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お礼SS

(ジャミル)




ボールが跳ね、バッシュの音が鳴り響く。
指先に伝わる質感と重さを感じながら次の相手の動きを予測し、どう動くかを瞬時に計算する。
どデカく予測不可能な動きをする同級生と、動きの軽快な赤髪の後輩は今は敵チームだ。さて、どうするか。
ちらりと隙間から味方の1人からサインが送られたのが目に入り、フェイントをかけてソイツへとパスを出した。


「させねーよ?」
「っくそ!」


パスが味方に届く前にやたら長い腕が横から伸びてカットされる。
次に手を伸ばした時には間に合わず、こちら側のゴールに凄まじい勢いのダンクを決められた。
ゴールが壊れるんじゃないかという音と勢いで周囲がざわめく。本人はケロッとしているが。
ほぼ同時に試合終了のホイッスル、点数差は1点。それを受けて力が抜けて座り込む者や、仲間内でハイタッチする者達など反応は様々だ。


「ウミヘビくんヒヤッとしたよ〜」
「…は、カット成功させておいて良く言うよ」


俺の言葉は半分聞き流した様子で、つかれた〜〜とタオルを取りに行く姿を見送り、ふぅと一息ついてこちらもドリンクを取りに行く。
俺の荷物の隣に座っている彼女の頭に乗せられているタオルを取り、バッグからドリンクを取り出した。


「…ん、じゃみる…?」
「寝ていて良いぞ、あと1試合あるからな」


今日の体力育成の授業で力を使い果たしたらしいコイツは、見学に来ておきながらスヤスヤと眠りこけていた。まぁ、構わないんだが。
目を擦りながらこちらを見た彼女は、「ジャミルだ〜」と呂律の回ってない寝惚けた声でへらっと笑いかけてくる。


「先に帰ってても構わないんだぞ」
「ん〜〜…んーん、ジャミルと帰る」


眠そうにしながらも次の試合を観ようという気持ちだけはあるのか、目を開けて座り直して頭をふるふると振っている。
全く、カリムだけでも忙しいのに目が離せないとは手のかかる。

(それでも、悪い気はしないな)

バッグに飲み終わったドリンクを仕舞うと同時に制服のブレザーを引っ張り出し、彼女の肩にかけてやる。地べたに座って寝ていた彼女の身体は想定していた通り、すっかり冷えていた。
頭の上にクエスチョンマークを乗せた顔に思わず頬が弛みつつも、くしゃっと頭を撫でる。


「待ってろ」


少し考えたあと、照れたようにうんと頷いたのを見て立ち上がる。さて、次の試合はどんなチーム分けになるだろうか。





【ジャミル/一言にときめく5題「待ってろ」】
( 配布元/『確かに恋だった』様 )

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