第三話 輝く色
ゴールデンウィークも明け、私は東京へと帰った。
妹の咲良は元気でやっているようで安心した。
(来週帰れないかな…そろそろ中間テスト始まるから無理か〜)
秋葉原女子学園。
職員室での朝礼前。
スケジュールを確認しながら、ゴールデンウィークのことを思い出す。
(まさか咲良が今になってバレエやりたいなんて言い出すなんて…)
『お願い、ママ!追いつきたい人がいるの』
夜勤明けのお母さんに、咲良が必死に訴えていた。
(あれほど真剣な咲良、はじめて見たかも…)
私と咲良が離れ離れになったのは、私が高校二年生、咲良が小学四年生のとき。
小学生の咲良は、運動が苦手で、少し引っ込み事案な子だった。
今もそれは変わらないが、咲良の中にある芯の強さが垣間見えた気がした。
咲良が通うことになったバレエスタジオは、レベルが高くなるほど月謝も高くなる。
だから、一番下のクラスの咲良の月謝は他のクラスに比べるとそこまで高くないらしい。
しかし、レオタードやバレエシューズは実費なので、結果的にお金はかかるようだが。
お母さんは少し心配していたが、月謝が思ったほど高くないのと、咲良が珍しく本気だからということで、一緒にスタジオに行って契約していた。
(咲良の挑戦なら、私は応援したいな…)
(素敵なお友達もいるみたいだし。でも…)
(指原莉乃って名前…どこかで聞いたことあるような)
眉間にしわを寄せて考えていると、頬にひんやりとしたものが当たった。
「ひゃっ!」
驚いて横を見る。
「前田先生?」
はい、と私に冷たい缶コーヒーを渡してきた。
さっきのひんやりしたものの正体はこれだったのかと納得しながら、ありがとうございますとお礼をして缶コーヒーを受け取る。
前田敦子先生。
私より五つ年上の先輩で、私と同じ国語教師。
しかも、同時期に通っていたわけではないが共に『東京教育大学』出身で、話が合う。
クールな雰囲気で近寄りがたいが、東教大出身だからか、なぜか私のことを気にかけてくれるときもある。
「どうしたの?なんか暗い顔してたよ」
「…先生は、教師やっててつらいこととかありますか?」
「柏木先生、病んでる?」
「病んでないです!!」
自分でも、なんでこんな言葉が出たかわからない。
ただ、前田先生も悩むことがあるのか気になったんだと思う。
「まあ…あるよ。」
「あるんですね。なんだか意外…」
「ちょっと、それどういう意味?」
「いえ…前田先生ってクールなイメージがあるので。悩みなんて、ないのかなって…」
「そんなことないよ。私だって人間だからね」
「たとえば…どんなときですか?」
「…生徒がやめちゃったときかな」
「え…?」
予想の斜め上の回答に、私は固まってしまった。
「さ、仕事するよ。そろそろ朝礼だからね」
「あ、はい」
その場はうまくごまかされ、くわしく聞けないまま私は仕事に取り組む準備をした。
妹の咲良は元気でやっているようで安心した。
(来週帰れないかな…そろそろ中間テスト始まるから無理か〜)
秋葉原女子学園。
職員室での朝礼前。
スケジュールを確認しながら、ゴールデンウィークのことを思い出す。
(まさか咲良が今になってバレエやりたいなんて言い出すなんて…)
『お願い、ママ!追いつきたい人がいるの』
夜勤明けのお母さんに、咲良が必死に訴えていた。
(あれほど真剣な咲良、はじめて見たかも…)
私と咲良が離れ離れになったのは、私が高校二年生、咲良が小学四年生のとき。
小学生の咲良は、運動が苦手で、少し引っ込み事案な子だった。
今もそれは変わらないが、咲良の中にある芯の強さが垣間見えた気がした。
咲良が通うことになったバレエスタジオは、レベルが高くなるほど月謝も高くなる。
だから、一番下のクラスの咲良の月謝は他のクラスに比べるとそこまで高くないらしい。
しかし、レオタードやバレエシューズは実費なので、結果的にお金はかかるようだが。
お母さんは少し心配していたが、月謝が思ったほど高くないのと、咲良が珍しく本気だからということで、一緒にスタジオに行って契約していた。
(咲良の挑戦なら、私は応援したいな…)
(素敵なお友達もいるみたいだし。でも…)
(指原莉乃って名前…どこかで聞いたことあるような)
眉間にしわを寄せて考えていると、頬にひんやりとしたものが当たった。
「ひゃっ!」
驚いて横を見る。
「前田先生?」
はい、と私に冷たい缶コーヒーを渡してきた。
さっきのひんやりしたものの正体はこれだったのかと納得しながら、ありがとうございますとお礼をして缶コーヒーを受け取る。
前田敦子先生。
私より五つ年上の先輩で、私と同じ国語教師。
しかも、同時期に通っていたわけではないが共に『東京教育大学』出身で、話が合う。
クールな雰囲気で近寄りがたいが、東教大出身だからか、なぜか私のことを気にかけてくれるときもある。
「どうしたの?なんか暗い顔してたよ」
「…先生は、教師やっててつらいこととかありますか?」
「柏木先生、病んでる?」
「病んでないです!!」
自分でも、なんでこんな言葉が出たかわからない。
ただ、前田先生も悩むことがあるのか気になったんだと思う。
「まあ…あるよ。」
「あるんですね。なんだか意外…」
「ちょっと、それどういう意味?」
「いえ…前田先生ってクールなイメージがあるので。悩みなんて、ないのかなって…」
「そんなことないよ。私だって人間だからね」
「たとえば…どんなときですか?」
「…生徒がやめちゃったときかな」
「え…?」
予想の斜め上の回答に、私は固まってしまった。
「さ、仕事するよ。そろそろ朝礼だからね」
「あ、はい」
その場はうまくごまかされ、くわしく聞けないまま私は仕事に取り組む準備をした。