第六話 花の色

気まずい沈黙を破ったのはさっしーだった。
視線を壁に追いやったさっしーの目に偶然入ったのは、私たちがまゆゆやはるっぴの推し活をする前に応援していた、福岡のご当地地下アイドル『博多48』の限定ポスターだ。
博多48は、める、みお、もりぽの三人で構成された、小さなライブハウスで歌っている売れない三人組。
48というのは適当につけた数字で、大して意味はないらしい。
「最近、博多48のこと全然見てないよね」
さっしーがぼそっとそう言ったのをきっかけに、久しぶりに検索をかけてメンバーの動画を見た。
ふたりでライブを見に行ったこと、握手会に行ったこと、放課後の教室で動画を見たこと…
そんなことを語り合っていたら、すっかり外は暗くなっていた。
私はさっしーの肩に頭を乗せて言う。
「やっぱり、さっしーと話すの楽しいな…ねえ、このままお泊まりしてもいい?」
この時間が終わってほしくなくて、ついそんなことを言ってしまった。
「あー…ごめん、泊まりは無理。おばさん絶対怒るから」
「そっか…じゃあ、私の家に泊まろうよ。今日ママ夜勤だから」
「わかった。一応おばさんに聞いてくる」
さっしーは私の頭を撫でて、ゆっくりと立ち上がり部屋を出た。
しばらくすると、さっしーが部屋に戻ってきた。
「泊まってきていいって。『電気代浮くからさっさっと行ってこい』だってさ」
さっしーは自嘲するように言った。
さすがにそれはひどいと思ったけれど、口には出せずにいた。

ふたりで手を繋いで、マンションへと帰宅した。
さっしーと一緒に晩ごはんを食べて、順番にお風呂に入ったあとは、布団に入って雑談をしたりmvを見て、そのまま寝落ち。
さっしーははじめてうちに来たのだが、とにかくリアクションが大きかった。
ママが作った冷めたごはんをチンしただけなのに、さっしーはやたら感動していたし、いつもシャワーだからなのだろうか、お湯の張った湯船を見た瞬間の叫び声が、洗い物をしているキッチンにまで響いてきた。
久しぶりに見たさっしーの幸せそうな表情は、なんだか私まで幸せな気分にさせられるものだった。
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