Meiga y Angela ―魔女と聖女―
リオは連日、森に出かけた。あれほど迷うと聞いていたのに、意外なほどすんなりと森の中の道を見つけることができた。目印を探し回ることもなく、獣の気配もしなかった。
娘が現れるとすればいつも最奥の泉の傍らだったが、いつもいるとは限らなかった。気まぐれな虹のように、日によって彼女は現れたり現れなかったりするのだった。そうして現れる時はいつも、少し離れたところからじっとリオを観察していた。
二言三言言葉を交わしただけで姿を消すこともあれば、しばらく他愛もない会話を続けることもあった。かと思えば今日のように、何も言わずにただじっとリオの手元を見つめているだけの日もあった。
元々リオは側に人がいても気にならないほうだ。娘のことなど眼中になく手帳と野草を見比べる彼を見て、彼女は珍しく自分から口を開いた。
「この森でわたしに会って驚きも怯えもしない人、初めてだわ」
「そんなことないさ。最初に君を見た時、この土地の妖精かと思ったよ」
手帳から目を上げないまま、リオは言った。
「突然おかしなことを言う人ね。どうして?」
「この土地の人は、この森を『黄金森 』と呼ぶだろう。君はこの場所に詳しいみたいだし、それに、君の髪は刈入れ前の麦の穂みたいに綺麗な金色じゃないか」
「あら、それならあなたは枯れた後の麦の穂みたいな茶髪ね。さながら落穂の妖精かしら」
それを聞いてリオは笑った。それに腹を立てたのか、彼女はリオの髪を思い切り引っ張った。
「痛たた。何するんだい、急に」
「乙女の髪を馬鹿にしないで。わたし、自分の髪色が気に入ってるの」
「そりゃ悪かったよ。ごめんって」
尻餅をさすりながら顔を上げると、もう彼女はどこにもいなくなっていた。
「……怒らせちゃったかな」
リオは首を傾げながら独り言ちると、再び植物の観察に戻った。
こんな具合で、彼女はしばしば唐突に姿を消すのだった。もっとも、それは彼の態度にも多少の原因がなかったとは言い切れないのだが。
娘が現れるとすればいつも最奥の泉の傍らだったが、いつもいるとは限らなかった。気まぐれな虹のように、日によって彼女は現れたり現れなかったりするのだった。そうして現れる時はいつも、少し離れたところからじっとリオを観察していた。
二言三言言葉を交わしただけで姿を消すこともあれば、しばらく他愛もない会話を続けることもあった。かと思えば今日のように、何も言わずにただじっとリオの手元を見つめているだけの日もあった。
元々リオは側に人がいても気にならないほうだ。娘のことなど眼中になく手帳と野草を見比べる彼を見て、彼女は珍しく自分から口を開いた。
「この森でわたしに会って驚きも怯えもしない人、初めてだわ」
「そんなことないさ。最初に君を見た時、この土地の妖精かと思ったよ」
手帳から目を上げないまま、リオは言った。
「突然おかしなことを言う人ね。どうして?」
「この土地の人は、この森を『
「あら、それならあなたは枯れた後の麦の穂みたいな茶髪ね。さながら落穂の妖精かしら」
それを聞いてリオは笑った。それに腹を立てたのか、彼女はリオの髪を思い切り引っ張った。
「痛たた。何するんだい、急に」
「乙女の髪を馬鹿にしないで。わたし、自分の髪色が気に入ってるの」
「そりゃ悪かったよ。ごめんって」
尻餅をさすりながら顔を上げると、もう彼女はどこにもいなくなっていた。
「……怒らせちゃったかな」
リオは首を傾げながら独り言ちると、再び植物の観察に戻った。
こんな具合で、彼女はしばしば唐突に姿を消すのだった。もっとも、それは彼の態度にも多少の原因がなかったとは言い切れないのだが。
