私とテニスと自転車と
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昔、1年の秋ごろ…
荒北の面倒を少し見てくれと寿一に頼まれて以来、私は荒北の自主トレを見るようになった。といっても最後の5分だけでいいと寿一に言われてるからローラー2時間の最後の5分くらいに見に行ってタオルとボトルを渡し、心拍数、距離を記入するという作業だけだ
それを2年になってもやり続けていたある日…荒北が告白してきた
「好きなんだケド…」
持ってたボトルを落した。ビックリしてしまったのだからしょうがないと自分に言い聞かせながらゆっくり返答していく
『…うち、部内恋愛禁止なんだけど…知ってる?』
私がマネージャーに入ったことで決まった自転車競技部のルール。先輩たちが真剣に練習をするためだと言って作ったのだ。とは言っても先輩たちがいなくなったし、あっても無いようなものだ
「知ってるっつーの」
え、知ってて言ったの…?
またそれに驚いて返答に困る
「3年になってIH終わったらもう関係ネェだろ?そん時相手がいねぇんだったら付き合えるんじゃナァイ?」
これは…どうしたものか
まさか荒北が告白するとは思ってもみなかった。初めて会ったのは入学式の時で、それからずっと会ってなくて、次に会ったときは何故か寿一とレースしてたし…(原チャだったけど)それから部に入って練習を見るようになって他のメンバーと分け隔てなく接してきた筈だった。好意を持ってくれたことは嬉しかった。IHまで待つとも言っている…だけど
『…ごめん、だとしても付き合えない』
そう、無理なのだ
荒北がどれだけ待っても…付き合えない
「…知ってる」
その言葉に耳を疑った
何を…知ってるの?
わかるはずが…ない
「…中学の時、色々あったんだろ…?福ちゃんに聞いた」
『!?な、なんで……っ』
なんで教えたの…寿一…っ!
頭の中でそんな言葉がこだましていく
…体が少し震えてきた
『…っ、な、なら…尚更わかったでしょ…っ?言い方悪いけど…見込みはないの…っ、私は…許されないの…っ』
そう言うとフッと目を細めた。何もかも見透かされてるような目で見てくる。目が合わせられなくて視線をそらした。
沈黙が続いた…
そしたら荒北が一歩私に近づいた
それに気づいて私は一歩下がる…
また一歩進んでくる…
一歩…一歩…そうやって一定の距離を保っていたけど…私が下がれなくなった。冷たい壁に背中がついてしまったのだ。一歩ずつ近づく荒北…逃げることが出来ない
距離が…1mも無くなった
「香苗…」
『…っ』
「好きだ…」
私の腕を掴んだ…ふわりと体が傾く。目の前は荒北の鎖骨があって…鼻が少し当たってる。腰に何かが触れられた…荒北の腕だとすぐにわかった。
抱きしめられてる
すごく…優しく…
心臓がうるさい。顔が紅潮する。よくわからないけど、涙が出そうだった
「ぜってぇ忘れさせてやんヨ…IH終わったら…覚悟しとけバァカ…」
そう言ってニヤニヤ笑って自分の胸に押し付けるように頭を押さえ込まれた
なぜそんなに余裕があるんだ
…簡単に言い切って…
おかしい、と思う筈だったけど…荒北の心臓の音が…私よりもうるさく鼓動していた
荒北も余裕ではなかったんだ
『…絶対荒北とは付き合わない』
「…ハッ!自信持って言うんじゃナァイ?ワリーけど、譲らねェな。俺は本気だからナ…」
『……離して』
「…もう少し、このままがイイ」
『私が嫌…』
「知らネェ」
『……なにそれ』
よくわからないけど…笑ってしまいそうになってて、そしたら荒北が、笑っていた…
ーーーーーーーーーーーーーーーー
それ以来私たちは他の人には分からない、不思議な関係になった。距離が前とは比べ物にならないくらい近くなった。もちろん、その距離を詰めようとしてるのは荒北だけだが。たまに肩に腕を置かれるし、腰に腕を回すなどスキンシップが激しくなった。さらに言えば二人きりになると抱きしめられるし…不意打ちでキスされたこともある(その時は渾身の拳をぶつけ練習メニューを4倍にした)。
…さすがに最初は距離を取ったりしたけど、慣れとは恐ろしいものだ。今では好きにさせている。
だから今日みたいに手を握るなんてまだ可愛い方だ。ただ残念ながら、私の胸は脈を打たない。そんなスキンシップよりも…過去の記憶の方がずっと私を震わせるから
なんて彼は不毛な恋をしてるんだと
思うことがある
早くあきらめて荒北
あなたに私の心に入る余地なんて
…ない。
ハッピーエンドにならないよ
でも
この物語はまだ始まりにすぎない
昔、1年の秋ごろ…
荒北の面倒を少し見てくれと寿一に頼まれて以来、私は荒北の自主トレを見るようになった。といっても最後の5分だけでいいと寿一に言われてるからローラー2時間の最後の5分くらいに見に行ってタオルとボトルを渡し、心拍数、距離を記入するという作業だけだ
それを2年になってもやり続けていたある日…荒北が告白してきた
「好きなんだケド…」
持ってたボトルを落した。ビックリしてしまったのだからしょうがないと自分に言い聞かせながらゆっくり返答していく
『…うち、部内恋愛禁止なんだけど…知ってる?』
私がマネージャーに入ったことで決まった自転車競技部のルール。先輩たちが真剣に練習をするためだと言って作ったのだ。とは言っても先輩たちがいなくなったし、あっても無いようなものだ
「知ってるっつーの」
え、知ってて言ったの…?
またそれに驚いて返答に困る
「3年になってIH終わったらもう関係ネェだろ?そん時相手がいねぇんだったら付き合えるんじゃナァイ?」
これは…どうしたものか
まさか荒北が告白するとは思ってもみなかった。初めて会ったのは入学式の時で、それからずっと会ってなくて、次に会ったときは何故か寿一とレースしてたし…(原チャだったけど)それから部に入って練習を見るようになって他のメンバーと分け隔てなく接してきた筈だった。好意を持ってくれたことは嬉しかった。IHまで待つとも言っている…だけど
『…ごめん、だとしても付き合えない』
そう、無理なのだ
荒北がどれだけ待っても…付き合えない
「…知ってる」
その言葉に耳を疑った
何を…知ってるの?
わかるはずが…ない
「…中学の時、色々あったんだろ…?福ちゃんに聞いた」
『!?な、なんで……っ』
なんで教えたの…寿一…っ!
頭の中でそんな言葉がこだましていく
…体が少し震えてきた
『…っ、な、なら…尚更わかったでしょ…っ?言い方悪いけど…見込みはないの…っ、私は…許されないの…っ』
そう言うとフッと目を細めた。何もかも見透かされてるような目で見てくる。目が合わせられなくて視線をそらした。
沈黙が続いた…
そしたら荒北が一歩私に近づいた
それに気づいて私は一歩下がる…
また一歩進んでくる…
一歩…一歩…そうやって一定の距離を保っていたけど…私が下がれなくなった。冷たい壁に背中がついてしまったのだ。一歩ずつ近づく荒北…逃げることが出来ない
距離が…1mも無くなった
「香苗…」
『…っ』
「好きだ…」
私の腕を掴んだ…ふわりと体が傾く。目の前は荒北の鎖骨があって…鼻が少し当たってる。腰に何かが触れられた…荒北の腕だとすぐにわかった。
抱きしめられてる
すごく…優しく…
心臓がうるさい。顔が紅潮する。よくわからないけど、涙が出そうだった
「ぜってぇ忘れさせてやんヨ…IH終わったら…覚悟しとけバァカ…」
そう言ってニヤニヤ笑って自分の胸に押し付けるように頭を押さえ込まれた
なぜそんなに余裕があるんだ
…簡単に言い切って…
おかしい、と思う筈だったけど…荒北の心臓の音が…私よりもうるさく鼓動していた
荒北も余裕ではなかったんだ
『…絶対荒北とは付き合わない』
「…ハッ!自信持って言うんじゃナァイ?ワリーけど、譲らねェな。俺は本気だからナ…」
『……離して』
「…もう少し、このままがイイ」
『私が嫌…』
「知らネェ」
『……なにそれ』
よくわからないけど…笑ってしまいそうになってて、そしたら荒北が、笑っていた…
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それ以来私たちは他の人には分からない、不思議な関係になった。距離が前とは比べ物にならないくらい近くなった。もちろん、その距離を詰めようとしてるのは荒北だけだが。たまに肩に腕を置かれるし、腰に腕を回すなどスキンシップが激しくなった。さらに言えば二人きりになると抱きしめられるし…不意打ちでキスされたこともある(その時は渾身の拳をぶつけ練習メニューを4倍にした)。
…さすがに最初は距離を取ったりしたけど、慣れとは恐ろしいものだ。今では好きにさせている。
だから今日みたいに手を握るなんてまだ可愛い方だ。ただ残念ながら、私の胸は脈を打たない。そんなスキンシップよりも…過去の記憶の方がずっと私を震わせるから
なんて彼は不毛な恋をしてるんだと
思うことがある
早くあきらめて荒北
あなたに私の心に入る余地なんて
…ない。
ハッピーエンドにならないよ
でも
この物語はまだ始まりにすぎない