宵々町奇譚
そして、放課後。
僕とモミジ先輩は、決まって図書室の一番後ろの、日差しが照る明るい窓際に、向かい合うように座って怪奇新聞の新作の打ち合わせをした。
オカルト同好会は正式な部じゃないから当然、部室がない。
だから僕らはこうやって毎日図書室の一角を部室代わりに使わせてもらっているのだ。
幸い、放課後に図書室を利用する生徒は、ほとんどいないから、ほぼ貸し切り状態ニャ。
そして打ち合わせは決まってモミジ先輩の
「いい? ミス研のヤツらよりいいスクープを取るわよ!」
「はぁ……」
やる気満々のモミジ先輩と対照的に僕は気のない返事を返した。
実際、ミス研の人達を含め、皆がモミジ先輩が部長だと思い込んでいたりする。
「大体、今日のミス研の新聞、見たでしょ?」
「神社で
新聞は大好評だったらしい。
僕もモミジ先輩も掲示板の前で並んでその新聞を拝見した。
「フン! 丑の刻参りなんて、
モミジ先輩は女王様のように腕組みと足組みのセットで座って頭に
よほど悔しかったのか、負け犬の遠吠えのようにも聞こえる。
そこへ、一つの影が僕らの席に歩み寄ってきた。
「あのー……」
遠慮がちに声を掛けてきたのは、僕と隣のクラスの同級生で、名前は……何だったっけ?
「僕、
そうそう、雨森加枝留くん。
もっさりした髪型に片眼が前髪で隠れてて、まるで
いつも無表情で眠たそうな目をしている。
喋ったことは無いけど、僕と同じくらい小柄だから嬉しくて何となく覚えてたんだよね。
「オカルト同好会ってココですか?」
加枝留くんは
「うん、まあ、一応、この席を使わせてもらってるけど……」
「そうですか。僕、オカルト同好会に興味があって……」
加枝留くんが言い終わらぬ内に、僕とモミジ先輩は揃って声を上げた。
「もしかして入部希望っ!?」
「まぁ、そんな感じです」
「よっしゃーっ!」
思いもかけず新入部員をゲットした僕とモミジ先輩は喜びに沸いた。
「あ、ありがとう。でも似たような部でミステリー研究会もあるのに、何でウチを選んでくれたの?」
僕の問いに加枝留くんは眠たそうな無表情で一瞬、
「
うーん、確かに。
「でも加枝留くんがオカルトとか、そういうのに興味あったとは意外だったニャ……」
思わず本音が
「興味というか……何となく面白そうだったので」
「まあ何でもいいわ! こうなったら新入部員の歓迎パーティーよ!」
モミジ先輩は立ち上がると
「歓迎パーティーですか?」
加枝留くんは小首を傾げた。
「僕らの本当の部活動が始まるよりも少し時間あるし、取り敢えず付いて行こうよ!」
僕と加枝留くんはモミジ先輩の後に続いて校舎を後にした。