Bosque de Maldición  ―迷いの森―

 その日の帰り道は、道中つけてきたはずの目印も、見慣れた道も、全く見つからなかった。
 行けども行けども黒々とした樹木が黙って立つばかりで、ちっとも列の終わりが見えない。日差しを通して明るかったはずの木々は薄暗さをいや増してよそよそしく、森全体が口を噤んでいるかのようだった。今まで一度も迷ったことなどなかったのに、危うくリオは夜の森で行き倒れるところだった。
 ほうほうの体で見慣れた道と目印に行き当たった時には、既に日は暮れかけていた。森を抜けて空が開けると、遠くの地平線に紫がかった残光が僅かに残っていて、既にいくつか星が輝き始めていた。アンバルデオロの城壁から晩鐘の音が、遠吠えのように長く尾を引いて響いてくる。夏至前で日が長いおかげで、なんとか暗闇の中で迷うようなことにはならなずに済んだが、閉門の時間は過ぎてしまったようだ。
 毎日歩き続けて通い慣れたと思っていた森は、一瞬で未知の場所へと変貌してしまっていた。
 訝しむ番兵に仮の通行証でなんとか城門を通してもらい、宿に着いた時にはへとへとに疲れ切っていた。走り書きした薄紙一枚でもちゃんと証文としての効力のあることを実感したリオは、次からはちゃんとした手続きを踏もうと心に決め、決意するかしないかのうちに、意識は夢の中へと落ちていった。
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