まな板の上の鯉 第2話
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凶狸狐達に掴まりながら、夜間飛行中にゴンが私に話しかけて来る。
「ねぇクラピカ、カインって
別の子みたいに無口になって雰囲気が違う時があるんだけど
もしかしてカインが言ってたあの子ってその時のカインの事?
奥さんのキリコを一緒に追いかけてる時も又雰囲気が変わってたんだよ?」
今までカインと一緒にいる時間が長かったゴンは、カインの違いに感づく物があったんだろう。
「あぁ、そうだ、カインは解離性同一性障害という、かつては多重人格と呼ばれていた病気を患っているんだ。」
多重人格の名称の方が、未だに多く広まっているからな、医学を志してるならレオリオもこの病名位は当然知っているだろう。
「多重人格ってアレだろ?、1人の人間の心の中に何人も何人も交代する人格がいるっつー精神病ってヤツだろ?、確か虐待とか、命の危険性が迫った時に、防御反応として別の人格が作られる事が多いとか……おい、まさか、カインの奴」
レオリオが神妙な顔で私の言葉を待つ
私は頷いて答える。
「カインはクルタ族の里を出て、クルタ族ではない他所の男と婚約した私の叔母が産んだ子供でな
この世に生を受けて6歳まで牢屋の中で母親が離婚するまで一度も外に出される事なく育ち、母親に引き取られた後は、アイツはあの女に本当に最低な虐待行為を受けていた。
私が初めてカインと出会った時も、公園の噴水の水の中に顔をつけられて殺されかけてんだ、実の母にな、だから無理矢理あいつを連れて来たんだ。」
カインと仲のいいゴンは当然怒ってくれる。
「何それっ‼︎、そんな事する人達、親じゃないよっ‼︎‼︎」」
「あいつ、いつもにこにこしてたのに、そんな重い過去があったのかよ……しかも
自分の子供を牢屋で6年間も閉じ込めて育てるとか
母親もそうだが、そういう環境で育てさせてた父親もろくでもねー奴だな……しかしそのせいで多重人格とは……カインの中にいったい何人いるんだ?
まさか、有名な多重人格者の本みたいに、24人以上いたりしないよな?」
「もう1人、アベルという人格がいる。
こっちの人格に交代すると、カインよりも体力が跳ね上がり、悪意を向けて来た者達には容赦がない。
こちらの人格も、私を兄と慕い言う事を聞いてくれるし、無口な奴で基本的には大人しい奴だ。
これまで私達は、中性的なこの見た目もあってか、薄気味の悪い変質者共に目を付けられる事が多々あってな……
特にカインの方は、普通の女子と高確率で勘違いされるあの見た目だ。
あいつの方が、特に狙われる確率が多く、56人だ、カインがアベルに入れ替わり、殺してしまった人数は……幸いにも、我々を襲うクズ共は、社会不適合のカス共ばかりだから、今まで逃げるだけで済んで来たが……」
レオリオは半信半疑で言う。
「殺すって……信じらんねーけどよ
あの大人しいカインが、アベルって奴に変わったら狂暴化すんのか?
そういや、多重人格の実際の症状で、本来持っていない筈の馬鹿力を出しちまう例があるとか本で見た事あるんだけどよ?」
「違う……アベルの力は鍛冶場の馬鹿力なんてそんな甘い物ではない。
アイツは、説明の出来ない訳の分からない力で、襲って来た人間を触れて溶かすんだ。
相手が大勢ならば、アイツの体が液体の様に溶けて、アベルが触れた人間を、硫酸の様に溶かしてしまう。」
「いやいやいやいや……流石にレオリオさんを担ごうなんてそうはいかねーぜ?
クラピカよぉ?、多重人格までは100歩譲って信用してやってもいいかもだけどよ
人に触れたら硫酸みたいに人を溶かしちまう人間なんてありえねえっつーの‼‼」
ああ、そうだろう、私もお前の立場なら同じ様に馬鹿にして聞く耳も持たなかっただろうよ
結局、実際に目にしなければ人間なんて現実的でない話は信用等出来ない生き物なのだ、私も含めて、だからレオリオのこの反応は至って当然だろう。
「ごめんなさい、クラピカ、オレ、何も知らなかったから……クラピカがカインをハンター試験に参加させないのは、ただ意地悪してるのかと思ってた。
カインは、アベルって子がクラピカが言っていたおかしな力を使って人を殺しちゃうのは知ってるの?」
ゴンは、まだ素直な子供だからこんな不現実的な話も疑いを持たずに素直に受け入れてくれるんだろう。
「……ああ、知っている。
だからこそアイツは、あそこに残ってくれたんだ。」
私の話がもう信用出来ない様子で、レオリオは興味なさそうにケチを付けて来る。
「こらこらゴン、信じるなよ、そんな話どうせ嘘に決まってるぜ?
お前がそんなホラ話にカインを使う奴だとは思わなかったけどな?」
「お前の反応が、私も妥当だと思うよ……」
私達の会話を聞いていた、私の両手を掴んで夜空を飛んでいる凶狸狐が会話に入って来る。
「私も種族が違えど、子の親だけどね……
本来自分の子供を愛して守る立場の親が、自分の子を忌み嫌い殺そうとするなんて……
カインにとってそれは、どれ程恐ろしい体験だったのだろうね?……
クラピカ、今回の試験に、仮に合格しなくとも
ハンター裏試験という物を探しなさい。
そこにきっと、君の言う説明の出来ないカインの中にいるアベルという子の力の答えがある筈だ。」
「ハンター裏試験?、それは何ですか?」
「悪いけれど、それ以上は教えられないなぁ、本来なら絶対にこんな大ヒント教えないからね?
だが、賢い君なら、それだけで必ずたどり着ける筈だ」
1月22日に無事にハンター試験に私とレオリオ、ゴンの3人は無事に合格し、ハンターライセンスを入手すると試験中に知り合い、ゴンの友人になったキルアというゴンと同い年の白髪のふわふわとした髪型をした、かの有名な暗殺一家、ゾルディック家の少年が、最終試験の果たし合い中に全身を針で覆っていた奇抜な格好をしたギタラクルという男が頭部に無数に刺されている一部の針を抜くと、長い黒髪で、無表情の目力の強い男に変わり、その人物はなんとキルアの兄だと言う。
その兄がキルアを脅して実家に帰らせたのをゴンは相当憤り、状況に納得出来なかったレオリオと共に私も、キルアを連れ戻す為ゾルディック家の実家があるパドキア共和国に向かう事になった。
空港内で、一端ゴン達の元を離れて私はカインを預けている凶狸狐の家の連絡先に電話する。
何度目かのコールが鳴ると、カインが電話に出て来た。
「はい、もしもし……えーと、どちら様でしょうか?」
懐かしい声を聞いて安堵しつつ、カインには携帯電話を持たせてなかったから、電話番の対応は何処となくぎこちない。
折角ハンター試験にも合格した事だし、今度カインにも連絡用の携帯電話を買ってやるか
そう思いつつ、私は久しぶりの挨拶をする。
「久しぶりだなカイン、元気にしていたか?」
私の声を聞いて嬉しそうに明るい声でカインは話し出す。
「あっ、クラピカ兄さん‼︎、久しぶりだね?
キリコさん達から早ければそろそろ試験が終わる頃だって聞いてたから、無事で良かった。
ゴンやレオリオも元気にしてる?」
「心配かけたな?、あの2人共無事に私達3人はハンター試験を合格した。」
「良かった、皆無事に合格出来たんだね?
おめでとう、兄さん達」
「それで、すまないがお前を迎えに行くのはもう少し時間がかかるんだ……
試験中に知り合ったゴンと同い年位の友人が無理矢理実家に帰らされてしまってな……
その子を連れ戻すのに、パドキア共和国に急遽行く事になって、今空港にいるんだ。」
少し間をおいてカインは落ち着いた声で答える。
「……分かった。
早く、迎えに行ってあげて?、きっと
その子も、今頃不安だろうし、ゴンに会いたがってるだろうから」
「悪いな、落ち着いたらまた連絡する。
何か食べたい物や欲しい物はあるか?
買える範囲内の物なら、帰りに買って来るが」
「僕達は大丈夫だよ?、キリコさん達に良くして貰ってるから、今日もキリコさん達の家族と一緒に外食に連れて行って貰えるんだ。
それよりも、無茶しないでね、兄さん?、ゴンとレオリオによろしく言っておいて?」
「ああ」
2月16日、色々な難題をクリアして、我々は無事ゾルディック家からキルアを連れ出す事が出来た。
パドキア共和国の空港内でゴン達と再会の約束をし、それぞれ別々の場所へ向かう為別れると、空港の売店で気になる内容が書かれた雑誌をふと目にし、それを購入して待合スペースの席まで移動し席に座って雑誌を開きその記事を読む。
眼光の鋭い高級な装いの老人の写真が掲載されていて
ダン・ファストン氏、又も緋の眼を落札。
今回の落札額、総額我々庶民には手も足も出ない40億円、彼は今回を含め、クルタ族の頭部も含めて、彼が所持している緋の眼は50体。
今後も緋の眼の価値は高等していく事だろう。
いやぁ〜、非常に羨ましい物だ。
同じ額が1割でも貰えるなら喜び勇んで私ならば真っ先にホステスクラブや風俗店に駆け足で駆け込みたいものである。
何だこの後半からの下衆のやっかみの様な全くどうでもいい記事の書き方は……どうやらこの雑誌、ゴシップ系のけしからん内容の物らしい、くだらん。
私はため息を吐いて雑誌を閉じた。
ダン・ファストン、同族達の無念を晴らす為には、必ずこの男に接触する必要がある。
まだ私が4歳だった頃、父や母の話ではこの男がクルタ族の隠れ里に迷い込んで来た事があり、その時の彼はボロボロの死にかけの状態で、里の者達に水と食料の提供を求めた。
最初は里の者達は昔外界から迫害されて来た恐怖もあって彼を追い出そうとしたそうなのだが、彼の敵対心のない筋を通す姿勢に折れて、水や食料を提供する代わりに、彼の持っていたラジオや、懐中電灯等外の世界で使われている家電製品と物物交換をしたそうなのだ。
子供時代の私にとって、便利なその道具は、外の世界へ憧れる理由の一つにもなった。
旅をしている目的は現代では治療不可能な病気を患った友人を治す為だと言っていたそうなのだが……その方法は見つかったのだろうか?
そう言えば、私もクルタ族の悲報を聞くまでは、親友のパイロの悪くなってしまった足と目を治す方法を探していた。
止めよう、もう過去の話しだ。
思い出したって、全てが無駄なんだ。
「ねぇクラピカ、カインって
別の子みたいに無口になって雰囲気が違う時があるんだけど
もしかしてカインが言ってたあの子ってその時のカインの事?
奥さんのキリコを一緒に追いかけてる時も又雰囲気が変わってたんだよ?」
今までカインと一緒にいる時間が長かったゴンは、カインの違いに感づく物があったんだろう。
「あぁ、そうだ、カインは解離性同一性障害という、かつては多重人格と呼ばれていた病気を患っているんだ。」
多重人格の名称の方が、未だに多く広まっているからな、医学を志してるならレオリオもこの病名位は当然知っているだろう。
「多重人格ってアレだろ?、1人の人間の心の中に何人も何人も交代する人格がいるっつー精神病ってヤツだろ?、確か虐待とか、命の危険性が迫った時に、防御反応として別の人格が作られる事が多いとか……おい、まさか、カインの奴」
レオリオが神妙な顔で私の言葉を待つ
私は頷いて答える。
「カインはクルタ族の里を出て、クルタ族ではない他所の男と婚約した私の叔母が産んだ子供でな
この世に生を受けて6歳まで牢屋の中で母親が離婚するまで一度も外に出される事なく育ち、母親に引き取られた後は、アイツはあの女に本当に最低な虐待行為を受けていた。
私が初めてカインと出会った時も、公園の噴水の水の中に顔をつけられて殺されかけてんだ、実の母にな、だから無理矢理あいつを連れて来たんだ。」
カインと仲のいいゴンは当然怒ってくれる。
「何それっ‼︎、そんな事する人達、親じゃないよっ‼︎‼︎」」
「あいつ、いつもにこにこしてたのに、そんな重い過去があったのかよ……しかも
自分の子供を牢屋で6年間も閉じ込めて育てるとか
母親もそうだが、そういう環境で育てさせてた父親もろくでもねー奴だな……しかしそのせいで多重人格とは……カインの中にいったい何人いるんだ?
まさか、有名な多重人格者の本みたいに、24人以上いたりしないよな?」
「もう1人、アベルという人格がいる。
こっちの人格に交代すると、カインよりも体力が跳ね上がり、悪意を向けて来た者達には容赦がない。
こちらの人格も、私を兄と慕い言う事を聞いてくれるし、無口な奴で基本的には大人しい奴だ。
これまで私達は、中性的なこの見た目もあってか、薄気味の悪い変質者共に目を付けられる事が多々あってな……
特にカインの方は、普通の女子と高確率で勘違いされるあの見た目だ。
あいつの方が、特に狙われる確率が多く、56人だ、カインがアベルに入れ替わり、殺してしまった人数は……幸いにも、我々を襲うクズ共は、社会不適合のカス共ばかりだから、今まで逃げるだけで済んで来たが……」
レオリオは半信半疑で言う。
「殺すって……信じらんねーけどよ
あの大人しいカインが、アベルって奴に変わったら狂暴化すんのか?
そういや、多重人格の実際の症状で、本来持っていない筈の馬鹿力を出しちまう例があるとか本で見た事あるんだけどよ?」
「違う……アベルの力は鍛冶場の馬鹿力なんてそんな甘い物ではない。
アイツは、説明の出来ない訳の分からない力で、襲って来た人間を触れて溶かすんだ。
相手が大勢ならば、アイツの体が液体の様に溶けて、アベルが触れた人間を、硫酸の様に溶かしてしまう。」
「いやいやいやいや……流石にレオリオさんを担ごうなんてそうはいかねーぜ?
クラピカよぉ?、多重人格までは100歩譲って信用してやってもいいかもだけどよ
人に触れたら硫酸みたいに人を溶かしちまう人間なんてありえねえっつーの‼‼」
ああ、そうだろう、私もお前の立場なら同じ様に馬鹿にして聞く耳も持たなかっただろうよ
結局、実際に目にしなければ人間なんて現実的でない話は信用等出来ない生き物なのだ、私も含めて、だからレオリオのこの反応は至って当然だろう。
「ごめんなさい、クラピカ、オレ、何も知らなかったから……クラピカがカインをハンター試験に参加させないのは、ただ意地悪してるのかと思ってた。
カインは、アベルって子がクラピカが言っていたおかしな力を使って人を殺しちゃうのは知ってるの?」
ゴンは、まだ素直な子供だからこんな不現実的な話も疑いを持たずに素直に受け入れてくれるんだろう。
「……ああ、知っている。
だからこそアイツは、あそこに残ってくれたんだ。」
私の話がもう信用出来ない様子で、レオリオは興味なさそうにケチを付けて来る。
「こらこらゴン、信じるなよ、そんな話どうせ嘘に決まってるぜ?
お前がそんなホラ話にカインを使う奴だとは思わなかったけどな?」
「お前の反応が、私も妥当だと思うよ……」
私達の会話を聞いていた、私の両手を掴んで夜空を飛んでいる凶狸狐が会話に入って来る。
「私も種族が違えど、子の親だけどね……
本来自分の子供を愛して守る立場の親が、自分の子を忌み嫌い殺そうとするなんて……
カインにとってそれは、どれ程恐ろしい体験だったのだろうね?……
クラピカ、今回の試験に、仮に合格しなくとも
ハンター裏試験という物を探しなさい。
そこにきっと、君の言う説明の出来ないカインの中にいるアベルという子の力の答えがある筈だ。」
「ハンター裏試験?、それは何ですか?」
「悪いけれど、それ以上は教えられないなぁ、本来なら絶対にこんな大ヒント教えないからね?
だが、賢い君なら、それだけで必ずたどり着ける筈だ」
1月22日に無事にハンター試験に私とレオリオ、ゴンの3人は無事に合格し、ハンターライセンスを入手すると試験中に知り合い、ゴンの友人になったキルアというゴンと同い年の白髪のふわふわとした髪型をした、かの有名な暗殺一家、ゾルディック家の少年が、最終試験の果たし合い中に全身を針で覆っていた奇抜な格好をしたギタラクルという男が頭部に無数に刺されている一部の針を抜くと、長い黒髪で、無表情の目力の強い男に変わり、その人物はなんとキルアの兄だと言う。
その兄がキルアを脅して実家に帰らせたのをゴンは相当憤り、状況に納得出来なかったレオリオと共に私も、キルアを連れ戻す為ゾルディック家の実家があるパドキア共和国に向かう事になった。
空港内で、一端ゴン達の元を離れて私はカインを預けている凶狸狐の家の連絡先に電話する。
何度目かのコールが鳴ると、カインが電話に出て来た。
「はい、もしもし……えーと、どちら様でしょうか?」
懐かしい声を聞いて安堵しつつ、カインには携帯電話を持たせてなかったから、電話番の対応は何処となくぎこちない。
折角ハンター試験にも合格した事だし、今度カインにも連絡用の携帯電話を買ってやるか
そう思いつつ、私は久しぶりの挨拶をする。
「久しぶりだなカイン、元気にしていたか?」
私の声を聞いて嬉しそうに明るい声でカインは話し出す。
「あっ、クラピカ兄さん‼︎、久しぶりだね?
キリコさん達から早ければそろそろ試験が終わる頃だって聞いてたから、無事で良かった。
ゴンやレオリオも元気にしてる?」
「心配かけたな?、あの2人共無事に私達3人はハンター試験を合格した。」
「良かった、皆無事に合格出来たんだね?
おめでとう、兄さん達」
「それで、すまないがお前を迎えに行くのはもう少し時間がかかるんだ……
試験中に知り合ったゴンと同い年位の友人が無理矢理実家に帰らされてしまってな……
その子を連れ戻すのに、パドキア共和国に急遽行く事になって、今空港にいるんだ。」
少し間をおいてカインは落ち着いた声で答える。
「……分かった。
早く、迎えに行ってあげて?、きっと
その子も、今頃不安だろうし、ゴンに会いたがってるだろうから」
「悪いな、落ち着いたらまた連絡する。
何か食べたい物や欲しい物はあるか?
買える範囲内の物なら、帰りに買って来るが」
「僕達は大丈夫だよ?、キリコさん達に良くして貰ってるから、今日もキリコさん達の家族と一緒に外食に連れて行って貰えるんだ。
それよりも、無茶しないでね、兄さん?、ゴンとレオリオによろしく言っておいて?」
「ああ」
2月16日、色々な難題をクリアして、我々は無事ゾルディック家からキルアを連れ出す事が出来た。
パドキア共和国の空港内でゴン達と再会の約束をし、それぞれ別々の場所へ向かう為別れると、空港の売店で気になる内容が書かれた雑誌をふと目にし、それを購入して待合スペースの席まで移動し席に座って雑誌を開きその記事を読む。
眼光の鋭い高級な装いの老人の写真が掲載されていて
ダン・ファストン氏、又も緋の眼を落札。
今回の落札額、総額我々庶民には手も足も出ない40億円、彼は今回を含め、クルタ族の頭部も含めて、彼が所持している緋の眼は50体。
今後も緋の眼の価値は高等していく事だろう。
いやぁ〜、非常に羨ましい物だ。
同じ額が1割でも貰えるなら喜び勇んで私ならば真っ先にホステスクラブや風俗店に駆け足で駆け込みたいものである。
何だこの後半からの下衆のやっかみの様な全くどうでもいい記事の書き方は……どうやらこの雑誌、ゴシップ系のけしからん内容の物らしい、くだらん。
私はため息を吐いて雑誌を閉じた。
ダン・ファストン、同族達の無念を晴らす為には、必ずこの男に接触する必要がある。
まだ私が4歳だった頃、父や母の話ではこの男がクルタ族の隠れ里に迷い込んで来た事があり、その時の彼はボロボロの死にかけの状態で、里の者達に水と食料の提供を求めた。
最初は里の者達は昔外界から迫害されて来た恐怖もあって彼を追い出そうとしたそうなのだが、彼の敵対心のない筋を通す姿勢に折れて、水や食料を提供する代わりに、彼の持っていたラジオや、懐中電灯等外の世界で使われている家電製品と物物交換をしたそうなのだ。
子供時代の私にとって、便利なその道具は、外の世界へ憧れる理由の一つにもなった。
旅をしている目的は現代では治療不可能な病気を患った友人を治す為だと言っていたそうなのだが……その方法は見つかったのだろうか?
そう言えば、私もクルタ族の悲報を聞くまでは、親友のパイロの悪くなってしまった足と目を治す方法を探していた。
止めよう、もう過去の話しだ。
思い出したって、全てが無駄なんだ。