第六話 花の色
今日は金曜日。
梅雨のシーズンにしては珍しく、雨が降っていなかった。
放課後は、部活もなく、私のレッスンもなければさっしーのバイトもなく。
そして、公演もない。
だから、さっしーのおうちに遊びに行くことにした。
着いたのは、古い一軒家。
表札に書かれた名字は、『指原』ではない。
さっしーが鍵を開けて、私を中に招き入れる。
「さ、入って」
「お邪魔します」
玄関で靴を脱いで、丁寧に揃える。
居間のふすまに向かって、さっしーが声をかけた。
「おばさん、ただいまー」
返事はない。
「…じゃ、行こっか」
さっしーは苦笑いして二階への階段を登る。
私は小さい声でお邪魔しますと言って、彼女のあとをついていった。
軋む床を歩いて、少し塗装の剥げた茶色の扉をさっしーが開ける。
その先には、彼女の部屋が広がっていた。
六畳一間の空間は、壁に昔推していた福岡の地下アイドルのポスターが貼られ、床の一角にはまゆゆの公演に使用するペンライトやうちわがきれいに整頓されていた。
しかし、きれいなのはその一角だけで、床全体はお弁当の空箱や中身のないペットボトルなどを入れた袋が散乱していた。
「あー…ごめん咲良。散らかってて。明後日ゴミの日だから、許して?」
さっしーが手を前に合わせて平謝りする。
「大丈夫、気にしてないよ」
さっしーの家に遊びにきたのは、これで三回目。
一回目は、四月中旬。
まだはるっぴに出会う前。
アイドル同好会の活動の一環で、さっしーに誘われて見に行ったアイドルのライブで盛り上がって、そのまま家に上がり込んで語り合った。
二回目は、五月下旬。
はるっぴと友達になって少し経ったころ。
テスト勉強に付き合ってほしいと言われ、しぶしぶ着いていった。
そして、三回目が今日。
毎回部屋は散乱しているし、変わったところがあるとするならば、一回目のときはなかったまゆゆのコーナーができていることくらいだろうか。
そこだけはありえないくらいにきれいだ。
他の場所とは比べものにならないくらいに。
さっしーは家にいる女性のことをおばさんと呼ぶ。
いつもテレビの音が垂れ流される居間にいて、声も聞いたことがないし顔も見たことがない。
「さっしー、このお弁当の空箱、いつの?」
「一週間前かな…コンビニのバイトであまったやつもらったの」
「なるほど…」
話を聞くに、いつもバイトであまったコンビニ弁当を食べているらしい。
あのおばさんとやらは料理を作ってくれないのだろう。
そして、家の表札も含め、何らかの訳ありな家庭なのは、なんとなく察していた。
でも、私だって母子家庭だし、訳あり家族だからといって私たちの友情がなくなるわけではない。
だから、深くは聞かないことにしている。
梅雨のシーズンにしては珍しく、雨が降っていなかった。
放課後は、部活もなく、私のレッスンもなければさっしーのバイトもなく。
そして、公演もない。
だから、さっしーのおうちに遊びに行くことにした。
着いたのは、古い一軒家。
表札に書かれた名字は、『指原』ではない。
さっしーが鍵を開けて、私を中に招き入れる。
「さ、入って」
「お邪魔します」
玄関で靴を脱いで、丁寧に揃える。
居間のふすまに向かって、さっしーが声をかけた。
「おばさん、ただいまー」
返事はない。
「…じゃ、行こっか」
さっしーは苦笑いして二階への階段を登る。
私は小さい声でお邪魔しますと言って、彼女のあとをついていった。
軋む床を歩いて、少し塗装の剥げた茶色の扉をさっしーが開ける。
その先には、彼女の部屋が広がっていた。
六畳一間の空間は、壁に昔推していた福岡の地下アイドルのポスターが貼られ、床の一角にはまゆゆの公演に使用するペンライトやうちわがきれいに整頓されていた。
しかし、きれいなのはその一角だけで、床全体はお弁当の空箱や中身のないペットボトルなどを入れた袋が散乱していた。
「あー…ごめん咲良。散らかってて。明後日ゴミの日だから、許して?」
さっしーが手を前に合わせて平謝りする。
「大丈夫、気にしてないよ」
さっしーの家に遊びにきたのは、これで三回目。
一回目は、四月中旬。
まだはるっぴに出会う前。
アイドル同好会の活動の一環で、さっしーに誘われて見に行ったアイドルのライブで盛り上がって、そのまま家に上がり込んで語り合った。
二回目は、五月下旬。
はるっぴと友達になって少し経ったころ。
テスト勉強に付き合ってほしいと言われ、しぶしぶ着いていった。
そして、三回目が今日。
毎回部屋は散乱しているし、変わったところがあるとするならば、一回目のときはなかったまゆゆのコーナーができていることくらいだろうか。
そこだけはありえないくらいにきれいだ。
他の場所とは比べものにならないくらいに。
さっしーは家にいる女性のことをおばさんと呼ぶ。
いつもテレビの音が垂れ流される居間にいて、声も聞いたことがないし顔も見たことがない。
「さっしー、このお弁当の空箱、いつの?」
「一週間前かな…コンビニのバイトであまったやつもらったの」
「なるほど…」
話を聞くに、いつもバイトであまったコンビニ弁当を食べているらしい。
あのおばさんとやらは料理を作ってくれないのだろう。
そして、家の表札も含め、何らかの訳ありな家庭なのは、なんとなく察していた。
でも、私だって母子家庭だし、訳あり家族だからといって私たちの友情がなくなるわけではない。
だから、深くは聞かないことにしている。