薄暗い部屋を、カーテンの隙間から差し込む光がほんの少しだけ照らしてる。
そして寝ぼけ眼の俺を起こしてくれるのは、なんの種類かもわからない小鳥の鳴き声。

「ん、、、んぅ、、」

いつものように小鳥の鳴き声を聞いたことによって、少しだけ目が覚めたような感覚になった俺は、このままベッドにダイブしないよう、もう身支度をしてリビングに向かおうと思った。


ガチャ
リビングのドアを開けると、とつぜんいい匂いが広がってきた。
その匂いの正体を突き止めてみると、それはジニヒョンが作っていたコーンスープの匂いだった。
辺りに漂うコーンスープの香りが、空腹を刺激する。
あの様子だと朝食ができるまでまだ時間がいるだろう、俺は空腹を紛らわすためにインスタントのコーヒーを入れてソファに座り、テレビのリモコンを取って天気予報の番組をつけた。

今日は朝から晩まで雨が降る予報だった。
「朝から雨か、、、」
雨が降ると人は気分が自然と下がってしまうものだ。だから俺は、雨の日＝何かが起こる日としてその日は人一倍慎重に生活するようにしようという習慣があった(俺のジンクス？みたいなやつだが)
そして今日は雨の日だから何かが起こりそう。などと根拠もない事を思いながらぼんやりしていると、ガチャ、とリビングのドアが開く音がした。
その音の方を振り返ってみるとそこに居たのはまだ眠たそうに目を擦っているユンギヒョンだった。

「ユンギヒョンおはようございます」

「あぁ、、グガ、おはよ」

「今日はいつになく眠そうですね」

「まあな、新曲作ってたらいつの間にか四時過ぎになってた、、、」

「四時過ぎ！？いま八時前ですよ？」

「でも、もうこれから寝たら起きれないって思って長風呂した後音楽聴きながらウトウトしてたら八時になってたから、、、」

「えー、、、大丈夫ですか？ユンギヒョン倒れないか心配です、、、今日だって9時から歌のレコーディングなのに、、」

「んー、まぁダンスレッスンが無かっただけ大事だろ、大丈夫だよ。いつもなんだかんだ言ってちゃんと生きてるし」

「本当ですか？、、、でもいつも休憩中は死んだように寝てますけどね」

「それはしょうがないな」

「ほぼ仮死状態ですよ」

「うるせ」

2人でジニヒョンの朝ごはんを待ってる間、他愛もない会話をする。
ユンギヒョンは今までの努力で積み上げてきた実力を、天才。という2文字で片付けてしまう、そんなクールな人だ。
だから僕は尊敬してるし、凄いなっていつも思う。
でも、音楽に対するストイックさとかを見ると超ハード過ぎてヒョンのようになりたいとは思わないけど、、、((
そして、そんなユンギヒョンだからこそ頑張り過ぎても周りにその事を悟らせないし、いつもと同じように振る舞うから、突然倒れるまでヒョンが体調悪いって事に気づけないことが多い。
さっきだってただ眠いだけかと思ったら睡眠時間1時間くらいだもんな、もう凄いを通り越して心配だよ、ヒョン、、、

「ヒョン、とにかく眠すぎたら言ってくださいね？またMON○○ERとか飲んじゃダメですからね？

「はいはい、分かってるよ」

そう言ってるうちにリビングにもメンバーが一人、また一人と集まってきて、ジニヒョンのご飯も完成したみたいだ。
大きいダイニングテーブルに人数分のコーンスープとオーブンで焼かれた食パン、ハムエッグの乗ったプレートを並べてぞろぞろと席に着く。

「「「いただきます」」」

ん〜、、、流石はシェフ「ジニヒョン」
今日も朝ごはんが美味しい。
夜はスケジュールによってメンバーの帰宅する時間が違うからご飯はバラバラに食べるけど、朝ご飯は絶対メンバーで食べるって決まってて、食べてる時は皆で絶対に会話するし、5年も一緒に住んでると食べる時の仕草とか癖とかも分かってくるから見てて飽きないし。
俺たちのグループが五年経ってもずっと仲が良いのはこういう所にあるんじゃないかなって思う。
俺はいつも、皆の顔と朝ごはんを行き来してるんだけど。

「今日は何があったっけ？」

「多分レコーディングだけだと思います」

「おーダンスはないんだ」

「ジニヒョン、ダンスの練習中はいっつも死にかけてますからね」

「失礼な、頑張ってるんだよ！」

「あははっ、あっそう言えば
みんな今日はユンギヒョンを見張っててください！」

「なんでだ？」

「ユンギヒョン、昨日曲作りに夢中になってて1時間くらいしか寝てないんですよ。」

「あ、ジョングガそれは「えー！1時間！？」

「1時間じゃ寝たって言わないよ！」

「そうだよ！仮眠じゃん！」

「ほんとそうですよね！
って事で皆さん、ユンギヒョンが倒れないように見張っててください」

「、、ジョングガ、言わなくてよかった」

「ダメですよユンギヒョン、こうでもしないと休んでくれないから」

でも、最近は気づいたらユンギヒョンばっかり目で追ってる気がする。
ユンギヒョンは物を食べる時に音を出すのが嫌いでいつももぐもぐ食べてるのとか、皆に野菜も食べろって言う割には自分もお肉しか食べてなかったり、、、
意識しなくても、気づいたらっていうか。
なんでだろう。
しかも最近ユンギヒョン見てると無駄に(？)気持ちが明るくなるし、見てると自然に笑顔になるっていうか、、、うわ、なんか俺気持ち悪くね((
最近朝コーヒー一緒に飲むからユンギヒョンの話聞いてたらユンギヒョンの事心配になってきちゃったのかな、確かにユンギヒョンが心配でっていうのはあるかも知れないけど他にも何かモヤモヤするって言うか、、、
あーーもういいや、朝から考えることはやめよう。

「ご馳走様でしたー」

コーヒーのおかげかすぐに腹を満たした俺は、そう言ってひと足先にみんながいるリビングから出て外に出る支度をしようと自分の部屋に向かった。



そして今日。俺の雨の日のジンクスはほぼ当たりに近いという事が証明されるのであった。