宵々町奇譚
モミジ先輩と共に、三人で宵々町の街並みを歩いていると、ふいに背後から声を掛けられた。
「お、鹿島に小判じゃないか」
聞き覚えのある爽やかな
僕とモミジ先輩はその人のことをよく知っている。
「
モミジ先輩から明らかに分かりやすい黄色い声が上がった。
「警察官になったんですかぁっ?」
「まあな。それに運よく宵々町交番に配属されたんだ」
「へー。おめでとうございます」
彼は犬飼
小学校の頃からの先輩で、去年まで神輿高校に通ってたんだ。
卒業後、警察官の試験に見事合格したみたい。
マモル先輩は真面目で爽やかでイケメンだし、宵々町のオバサン達のアイドルとして人気者になるだろうなぁ……なんて思ったり。
「でも今時チャリで巡回なんて……先輩、運転免許持ってないの?」
モミジ先輩は拳を口元の前に持ってきて小馬鹿にしたように笑って言った。
「馬鹿言え。見廻りは自転車の方が効果的だから乗ってるんだ」
「ふーん」
「お前らも、寄り道なんかせず暗くなる前に帰れよ」
そう忠告すると、マモル先輩は自転車を
「ふん! 何よ、ちょっと警察官になったからって偉そうに」
モミジ先輩は腕組みをしながら
かと思えば、次の瞬間には指組みをしてうっとりとした表情で去りゆく先輩の後ろ姿を見つめて言った。
「でもカッコイイから許す……」
そう、モミジ先輩は
単にモミジ先輩はイケメンが大好きなのだ。