ホワイトデー
そして、あれから一ヶ月、今に至る。
ふと珠理奈の方を見ると、大きめの紙袋を持っていることに気付いた。
「珠理奈、それ何?」
「あー、これ?ホワイトデーのお返し!」
紙袋の中身を見ると、透明のラッピング袋の中に何枚かクッキーが入っていた。
その袋は、ざっと数えて20個以上。
「みてみて!今年はクッキー焼いたんだ〜」
珠理奈は紙袋からラッピング袋のひとつを取り出して、自慢気に私に見せびからす。
焼き目がちょうどいい、おいしそうなクッキーが視界に入る。
珠理奈はこう見えて、意外と料理やお菓子作りが得意なのだ。
(これで私より乙女なの、ほんとにさあ…)
この女がモテるのも納得だろう。
私は心の中で首を縦にして頷いていた。
「珠理奈、全員ぶん焼いたの?毎年毎年、大変でしょ。やめたら?」
「えー、だって、みんな気持ち込めて贈ってくれてるんだもん。その想いを無下にするのはできないよ」
(はあ。こいつはどこまでたらしなんだ…)
どうせ告白されても断るくせに、こういうところはきっちりしているのだから、結果的に思わせぶりみたいになってしまう。
それに本人は気づいていないのだ。
(罪な女め…)
大きいの紙袋と一緒に、少し小さめの紙袋があるのが見えた。
「珠理奈、それは?」
「え!?あー、これは玲奈ちゃんには内緒!」
「あっそ」
私に見せられないお返しがあるのだろうか。
(まさか本命の子でもいるの?)
(…珠理奈に限ってそれはないか)
私は話しかけてくる珠理奈のことは気にせずに学校への道を歩いた。
学校に着くと、珠理奈はいろんな女の子に声をかけた。
「あ、ちゅりー!おはよう!この前はフォンダンショコラありがとうねえ」
「真那〜!!おっは〜!あの生チョコって手作りだよね??まじでおいしかった!」
(数えきれないくらいもらっておいて、誰からどんなチョコもらったまで覚えてるの?怖…)
珠理奈は先月のバレンタインデーで恐ろしい数のチョコレートをもらっていた。
あまりのモテっぷりに学校では話す隙がなかったほどだ。
別に話しかけたかったわけではなくて、あくまで委員会で聞きたいことがあっただけなのだが。
登校中に渡しておいて正解だったなと、そのときばかりは思うのだった。
昼休み。
お弁当を食べる前に手を洗いに廊下を出ると、珠理奈は後輩の女の子を捕まえて声をかけていた。
「はい、これ、この前のお返し!クッキー!」
「あ、ありがとうございます…」
後輩の女の子は嬉しそうにクッキーを受け取ったが、何かを気にするようにそわそわしていた。
「どうかした?」
「あの、えっと…この前も言ったんですけど、私、珠理奈先輩のことが好きです!付き合ってくれませんか?」
いつもの光景だ。
私からしたら、よくこんな昼休みの廊下という混雑した目立つ場所で告白できるなと思うのだが、珠理奈は季節も場所も問わずよく告白されている。
私は手を洗いながらそっと耳を澄ませる。
(べ、べつに気になってるとかじゃないし。ただそこにいて、勝手に聞こえてくるだけだから…)
「ごめんね。前も言ったけど、付き合うのはできないんだ。」
いつも通りの返事。
珠理奈は、告白は必ず断る。
「どうしてですか…?好きな人でもいるんですか?」
(しつこいなこの子…)
私は石けんを手に絡ませて、蛇口をもう一度ひねった。
「いるって言ったらどうする?」
(え…?)
その瞬間、思わず蛇口を最大までひねってしまった。
「きゃ!玲奈さん、水出しすぎですよ!!」
「あ、ごめん…」
隣で手を洗っている愛李に指摘されて、慌てて蛇口を閉めた。
(あれ、珠理奈は…)
後ろを振り向くと、もう珠理奈はいなくなっていた。
ふと珠理奈の方を見ると、大きめの紙袋を持っていることに気付いた。
「珠理奈、それ何?」
「あー、これ?ホワイトデーのお返し!」
紙袋の中身を見ると、透明のラッピング袋の中に何枚かクッキーが入っていた。
その袋は、ざっと数えて20個以上。
「みてみて!今年はクッキー焼いたんだ〜」
珠理奈は紙袋からラッピング袋のひとつを取り出して、自慢気に私に見せびからす。
焼き目がちょうどいい、おいしそうなクッキーが視界に入る。
珠理奈はこう見えて、意外と料理やお菓子作りが得意なのだ。
(これで私より乙女なの、ほんとにさあ…)
この女がモテるのも納得だろう。
私は心の中で首を縦にして頷いていた。
「珠理奈、全員ぶん焼いたの?毎年毎年、大変でしょ。やめたら?」
「えー、だって、みんな気持ち込めて贈ってくれてるんだもん。その想いを無下にするのはできないよ」
(はあ。こいつはどこまでたらしなんだ…)
どうせ告白されても断るくせに、こういうところはきっちりしているのだから、結果的に思わせぶりみたいになってしまう。
それに本人は気づいていないのだ。
(罪な女め…)
大きいの紙袋と一緒に、少し小さめの紙袋があるのが見えた。
「珠理奈、それは?」
「え!?あー、これは玲奈ちゃんには内緒!」
「あっそ」
私に見せられないお返しがあるのだろうか。
(まさか本命の子でもいるの?)
(…珠理奈に限ってそれはないか)
私は話しかけてくる珠理奈のことは気にせずに学校への道を歩いた。
学校に着くと、珠理奈はいろんな女の子に声をかけた。
「あ、ちゅりー!おはよう!この前はフォンダンショコラありがとうねえ」
「真那〜!!おっは〜!あの生チョコって手作りだよね??まじでおいしかった!」
(数えきれないくらいもらっておいて、誰からどんなチョコもらったまで覚えてるの?怖…)
珠理奈は先月のバレンタインデーで恐ろしい数のチョコレートをもらっていた。
あまりのモテっぷりに学校では話す隙がなかったほどだ。
別に話しかけたかったわけではなくて、あくまで委員会で聞きたいことがあっただけなのだが。
登校中に渡しておいて正解だったなと、そのときばかりは思うのだった。
昼休み。
お弁当を食べる前に手を洗いに廊下を出ると、珠理奈は後輩の女の子を捕まえて声をかけていた。
「はい、これ、この前のお返し!クッキー!」
「あ、ありがとうございます…」
後輩の女の子は嬉しそうにクッキーを受け取ったが、何かを気にするようにそわそわしていた。
「どうかした?」
「あの、えっと…この前も言ったんですけど、私、珠理奈先輩のことが好きです!付き合ってくれませんか?」
いつもの光景だ。
私からしたら、よくこんな昼休みの廊下という混雑した目立つ場所で告白できるなと思うのだが、珠理奈は季節も場所も問わずよく告白されている。
私は手を洗いながらそっと耳を澄ませる。
(べ、べつに気になってるとかじゃないし。ただそこにいて、勝手に聞こえてくるだけだから…)
「ごめんね。前も言ったけど、付き合うのはできないんだ。」
いつも通りの返事。
珠理奈は、告白は必ず断る。
「どうしてですか…?好きな人でもいるんですか?」
(しつこいなこの子…)
私は石けんを手に絡ませて、蛇口をもう一度ひねった。
「いるって言ったらどうする?」
(え…?)
その瞬間、思わず蛇口を最大までひねってしまった。
「きゃ!玲奈さん、水出しすぎですよ!!」
「あ、ごめん…」
隣で手を洗っている愛李に指摘されて、慌てて蛇口を閉めた。
(あれ、珠理奈は…)
後ろを振り向くと、もう珠理奈はいなくなっていた。