第七話 真っ赤な色

福岡から東京に戻った私は、翌日職場に出勤していた。
残業中、まわりの先生は次々と退勤していくが、私と前田先生はまだ残っていた。
パソコンと向き合いながら、思考をめぐらせる。
(咲良の友達は、やっぱり指原さんだった。あの動揺具合…きっと、何か事情があって、この学校をやめたんだわ。その理由を、私は知りたい)
仕事を終わらせた私は、パソコンの電源を落とした。
そして、前田先生に近づいて、恐る恐る声をかけた。
「前田先生、相談したいことが…」
「何?」
前田先生は、パソコンの画面を見つめたたまま、いつものように冷たく返事をした。
「ここじゃちょっと…」
みんな帰っていくとはいえ、まだ他の先生たちもいる。
前田先生は、ため息をついて、席を立った。

フリースペースに移動して、自動販売機で缶コーヒーを買い、席につく。
「それで、話って?」
前田先生は缶コーヒーのタブを開けながら聞いた。
「実は…こないだの休みに、福岡の実家に帰省したんです。といっても、私は鹿児島の高校を卒業してからは、ずっと東京にいるので、福岡はお母さんと妹が住んでるだけなんですけど…」
「ふうん。それで?」
前田先生は、缶コーヒーを一口飲んで、興味がなさそうに相槌を打った。
「そのとき、妹の友達に会ったんです」
私は缶コーヒーを握りしめて、覚悟を決めた。
「名前は…指原莉乃」
その名前を告げたとき、前田先生の表情は変わらなかった。
けれど、眉毛がぴくりと動いていた。
「指原さんは、去年この学校にいたんですよね。私、名簿見ましたから。そして、指原さんがいたクラス、1年A組の担任は…前田先生。あなたですよね」
前田先生は、そっと目を閉じて、何も言わなかった。
「指原さんがなんで学校をやめたか、知ってますか?」
「…知らない。昔のことだから」
まぶたを開けた前田先生の瞳に、光はなかった。
「お願いです!妹の大切な友達なんです。教えてください…」
私は前田先生に深々と頭を下げる。
そのようすを見た前田先生は、ようやく口を開いた。
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