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chapter2 ロス製薬研究所




 扉を開けて中へ入ると、デスクの上で疲れたようにぐったりと項垂れている伯父の姿があった。

「――アイツら何?」

 入るなりブラッドは素っ気なく聞いた。

「……ただの取引相手だ」

「フーン」

 会話はそれで終わり。

 ブラッドは伯父に、特に仕事のことに関してほとんど干渉しなかった。

 代わりに自分のこともあまり干渉されない。

 それがブラッドにとってベストな形だからお互い暗黙の了解と言える。

 用事を済ませてとっとと帰ろうと鞄の中からプリントを取り出し伯父に手渡す。

「これ、学校に提出するやつ」

「あぁ……」

 ざっと目を通してサインを書くと伯父はブラッドに手渡しついでに一言告げた。

「今夜も帰れそうにない」

「分かった」

 用件を済ますと、多少気掛かりな伯父を残して、所長室を後にした。



 エントランスから外へと出ると、ブラッドはふいと立ち止まり、研究所の建物を見上げるように振り返った。

 満月を背景に聳え立つ無数のビル群。

 外から見るロス製薬研究所は、その中の一つに過ぎないが、内部はとても閉鎖的でまるで白い檻の様だ。

 伯父は明らかに何かを隠しているようだが、この町の住人は何も知らない。



 ブラッドは、自身の存在もまた、その中の一つなのだと思っていた。





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