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chapter1 ヤバイシティー




「じゃ、また明日」

 校門を出る時、サミュエルは二人とは違う方向に歩き出そうとしたのでクロエは思わずその背中に声を掛けた。

「あら、どこ行くの? サミュエル」

「そちらは街の方ですわよ?」

 ルーナも不思議そうに声を掛けた。

「今日はちょっと外食しようと思って」

 サミュエルは立ち止まってそう答えた。

 少し歩けば大通りに出て街があり、馴染みのカフェがある。

『スペースキャットカフェ』という名の店で、ファストフードやパスタなど、大抵の軽食は食べられる。

「外食? 一人で?」

 クロエは怪訝な顔をして聞いた。

「あー……うん、今日から暫くライラスがいないんだ」

 ライラスの名前を口にしても、幼馴染みであるクロエには通じるが、ルーナには分からず、きょとんとした顔をされた。

「ライラス、さん?」

「あー……うん、僕の親代わり。二人で暮らしてるんだ」

 サミュエルはあまり辛気臭い空気にならないようサラッと簡単にこれまでの自分の過去と事情をルーナに説明した。


「そうだったのですか……」

 案の定、サミュエルの過去を初めて聞かされたルーナは、彼を想うあまり、しんみりとした重苦しい雰囲気を醸していた。

 かと思いきや、表現力豊かなルーナは次の瞬間にはパッと明るい顔になって、良いことでも思いついたかのように重ねた両手を片頬に当てるポーズをして言った。

「でしたらワタクシもそのカフェにご一緒致しますわ!」

「えっ?」

 思いもよらぬ言葉にサミュエルは面食らったように唖然とした。

「一人寂しくお食事を召し上がるより話し相手がいた方がきっと楽しいですわ!」

「でも……」

 ルーナのペースに押されタジタジになるサミュエル。

 だが、さらに追い打ちをかけるようにクロエまでもが同行に名乗りを挙げた。

「そうね。いいわよ、私も行くわ!」

「はっ?」

 クロエの参戦に最早、抵抗は無駄だと悟ったサミュエル。

「……分かったよ」

こうしてサミュエルは美少女二人に左右から挟まれるように腕を組まれて、半ば連行されるようにしてカフェへと向かうこととなった。




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