第一話 はじまりの色
福岡県立博多女子高校。
どこにでもある普通の公立女子校。
建物も古びて、制服に真新しさはない。
そんな学校での、いつも通りの昼下がり。
四限目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
お弁当を手に取って、教室を出る。
午後の気だるい授業のことを考えながら、屋上へと向かった。
扉を開けると、いつもお昼を共にする人物が手を振って私の名を呼んだ。
「咲良ー!こっちこっち」
彼女が敷いたレジャーシートに駆け寄って、その場に腰掛ける。
「さっしー、いつもありがとう」
「いいよべつに。指原暇だから笑笑」
さっしーは、ひとつ上の先輩。
入学直後に突然声をかけられて、成り行きで仲良くなった。
はじめて話したときはとっても変な人だと思ったし、今でもそのイメージは変わらない。
けれど、最初にタメ口でいいよと言ってくれたからか、話しやすいし、困ったときには相談に乗ってくれる。
先輩らしさはあまりないけれど、大切な友達だ。
お弁当箱のふたを開けて、面倒だった授業など、今日のことを話しながら昼休憩を楽しむ。
「あのさ、今日の活動のことなんだけど」
「うん。どうかした?」
「それが…活動内容が…我らがアイドル同好会からは、少し逸れちゃうかもしれないんだよね…」
「はあ…」
私たちは、ただの友達ではなく、同じ部活動に所属する仲間だ。
その部活は、『アイドル同好会』。
熱狂的なドルオタであるさっしーが、ひとりで開設した部活だ。
私に声をかけた理由は、部活の勧誘なわけで。
活動内容を聞くに、週に一回空き教室で推しについて語り合うだけの簡易的なものだったので、部活に入る予定のなかった私はそのまま入部したのだった。
部活とは関係なく、毎日屋上で食事をするくらいには、私たちの仲はよい。
「実は指原…新しい推しができまして!」
「また?今度はなんのアイドル?」
彼女はあれやこれやと理由をつけてはさまざまなアイドルを推している。
これが本当のお付き合いなら、飛んだ浮気者だと、推しがいない私は内心思っていた。
「アイドルじゃないんだよね…」
「女優さんとか?珍しいね」
「それも違う。まあ、そっちの方がまだ近いかも」
「じゃあ、何?」
「バレエダンサー」
「…え?」
予想の斜め上の回答に、思わず変な声が出た。
「バレエって…あの、踊る方のバレエ?球技じゃなくて」
「そうだよ、そのバレエ!」
バレエなんて、アイドルばかり推しているさっしーには今まで縁もゆかりもなかった。
どういう風の吹き回しか、疑問に感じてしまう。
「ほんとは新しい推しっていうのはちょっと嘘。実は一回だけその子とは会ったことがあって…二年生になる前に東京で公演を見て、一目惚れしたんだ。でも東京だからなかなか会えなくて…しかしなんと!この度その子がこっちにくることになったんですよ!」
「はあ…」
熱烈に語り出す姿に、適当な返事をするしかなかった。
「つまるところ、今日その子のバレエの公演があるから見に行こうってこと!」
「今日!?」
「大丈夫、初回ってことでチケ代は指原が奢るから」
ウインクしながらドヤ顔で言われて、思わず首を縦に振ってしまった。
「まあ、それなら…」
「じゃ、決まり!放課後校門に集合ね!」
いつの間にかお弁当を食べ終わったさっしーは片付けをしてすぐその場からいなくなった。
「はや…っていうかこれ、さっしーのレジャーシートじゃん!放課後返せばいいか…」
残りのお弁当を食べて、レジャーシートを畳んでから私は教室に戻った。
どこにでもある普通の公立女子校。
建物も古びて、制服に真新しさはない。
そんな学校での、いつも通りの昼下がり。
四限目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
お弁当を手に取って、教室を出る。
午後の気だるい授業のことを考えながら、屋上へと向かった。
扉を開けると、いつもお昼を共にする人物が手を振って私の名を呼んだ。
「咲良ー!こっちこっち」
彼女が敷いたレジャーシートに駆け寄って、その場に腰掛ける。
「さっしー、いつもありがとう」
「いいよべつに。指原暇だから笑笑」
さっしーは、ひとつ上の先輩。
入学直後に突然声をかけられて、成り行きで仲良くなった。
はじめて話したときはとっても変な人だと思ったし、今でもそのイメージは変わらない。
けれど、最初にタメ口でいいよと言ってくれたからか、話しやすいし、困ったときには相談に乗ってくれる。
先輩らしさはあまりないけれど、大切な友達だ。
お弁当箱のふたを開けて、面倒だった授業など、今日のことを話しながら昼休憩を楽しむ。
「あのさ、今日の活動のことなんだけど」
「うん。どうかした?」
「それが…活動内容が…我らがアイドル同好会からは、少し逸れちゃうかもしれないんだよね…」
「はあ…」
私たちは、ただの友達ではなく、同じ部活動に所属する仲間だ。
その部活は、『アイドル同好会』。
熱狂的なドルオタであるさっしーが、ひとりで開設した部活だ。
私に声をかけた理由は、部活の勧誘なわけで。
活動内容を聞くに、週に一回空き教室で推しについて語り合うだけの簡易的なものだったので、部活に入る予定のなかった私はそのまま入部したのだった。
部活とは関係なく、毎日屋上で食事をするくらいには、私たちの仲はよい。
「実は指原…新しい推しができまして!」
「また?今度はなんのアイドル?」
彼女はあれやこれやと理由をつけてはさまざまなアイドルを推している。
これが本当のお付き合いなら、飛んだ浮気者だと、推しがいない私は内心思っていた。
「アイドルじゃないんだよね…」
「女優さんとか?珍しいね」
「それも違う。まあ、そっちの方がまだ近いかも」
「じゃあ、何?」
「バレエダンサー」
「…え?」
予想の斜め上の回答に、思わず変な声が出た。
「バレエって…あの、踊る方のバレエ?球技じゃなくて」
「そうだよ、そのバレエ!」
バレエなんて、アイドルばかり推しているさっしーには今まで縁もゆかりもなかった。
どういう風の吹き回しか、疑問に感じてしまう。
「ほんとは新しい推しっていうのはちょっと嘘。実は一回だけその子とは会ったことがあって…二年生になる前に東京で公演を見て、一目惚れしたんだ。でも東京だからなかなか会えなくて…しかしなんと!この度その子がこっちにくることになったんですよ!」
「はあ…」
熱烈に語り出す姿に、適当な返事をするしかなかった。
「つまるところ、今日その子のバレエの公演があるから見に行こうってこと!」
「今日!?」
「大丈夫、初回ってことでチケ代は指原が奢るから」
ウインクしながらドヤ顔で言われて、思わず首を縦に振ってしまった。
「まあ、それなら…」
「じゃ、決まり!放課後校門に集合ね!」
いつの間にかお弁当を食べ終わったさっしーは片付けをしてすぐその場からいなくなった。
「はや…っていうかこれ、さっしーのレジャーシートじゃん!放課後返せばいいか…」
残りのお弁当を食べて、レジャーシートを畳んでから私は教室に戻った。