chapter1 ヤバイシティー
「そういうことでしたの……」
ルーナは二人の友人の苦境に親身になって応えてくれた。
「そういうことでしたら、わたくしにお任せください。きっと力になりますわ!」
その言葉を待っていたクロエは見えないように伏せていた顔でニヤリと笑った。
そして次に顔を上げた時には〝困り果てた可憐な友人〟の顔に戻っていた。
「ありがとうルーナ……アナタに相談してよかったわ」
「当然ですわ、あなた達はわたくしの大切なお友達ですもの……!」
お互いの固く結ばれた友情を再確認するかのように両手を重ね合わせる二人に、
サミュエルは若干引いた感じで見ていた。
ルーナは純粋だが、クロエは明らかに不純だからだ。
「明日、わたくしからも学校にお願いをしておきますわ」
「助かるわ、ルーナ」
談笑もそこそこに、お茶を済ませると窓から見える外の景色はすっかり夜の闇に包まれていた。
そろそろ帰宅しなければならない時間だ。
ヤバイシティは決して治安の良い街ではないからだ。
「お二人を車でお送りいたしますわ」
ルーナが執事に車で送迎させることを提案したが、大した距離でもないことからサミュエル達は断った。
「いいよ、別に。近いし夜道は慣れてるから」
「そうですか……」
心配そうに呟くルーナに、サミュエルは安心させるように笑顔でこう返した。
「じゃあ、また明日、学校でね」
それは紛れもなく『友達』になった証の言葉である。
ルーナは嬉しそうに頬をほんのりと紅く染めて小さく手を振った。
「はい、また明日……」
「じゃあね、ルーナ」
クロエも別れの挨拶を済ませて二人は豪邸を後にした。