第七話 真っ赤な色
誰も言葉を発しないまま、重たい空気で少し遅い朝食は幕を閉じた。
私とさっしーはソファに座ってテレビを見ていた。
時刻は十二時を回って、お昼のワイドショーが流れ始める。
内容なんてまったく頭に入ってこなかった。
洗い物を済ませたお姉ちゃんが、手を拭きながらこちらへ歩いてくる。
「咲良。お姉ちゃん、買い物行ってくるね。お母さんにラインで頼まれちゃったから」
「あ、うん。わかった」
「咲良も指原さんとお出かけしたかったら勝手に出ていってくれていいからね。鍵だけちゃんとかけといてね」
「はーい」
お姉ちゃんはエコバッグと財布を持って家を出た。
ふとさっしーの方を見ると、テレビを見ているはずの目の焦点が合っておらず、痙攣する手を必死に押さえつけていた。
「さっしー…大丈夫?」
「え?う、うん。大丈夫、全然平気だから」
そう伝える唇すらも、上下に震えていた。
こんなに動揺しているさっしーははじめて見た。
いつもはお調子者で、でもどこか憎めないようなキャラクター。
そんな彼女が、今私の目の前でこんなにも怯えている。
その恐怖の正体がなんなのか、私にはわからなかった。
(お姉ちゃんが変なこと聞いたから?でも、べつに質問自体は普通だったし…どっちかっていうと、さっしーのリアクションの方が変というか…)
頭の中で思考を巡らせても、結論は出てこない。
さっしーは、私が困っていると相談に乗ってくれた。
だから、私だってさっしーが困っていることがあったら解決してあげたい。
でも、怖い。
いつも明るい彼女の闇を覗いてしまうような気がして。
その闇に触れるのが、私がしていいことかわからない。
それを、彼女が望むかどうかも。
「さっしー…お姉ちゃんと会ったことあるの?」
「ううん…はじめてだよ」
「そっか…」
そもそもさっしーはずっと福岡にいて、お姉ちゃんは大学から東京だから、知り合いなはずがない。
だとしたら、あの重たい空気はなんだったんだろう。
さすがの私でも、異質な時間だと感じたくらいだ。
もっとくわしく聞きたいけど、聞けない。
私が簡単に首を突っ込んでいい問題ではない気がしたから。
今の私にできることは、あてもない悩みを解決しようとするより、さっしーのそばにいることなんだと思う。
決意を固めた私は、さっしーの震える手に自分の手を重ねた。
「さっしー、今日バイトある?」
「ないよ。土日はいつも公演以外の時間はファミレスでバイトしてるんだけど、ファミレスの人にコンビニでもバイトしてるって言ったら、さすがに働きすぎって言われてシフト削られちゃってさあ…」
さっしーは落胆するように言った。
きっとファミレスの人はさっしーの体を考慮して削ってくれたんだろうけど、喜ばないのはある意味さっしーらしい。
私は彼女の両手を取った。
「じゃあ、遊びに行こうよ!」
私とさっしーはソファに座ってテレビを見ていた。
時刻は十二時を回って、お昼のワイドショーが流れ始める。
内容なんてまったく頭に入ってこなかった。
洗い物を済ませたお姉ちゃんが、手を拭きながらこちらへ歩いてくる。
「咲良。お姉ちゃん、買い物行ってくるね。お母さんにラインで頼まれちゃったから」
「あ、うん。わかった」
「咲良も指原さんとお出かけしたかったら勝手に出ていってくれていいからね。鍵だけちゃんとかけといてね」
「はーい」
お姉ちゃんはエコバッグと財布を持って家を出た。
ふとさっしーの方を見ると、テレビを見ているはずの目の焦点が合っておらず、痙攣する手を必死に押さえつけていた。
「さっしー…大丈夫?」
「え?う、うん。大丈夫、全然平気だから」
そう伝える唇すらも、上下に震えていた。
こんなに動揺しているさっしーははじめて見た。
いつもはお調子者で、でもどこか憎めないようなキャラクター。
そんな彼女が、今私の目の前でこんなにも怯えている。
その恐怖の正体がなんなのか、私にはわからなかった。
(お姉ちゃんが変なこと聞いたから?でも、べつに質問自体は普通だったし…どっちかっていうと、さっしーのリアクションの方が変というか…)
頭の中で思考を巡らせても、結論は出てこない。
さっしーは、私が困っていると相談に乗ってくれた。
だから、私だってさっしーが困っていることがあったら解決してあげたい。
でも、怖い。
いつも明るい彼女の闇を覗いてしまうような気がして。
その闇に触れるのが、私がしていいことかわからない。
それを、彼女が望むかどうかも。
「さっしー…お姉ちゃんと会ったことあるの?」
「ううん…はじめてだよ」
「そっか…」
そもそもさっしーはずっと福岡にいて、お姉ちゃんは大学から東京だから、知り合いなはずがない。
だとしたら、あの重たい空気はなんだったんだろう。
さすがの私でも、異質な時間だと感じたくらいだ。
もっとくわしく聞きたいけど、聞けない。
私が簡単に首を突っ込んでいい問題ではない気がしたから。
今の私にできることは、あてもない悩みを解決しようとするより、さっしーのそばにいることなんだと思う。
決意を固めた私は、さっしーの震える手に自分の手を重ねた。
「さっしー、今日バイトある?」
「ないよ。土日はいつも公演以外の時間はファミレスでバイトしてるんだけど、ファミレスの人にコンビニでもバイトしてるって言ったら、さすがに働きすぎって言われてシフト削られちゃってさあ…」
さっしーは落胆するように言った。
きっとファミレスの人はさっしーの体を考慮して削ってくれたんだろうけど、喜ばないのはある意味さっしーらしい。
私は彼女の両手を取った。
「じゃあ、遊びに行こうよ!」