた。
教室で日誌を書きながら、今日のできごとを振り返る。
(珠理奈、結局私にはクッキーくれなかったし…私だってチョコあげたのに。しかも手作り。まあ失敗したけど…)
「ほんとなんなの…」
私は友達認定すらされていないのだろうか。
昔から当たり前に一緒にいすぎて、家族同然と思われているのかもしれない。
『いるって言ったらどうする?』
昼休みの言葉が頭の中で再生される。
(あれはどういう意味…?冗談?)
日誌を一ヶ月前までさかのぼる。
その日の日直は珠理奈だった。
『今日はバレンタインデー!』
かわいらしい字にチョコのイラストが添えられていた。
日誌を一ヶ月後に戻して、続きを書く。
『今日はホワイトデー』
勝手に手が動いていた。
(はっ!いかんいかん。私、こういうこと書くキャラじゃないし)
慌てて消しゴムでその文字を消した。
日誌を完成させて、ペンケースをスクールバックにしまう。
(そろそろ帰るか…)
スクールバックのチャックを閉めていると、突然教室の扉がガラガラと開いた。
「玲奈ちゃん!いた!」
ついさっきまで、私の脳内を支配していた悪しき存在の登場だ。
「珠理奈、まだいたの?」
「うん。クッキーやっと渡し終わったから…」
「…あっそ」
なんとなく嫌な気持ちになって、当たるような返事をしてしまった。
(珠理奈は何も悪くないのに…)
珠理奈はずんずんと歩いてきて、私のひとつ前の席のいすを引き、そこに腰掛けた。
「玲奈ちゃん」
「…何?」
空になった大きな紙袋の横にあった、小さな紙袋。
今朝、私が中身を聞いたら内緒と言われたもの。
それをこちらに差し出す。
「これ、バレンタインのお返し」
紙袋を開けると、そこには透明な袋に包まれたカップケーキが入っていた。
「クッキーじゃないの…?」
「玲奈ちゃんのチョコが一番おいしかったから。玲奈ちゃんには、みんなとは違うお返し作りたいなあって」
「は?嘘でしょ」
「うそじゃないよ。ほんとにおいしかったもん」
「絶対嘘。ちゅりとか真那が作ったやつのほうがおいしい」
あんな失敗作より他の子のチョコの方が絶対においしい。
ちゅりのフォンダンショコラも、真那の生チョコも、私ももらったから食べたけど、私のやつなんかよりはるかにおいしかった。
「ほんとなんだけどなぁ。とりあえず、それ食べてよ」
珠理奈に言われた私は仕方なく袋を開けることにした。
丁寧に結ばれたリボンをほどくと、ふわりと広がる甘い香り。
袋から恐る恐るカップケーキを取り出して、一口食べる。
「…おいしい」
「ほんと!?やったー!玲奈ちゃんに喜んでもらいたくてがんばったんだよ〜」
目の前で子犬のように喜ぶ珠理奈。
「このカップケーキ、他の子にもあげた?」
「んーん、玲奈ちゃんだけだよ」
「あっそ…」
いつものように冷たく返事したつもりだったけど、喜びが滲み出ていたのが自分でもわかっていた。
「…バカ珠理奈」
「え!?なんで!?私なにもしてないよ!」
「うるさい。早く帰るよ」
喜んでいる自分がなんだか恥ずかしくて、ごまかすようにいつも通り冷たく当たる。
私はカップケーキを袋に入れ直して、リボンを丁寧に結んだ。
そしてそれを紙袋に入れて、大切に抱きしめた。
スクールバックを肩にかけて、片手で日誌をもつ。
「置いて帰るからね!」
「ま、まって玲奈ちゃん!置いてかないでよ!」
私が早歩きで扉まで向かうと、珠理奈は慌てて追いかけてきた。
(こんな関係が、ずっと続けばいいのになあ)
そう思いながら、私は最後の日直の仕事として教室の鍵をかけた。
私は日直の仕事で遅くまで残っていた。
教室で日誌を書きながら、今日のできごとを振り返る。
(珠理奈、結局私にはクッキーくれなかったし…私だってチョコあげたのに。しかも手作り。まあ失敗したけど…)
「ほんとなんなの…」
私は友達認定すらされていないのだろうか。
昔から当たり前に一緒にいすぎて、家族同然と思われているのかもしれない。
『いるって言ったらどうする?』
昼休みの言葉が頭の中で再生される。
(あれはどういう意味…?冗談?)
日誌を一ヶ月前までさかのぼる。
その日の日直は珠理奈だった。
『今日はバレンタインデー!』
かわいらしい字にチョコのイラストが添えられていた。
日誌を一ヶ月後に戻して、続きを書く。
『今日はホワイトデー』
勝手に手が動いていた。
(はっ!いかんいかん。私、こういうこと書くキャラじゃないし)
慌てて消しゴムでその文字を消した。
日誌を完成させて、ペンケースをスクールバックにしまう。
(そろそろ帰るか…)
スクールバックのチャックを閉めていると、突然教室の扉がガラガラと開いた。
「玲奈ちゃん!いた!」
ついさっきまで、私の脳内を支配していた悪しき存在の登場だ。
「珠理奈、まだいたの?」
「うん。クッキーやっと渡し終わったから…」
「…あっそ」
なんとなく嫌な気持ちになって、当たるような返事をしてしまった。
(珠理奈は何も悪くないのに…)
珠理奈はずんずんと歩いてきて、私のひとつ前の席のいすを引き、そこに腰掛けた。
「玲奈ちゃん」
「…何?」
空になった大きな紙袋の横にあった、小さな紙袋。
今朝、私が中身を聞いたら内緒と言われたもの。
それをこちらに差し出す。
「これ、バレンタインのお返し」
紙袋を開けると、そこには透明な袋に包まれたカップケーキが入っていた。
「クッキーじゃないの…?」
「玲奈ちゃんのチョコが一番おいしかったから。玲奈ちゃんには、みんなとは違うお返し作りたいなあって」
「は?嘘でしょ」
「うそじゃないよ。ほんとにおいしかったもん」
「絶対嘘。ちゅりとか真那が作ったやつのほうがおいしい」
あんな失敗作より他の子のチョコの方が絶対においしい。
ちゅりのフォンダンショコラも、真那の生チョコも、私ももらったから食べたけど、私のやつなんかよりはるかにおいしかった。
「ほんとなんだけどなぁ。とりあえず、それ食べてよ」
珠理奈に言われた私は仕方なく袋を開けることにした。
丁寧に結ばれたリボンをほどくと、ふわりと広がる甘い香り。
袋から恐る恐るカップケーキを取り出して、一口食べる。
「…おいしい」
「ほんと!?やったー!玲奈ちゃんに喜んでもらいたくてがんばったんだよ〜」
目の前で子犬のように喜ぶ珠理奈。
「このカップケーキ、他の子にもあげた?」
「んーん、玲奈ちゃんだけだよ」
「あっそ…」
いつものように冷たく返事したつもりだったけど、喜びが滲み出ていたのが自分でもわかっていた。
「…バカ珠理奈」
「え!?なんで!?私なにもしてないよ!」
「うるさい。早く帰るよ」
喜んでいる自分がなんだか恥ずかしくて、ごまかすようにいつも通り冷たく当たる。
私はカップケーキを袋に入れ直して、リボンを丁寧に結んだ。
そしてそれを紙袋に入れて、大切に抱きしめた。
スクールバックを肩にかけて、片手で日誌をもつ。
「置いて帰るからね!」
「ま、まって玲奈ちゃん!置いてかないでよ!」
私が早歩きで扉まで向かうと、珠理奈は慌てて追いかけてきた。
(こんな関係が、ずっと続けばいいのになあ)
そう思いながら、私は最後の日直の仕事として教室の鍵をかけた。
4/4ページ