私とテニスと自転車と
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
荒「ワリィ…今一人になった、話出来る」
福「そうか…今香苗はどんな感じだ?」
リビングを離れた俺は玄関近くで話が聞こえないように小声で話す
荒「今はいつも通りだけどヨォ、会ったときは見たことねぇ顔してた…」
福「そうか…」
複雑そうな声で呟く福ちゃん、よほど心配してるんだろうな…
東堂から電話があって、内容を聞いた福ちゃんの匂いが一気に変わった。それは匂いだけではなく、表情にもオーラにも顕著に表れた。頷く度にドス黒くなってく、俺相手じゃないのに威圧されてるような気持ちになる。何も知らねぇ1年は脅え、2、3年にも表情がなかった
電話を切った後…自分の気持ちを圧し殺しながら、俺に振り向いて香苗を迎えに行けと、オーダーを出した。ほんとは自分が行きたいくせに、部の為だとか考えたんだろうな…福ちゃんそういうとこ不器用だよな。まぁ多分それだけじゃねぇだろう。俺も冷静じゃなかったから素直に了承したけどよ
荒「安心しろよ、言ったろ今はいつも通りだって。俺に悪態つける余裕はあんダヨあいつ」
福「…そうか、やはり…荒北に行かせて正解だった。すまない、勉強を妨げてしまった」
荒「んなこと気にすんなっつーの…あー、俺香苗ん家で飯食ってから帰るからあとで勉強教えて」
福「勿論だ。その後話がある」
荒「ア?なんの?」
福「話しただろ、香苗のことについて夜話そうと」
そうだった
アイツの…過去…
別に物騒な話ではないだろうけど…
…クソ、ざわつく…
胸の辺りのシャツをぎゅっと掴んだ。言い様のない不思議なざわつきを感じる。あんな表情を見たあとじゃ嫌な予感しかしねぇ…
福「夜出来るだけ早く戻ってこい」
荒「…わーった」
福「あと一つ、香苗と話がしたい」
荒「おぅ」
通話中のままリビングに戻ると中華っぽい匂いに腹の虫がなりそうになった。香苗は俺に気づいてこっちに近づく
『電話終わった?』
荒「あー、まだ…福ちゃんが」
携帯を渡すと頷いてから耳に当てる
『寿一?…うん……ほんと、ごめんなさい』
表情が少し曇り顔にはなってるけど怒られてるっわけじゃなさそうだ
『…そう、うん…また明日話す…え?…あ、えっと……そう…
仁王と……ブン太に会ったよ…』
荒「!」
におう…?は知らネェが…ブン太…これは聞いたことがある…あの時生徒玄関の時に言ってた男の名前だ、間違いネェ
『…う、ん…また、明日』
ピ、と電源ボタンを押した香苗の表情は暗いまま、また泣きそうな顔しそうだ
それを見て俺はたまらず抱きしめた
『っ、荒北……』
荒「今は何も言うんじゃネェよ、明日福ちゃんと話すときでいい。そん時言え。今は飯だ、腹減ったんだよ」
『……うん、ごめん。ありがとう…』
スッと離れてテーブルに向かってすぐそばの椅子を引いた。目の前にはチャーハンと付け合わせのようにサラダと唐揚げがあった
荒「お前いつ唐揚げ作ったんだよ」
『それは昨日作っておいた余り物よ。良かったら食べて』
荒「おぉ」
……うん、マジでうめぇ
毎日食いてぇ…
冷凍ご飯で作ったとは思えないくらい旨かった。唐揚げはちぃとしなってたが味付けは完璧だ。昨日来れば良かったと思うくらい、くそ…胃袋つかまれてる。
『…あ、そうだ。荒北』
荒「ンァ?んだよ、勉強なら後で福ちゃんに教えてもらうっつーの」
『じゃなくて…今日はさすがに時間ないから寿一に伝言頼んでほしいの』
荒「ンダョ、自分でしろよな」
『私の中学の時のこと、教えていいって言っておいて』
荒「だから自分で!、って、は?」
…今、聞き逃しちゃいけねぇこと聞いたぞ…教えていいって、マジか…
『…知りたかったんでしょ?』
そ、うだけどよぉ、つか後で聞く予定でもあったからラッキー?って喜べばいいのかわかんねぇ…
荒「お、おぉ…。つか、何で今なんだ」
そう言うと香苗は箸を止めて俺の目を見た
『荒北に…知ってほしいって、思ったから』
荒「知って…ほしい…」
知ってほしい…
その言葉はマジで望んでた言葉だ
『うん…帰りの電車の時、ほんとに…死にそうなくらい辛かった』
荒「!」
『色んなこと思い出して…怖くて、涙が止まらなかった。だけど荒北が来てくれて…嬉しかった
今までもさ、何だかんだ言いながら助けてくれてたし、支えられてた。居心地がすごく良くて…うまく言えないけど…多分、安心できるの』
荒「香苗…」
この感情をどう表現すればいいかわかんねぇくらい、嬉しかった…
『だから私の過去のこと…知ってほしいの…
もう好きとか思わなくなるから』
ガツンと殴られた気分だ
それくらい衝撃があった
コイツ今なんて言いやがった?
好きとか思わなくなる?
荒「…んで、そうなる…」
予想以上に震えた声が出ちまった。意味がわからねぇ、何が言いてぇのか全然入ってこねぇ
『…中学の時の話を聞いたら…多分、私のことは好きになれないから』
その言葉に俺の中の気に障った
荒「んなのテメェが決めんな!…それは俺の意思で決めんだよ」
『…でも』
荒「でもじゃねぇ!!それに俺はもう好きとかそんなレベルじゃねぇんだよ、お前を一生護るって決めてんだボケナス」
『い、しょう……?』
大きく見開いた目で俺を見る香苗。…あ、今言うつもりなかったのに…クソッ!調子狂う…
荒「っ、ああっ!そうダヨ!一生だっつーの!!テメェの了承はネェからなっ!!」
もう言ってしまったものは仕方ない。ヤケ起こしたみたいに言うと…普段見られねぇ照れた顔してて…こっちが照れそうになった。心臓がヤベェ…
『…強引だね、私の気持ちは無視?』
無視だ無視。強制だボケナス!
荒「知らネェ」
『…敵わないな』
もうさっきの照れた顔は無くなって、笑ってんのか笑ってねぇのかわかんねぇ顔になりやがった。福ちゃんそっくりで鉄仮面カヨ!
荒「チッ!とりあえず、話は福ちゃんから聞く。そこでどう決めるかは俺次第だ。あーくっそ!チャーハン冷めちまったっつーの!」
『…温めようか?』
荒「いい!」
『そう…』
ここまで言ったはいいが
やはり福ちゃんに聞かなければならない
だから早く飯食って帰ろう
俺はただ黙々と食べ続けた
25/25ページ