第七話 真っ赤な色

最後に足を運んだのは、秋元バレエ劇団の劇場だった。
きのう博多48の話で盛り上がったところだから、博多48のライブに行くか迷ったが、今のさっしーを元気づけるのは、やはりまゆゆしかいないと思い、劇場にやってきた。
一方で、私は久しぶりの鑑賞だった。
あんなことがあって以来、バレエを見るのは怖かったから。
でもさっしーのためならと、勇気を出してやってきた。
チケットを買ってホールへ入った。
しばらく行っていない間に、人が増えた気がする。
やっぱりさっしーのsns『まゆゆオタ』効果だろうか。
バズるのは嬉しいが、私の憧れだけは誰にもとられたくなかった。
そんな気持ちをよそにブザーが鳴り響いて幕が開いた。
舞台にたくさんのバレエダンサーたちが登場し、踊り出す。
今回の劇は『白鳥と湖』。
王子役のまゆゆが舞台の中心に立ち、美麗な動きを見せた。
「まゆゆ〜…!!」
ふと横を見ると、さっしーが小声をあげて、手で口元を押さえながら感動していた。
(よかった。さっしー、やっと元気になってくれたかな…)
連れてきて正解だったと思いながら鑑賞を続いていく。
そして、中央に白鳥がやってきた。
(はるっぴ…)
見ているこちらの目が回ってしまうほどの回転が、目の前で展開される。
その輝きは、完全に触れてはいけない美しい花だった。
だけど、私はそれに触れてしまった。
(私、ほんとにキスしたんだ…こんなに輝いている子と)
改めて、自分がしたことがいかにタブーだったかを実感した。
自分の唇に手を近づけて、そっと触れる。
もうずっと時が経っているはずなのに、まだあのときの温もりが残っているような気がした。

バレエが終わって、恒例の声出しOKパートに移行する。
『ギンガムチェック 恋の〜模様〜』
流行りの楽曲に合わせて、バレエダンサーたちがしなやかに、そしてかわいらしく踊り出す。
「まゆゆー!!!」
今日は突然連れて行ったから、いつものペンライトやうちわはないけれど、さっしーは全力で声を出して、応援の気持ちを伝えていた。
(ほんとに楽しそう…よかった)
私は舞台に視線を戻して、まゆゆの隣で踊るはるっぴを見ていた。
すると、一瞬だけはるっぴと目が合った気がした。
そして、次の瞬間、はるっぴの口元に笑みがこぼれた。
(まさか…今のって、私を見て…?)
いや、きっと勘違いだ。
あんなことをしてしまった私に、はるっぴに微笑んでもらえる価値なんてない。
一方的に近づいて、一方的に遠ざけて。
彼女から嫌われてしまってもおかしくないのに。
そんな私に笑いかけてくれるなんて、ありえない。
だから、今のは気のせいだ。
そう言い聞かせるしかなかった。
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