第二話 交わる色
バレエ公演の熱が冷めぬまま、自宅マンションへと着く。
鍵を開けようとするが、なぜかすでに鍵は開いていた。
「…?ママ、もう夜勤に向かってるんじゃ…」
疑問に思いつつ、恐る恐る扉を開く。
部屋の中の電気はついていて、そのままリビングへ向かった。
「あ、咲良おかえりー」
「お姉ちゃん、帰ってたんだ」
「うん、明日からゴールデンウィークでしょ?早めに仕事切り上げて、新幹線乗ってさっき帰ってきたとこー」
「ってか、帰ってくるの遅くない?」
「今日はちょっと、友達と出かけてたから…」
私の姉、柏木由紀は、今年から東京の『秋葉原女子学園』で国語教師を勤めている。
私の元々の名前は柏木咲良で、私たち姉妹は鹿児島に住んでいた。
6年前、お姉ちゃんが17歳、私が10歳のときに両親が離婚し、私はママ、お姉ちゃんはパパに引き取られた。
昔から先生になりたかったお姉ちゃんは、日本でも有名な教育系大学、『東京教育大学』を第一志望にしていて、受験に合格したら上京して一人暮らしする予定だったが、パパが気を利かせて東京に転勤希望を出し、高校卒業まで別居して、大学進学とともに鹿児島を出て、大学近くのマンションでパパと二人暮らしをしていた。
しかし、お姉ちゃんが大学卒業した直後のタイミングでパパは他界。
お姉ちゃんはパパがいなくなったマンションで、一人暮らしをしている。
「会うの、お父さんがいなくなってバタバタしてから以来だから、三月ぶりだね。でも、あんまり久しぶりって感じしないかも」
「お姉ちゃん毎週のように電話かビデオ通話してくるじゃん」
「だって、咲良が心配なんだもん!咲良も実質一人暮らしみたいなものでしょ」
パパとお姉ちゃんが東京に行ったあと、私とママは鹿児島の家に残り続けて、地元の小学校、中学校に通っていたが、去年の段階で看護師であるママが今年から福岡の病院へ転勤することが決まって、私は福岡の高校を受験した。
マンションを借りて二人で暮らしているが、鹿児島のころは日勤担当だったママはこちらにきてからはほとんど夜勤担当で、私と顔を合わせる機会はめっきり減った。
だから、私は自分で料理を作るか、ママが出勤前に作った冷め切った晩ごはんを食べることしかできなかったし、家事も昔以上に手伝うことが増えた。
「はい、ごはんできたよ」
「ありがとう」
机の上に広げられた手料理を見て、よだれが垂れそうになるのを必死に抑える。
手を洗って、いすに座り、いただきますをしてから、箸を手に取って料理を口に含んだ。
「おいしい…久しぶりにできたてのあったかいごはん食べた」
「えー、それ大丈夫なの?心配なんだけど」
「たまにめんどくさくてカップ麺とかにしちゃう…」
「もう、だめだよ?まだまだ育ち盛りなんだから」
「やっぱり咲良が心配だわ。来週も帰ってこようかな。毎週くる」
「来週!?お盆とかじゃなくて?っていうか毎週って…六月なんか祝日一個もないよ」
「平気、平気。体力あるから。まあ、テスト前とかは難しいかもしれないけど」
「部活とか、そういうのないの?」
「ないない!我らが秋葉原女子学園は最先端の高校なんだから、今の時代は部活動とか全部外部に依頼してるの。それに、働き方改革もあって、残業も減らすようになってるらしいし。ま、それはそうと忙しいのは事実なんだけど」
「お金は…?新幹線代って高いんじゃないの」
「お母さんが振り込んでくれるみたい。由紀が行きたいときに行きなさいって」
「そっか…嬉しいけど、無理しないでよ?今年から先生で、パパもいないし、担任ももってるのに、福岡と東京の往復とか、ありえないって…」
「もう、気にしないでって言ってるじゃん!それより咲良こそ大丈夫なの?高校生活は慣れた?」
「まあまあかな。福岡って知らない土地で不安だったけど、友達もいるし」
「部活は?なんか変な先輩に話しかけられて勧誘されたって結構前に言ってたよね」
「アイドル同好会ね。さっしー、変だけどいい人だよ。おもしろいし」
「さっしー…って、名前なんて言うの?」
「指原莉乃だけど。それがどうかした?」
お姉ちゃんの顔が途端に険しくなった。
「いや、なんでも。変わったあだ名だなと思って」
「そういうお姉ちゃんこそゆきりん先生とか呼ばれてるらしいね」
「あはは、親近感をもってもらえるのは大事なことだから…」
「舐められてない?」
「そんなことないし!」
先ほどの難しい表情は一瞬でなくなり、いつものお姉ちゃんに戻った。
(さっきのなんだったんだろ…まあいいか)
私は気にせず食事を続けた。
鍵を開けようとするが、なぜかすでに鍵は開いていた。
「…?ママ、もう夜勤に向かってるんじゃ…」
疑問に思いつつ、恐る恐る扉を開く。
部屋の中の電気はついていて、そのままリビングへ向かった。
「あ、咲良おかえりー」
「お姉ちゃん、帰ってたんだ」
「うん、明日からゴールデンウィークでしょ?早めに仕事切り上げて、新幹線乗ってさっき帰ってきたとこー」
「ってか、帰ってくるの遅くない?」
「今日はちょっと、友達と出かけてたから…」
私の姉、柏木由紀は、今年から東京の『秋葉原女子学園』で国語教師を勤めている。
私の元々の名前は柏木咲良で、私たち姉妹は鹿児島に住んでいた。
6年前、お姉ちゃんが17歳、私が10歳のときに両親が離婚し、私はママ、お姉ちゃんはパパに引き取られた。
昔から先生になりたかったお姉ちゃんは、日本でも有名な教育系大学、『東京教育大学』を第一志望にしていて、受験に合格したら上京して一人暮らしする予定だったが、パパが気を利かせて東京に転勤希望を出し、高校卒業まで別居して、大学進学とともに鹿児島を出て、大学近くのマンションでパパと二人暮らしをしていた。
しかし、お姉ちゃんが大学卒業した直後のタイミングでパパは他界。
お姉ちゃんはパパがいなくなったマンションで、一人暮らしをしている。
「会うの、お父さんがいなくなってバタバタしてから以来だから、三月ぶりだね。でも、あんまり久しぶりって感じしないかも」
「お姉ちゃん毎週のように電話かビデオ通話してくるじゃん」
「だって、咲良が心配なんだもん!咲良も実質一人暮らしみたいなものでしょ」
パパとお姉ちゃんが東京に行ったあと、私とママは鹿児島の家に残り続けて、地元の小学校、中学校に通っていたが、去年の段階で看護師であるママが今年から福岡の病院へ転勤することが決まって、私は福岡の高校を受験した。
マンションを借りて二人で暮らしているが、鹿児島のころは日勤担当だったママはこちらにきてからはほとんど夜勤担当で、私と顔を合わせる機会はめっきり減った。
だから、私は自分で料理を作るか、ママが出勤前に作った冷め切った晩ごはんを食べることしかできなかったし、家事も昔以上に手伝うことが増えた。
「はい、ごはんできたよ」
「ありがとう」
机の上に広げられた手料理を見て、よだれが垂れそうになるのを必死に抑える。
手を洗って、いすに座り、いただきますをしてから、箸を手に取って料理を口に含んだ。
「おいしい…久しぶりにできたてのあったかいごはん食べた」
「えー、それ大丈夫なの?心配なんだけど」
「たまにめんどくさくてカップ麺とかにしちゃう…」
「もう、だめだよ?まだまだ育ち盛りなんだから」
「やっぱり咲良が心配だわ。来週も帰ってこようかな。毎週くる」
「来週!?お盆とかじゃなくて?っていうか毎週って…六月なんか祝日一個もないよ」
「平気、平気。体力あるから。まあ、テスト前とかは難しいかもしれないけど」
「部活とか、そういうのないの?」
「ないない!我らが秋葉原女子学園は最先端の高校なんだから、今の時代は部活動とか全部外部に依頼してるの。それに、働き方改革もあって、残業も減らすようになってるらしいし。ま、それはそうと忙しいのは事実なんだけど」
「お金は…?新幹線代って高いんじゃないの」
「お母さんが振り込んでくれるみたい。由紀が行きたいときに行きなさいって」
「そっか…嬉しいけど、無理しないでよ?今年から先生で、パパもいないし、担任ももってるのに、福岡と東京の往復とか、ありえないって…」
「もう、気にしないでって言ってるじゃん!それより咲良こそ大丈夫なの?高校生活は慣れた?」
「まあまあかな。福岡って知らない土地で不安だったけど、友達もいるし」
「部活は?なんか変な先輩に話しかけられて勧誘されたって結構前に言ってたよね」
「アイドル同好会ね。さっしー、変だけどいい人だよ。おもしろいし」
「さっしー…って、名前なんて言うの?」
「指原莉乃だけど。それがどうかした?」
お姉ちゃんの顔が途端に険しくなった。
「いや、なんでも。変わったあだ名だなと思って」
「そういうお姉ちゃんこそゆきりん先生とか呼ばれてるらしいね」
「あはは、親近感をもってもらえるのは大事なことだから…」
「舐められてない?」
「そんなことないし!」
先ほどの難しい表情は一瞬でなくなり、いつものお姉ちゃんに戻った。
(さっきのなんだったんだろ…まあいいか)
私は気にせず食事を続けた。