第一話 はじまりの色
しばらく座りながら、もらったプログラムを熟読していると、大きくブザー音が鳴り、幕が開いた。
きれいな旋律の演奏と観客の拍手とともに、たくさんのバレリーナが入場してくる。
音楽が変わり、ピアノの伴奏に合わせてバレリーナたちが踊り始める。
その中でも、一際目立つ存在があった。
「まゆゆだ」
さっしーが私にしか聞こえないくらいの小声で言った。
ふだん大声を出しながらアイドルのコールをするさっしーにしては、かなり控えめな声量だ。
さっしーはまゆゆと呼んでいるが、プログラムに書いてあった名前は『渡辺麻友』だった。
『まゆゆ』という人のパフォーマンスをじっと見る。
ピンとつま先を立て、優雅に立ち回るその姿は、まるで本物の白鳥のようで、たしかに人を惹きつけるものがあった。
「はぁぁ〜、最高…」
小声を発しながら、体をくねらせ、わずかに足をジタバタさせて興奮しているさっしーを見て、私は少し引いていた。
その次の瞬間のことだった。
音楽が激しく転調し、照明も変化する。
センターポジションに立った人物は、さっきの『まゆゆ』とは別の人だった。
(プログラムに書いてあった名前は…『兒玉遥』)
片足を上げ、何回転も繰り返す。
『まゆゆ』が白鳥なら、この『兒玉遥』という人は、花だ。
触れてはいけない、そんな美しさをもった、一輪の花が、舞台の上に咲いていた。
バレエのパフォーマンスも、音楽も、何も知らない私だけど、たしかにわかったことがひとつだけある。
それは、この人はすごいということ。
隅の方で踊るまゆゆに興奮しているのか、さっしーの押し殺した嗚咽が耳に入ってくるが、そんなことはどうでもよかった。
私は今、この人から目が離せない。
瞬きもできないほどに、釘づけになって彼女を見つめる。
足元から指の先まで、素肌から髪の一本一本まで。
すべてが繊細で、美しくて。
言葉では形容できないような衝撃を、私は感じていた。
どれほど時が経っただろう。
いつの間にかプログラムは終わり、会場は拍手で包まれた。
「ありがとうございました!では、最後に、こちらの曲をお聞きください!」
アナウンスが聞こえたあと、音楽が流れる。
『I want you〜』
(あれ、これ今流行りの…)
流行のアイドルソングに合わせて、バレエダンサーたちがかわいらしく、けれどしなやかに、ダンスを披露した。
「まゆゆ〜!」
さっしーが奇声をあげながら、知らぬ間にどこかから取り出したうちわとペンライトを舞台に向かって振る。
「ちょっとさっしー何してんの!?」
「今だけは声出しOKなの!」
ものすごい圧を感じたので、目線を舞台に戻すと、さっきの彼女も一緒に踊っていた。
パフォーマンス中とは違う、愛らしい表情。
その振り幅に、胸を打たれた。
そして、すべての演目が終わり、バレエダンサーたちは退場、私たちも劇場をあとにした。
きれいな旋律の演奏と観客の拍手とともに、たくさんのバレリーナが入場してくる。
音楽が変わり、ピアノの伴奏に合わせてバレリーナたちが踊り始める。
その中でも、一際目立つ存在があった。
「まゆゆだ」
さっしーが私にしか聞こえないくらいの小声で言った。
ふだん大声を出しながらアイドルのコールをするさっしーにしては、かなり控えめな声量だ。
さっしーはまゆゆと呼んでいるが、プログラムに書いてあった名前は『渡辺麻友』だった。
『まゆゆ』という人のパフォーマンスをじっと見る。
ピンとつま先を立て、優雅に立ち回るその姿は、まるで本物の白鳥のようで、たしかに人を惹きつけるものがあった。
「はぁぁ〜、最高…」
小声を発しながら、体をくねらせ、わずかに足をジタバタさせて興奮しているさっしーを見て、私は少し引いていた。
その次の瞬間のことだった。
音楽が激しく転調し、照明も変化する。
センターポジションに立った人物は、さっきの『まゆゆ』とは別の人だった。
(プログラムに書いてあった名前は…『兒玉遥』)
片足を上げ、何回転も繰り返す。
『まゆゆ』が白鳥なら、この『兒玉遥』という人は、花だ。
触れてはいけない、そんな美しさをもった、一輪の花が、舞台の上に咲いていた。
バレエのパフォーマンスも、音楽も、何も知らない私だけど、たしかにわかったことがひとつだけある。
それは、この人はすごいということ。
隅の方で踊るまゆゆに興奮しているのか、さっしーの押し殺した嗚咽が耳に入ってくるが、そんなことはどうでもよかった。
私は今、この人から目が離せない。
瞬きもできないほどに、釘づけになって彼女を見つめる。
足元から指の先まで、素肌から髪の一本一本まで。
すべてが繊細で、美しくて。
言葉では形容できないような衝撃を、私は感じていた。
どれほど時が経っただろう。
いつの間にかプログラムは終わり、会場は拍手で包まれた。
「ありがとうございました!では、最後に、こちらの曲をお聞きください!」
アナウンスが聞こえたあと、音楽が流れる。
『I want you〜』
(あれ、これ今流行りの…)
流行のアイドルソングに合わせて、バレエダンサーたちがかわいらしく、けれどしなやかに、ダンスを披露した。
「まゆゆ〜!」
さっしーが奇声をあげながら、知らぬ間にどこかから取り出したうちわとペンライトを舞台に向かって振る。
「ちょっとさっしー何してんの!?」
「今だけは声出しOKなの!」
ものすごい圧を感じたので、目線を舞台に戻すと、さっきの彼女も一緒に踊っていた。
パフォーマンス中とは違う、愛らしい表情。
その振り幅に、胸を打たれた。
そして、すべての演目が終わり、バレエダンサーたちは退場、私たちも劇場をあとにした。