第四話 近づく色

ーーースタジオにひとり取り残された私は、ようやく体を起こした。
鏡に映る自分の姿は、赤く染まった頬と、こぼした涙が印象的だった。
震える手で、唇にそっと触れる。
さっきのキスが、記憶をかすった。
「さくちゃん…」
名前を呼んでも、返事はない。
代わりに聞こえたのは、外の雨音だけだった。




ーーー夜の博多の街は、梅雨に先駆けて大雨だった。
傘もないまま、走り出す。
自分の体が濡れることは顧みなかった。
(私…ほんとに最低…これからどうしよう)
頭の中でさっきの出来事がフラッシュバックする。
私と彼女の色は、近づきすぎてしまった。
近づきすぎて、壊してしまうところだった。
これから遠のいていくことも、まだ知らずにーー。
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