私とテニスと自転車と
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
重い荷物が邪魔に感じる
けど走らなければ…
東「はぁ…っ、香苗…っ大丈夫か?」
『平気よ…、それより東堂の方が、辛そうだけど…』
東「走るのは…得意では、ない…っからな」
『…今度トレーニングメニューについて考えないとね』
私はマネージャーだけど昔からの習慣で走ったり…色々してるから全然平気だけど。うちの自転車部は…なんというか、運動神経無い人間の方が多い。東堂はそんなことないけど…走るのだけは駄目なようだ
『…、たく…っ。…、あ』
タクシーが見えた
お金はある…、いけるかもしれない
『東堂…っ、こっち!』
東「え!」
グイッと引っ張って停まっているタクシーの運転手に声をかけた
『横浜駅までお願いします』
高校生が乗ってきたことに驚いてたけど運転手はドアを閉めて道路に向かおうと指示機を出した
東「!彼だ…」
『!』
脇道から出てきた仁王が見えた
携帯片手に私たちを見つけた
目が合った…
『…、』
なんでそんな目をしてるの
なんでそんな…、悲しい目をしてるの
『…っ!』
何か、口パクで、言ってる…
『…、す』
東「?香苗…?」
『…す、ま、…、…っ!』
す ま な か っ た
多分、そう言ってる…
『…、なんで…』
そう呟いたのと同時にタクシーは動き出した。仁王の姿が見えなくなってく…。角を曲がればもう見えることはなかった
東「…今更だが、香苗すまない、あっちは話したがってたようだが… 香苗が辛そうな表情をしてたから…無意識に走ってしまった…」
『…、ううん。寧ろ…、ありがとう』
東「…だが、友達だったのだろう…?」
『…』
とも、だち…友…達…
『友達じゃない…』
東「!」
『友達、なんかじゃない…っ。今さら…』
今更謝られても…何も変わらないのに…
『…、ごめ、ん…』
東「…気にするな。早く帰ろう…」
『…うん』
帰りたい…ここにいたくない…
"香苗…"
…なんで、こんな時に
荒北の顔が浮かぶんだろう…
なんで、こんなに…
心臓が落ち着くんだろう…
駅に着いて直ぐに改札口に向かった。時刻表を見ればあと10分後に電車が来る。ホームに早足で向かった
東「…大丈夫か香苗、何か飲むものでも買ってこようか」
『…大丈夫、もう電車来るから待ってよう』
東「…わかった」
優しく笑った東堂は辺りを見渡してから静かにそのまま立った。時間帯のせいなのか人も多くなってきた。東堂がさらに視線を周囲に向ける。私もチラリと見たけど…あの距離だし、仁王が来ることはないだろう…良かった
東「…どうやら大丈夫そうだな」
『ほんと、ごめんなさい…迷惑かけた』
東「構わないと言っているだろう?…だが香苗、気にはなるぞ。中学の知人であろう?何があったのだ?」
『っ』
東「福や…荒北が知ってる過去なのか?」
『…それは』
~♪~♪
タイミング良くブザーが鳴った。電車が来る…少し、ホッとした
東「… 香苗、彼は…悲しそうな顔をしていたぞ」
『…』
東「…一先ず乗ろうか」
いつの間にか到着していた電車、黙ってる私の背中を軽く押して中へと促す東堂。私は小さく頷いて電車の中へ足を入れた。すぐ閉まるだろうと思って扉を背に手すりに掴まった
もう、隠せないのか…
言いたくない…
あの日のことは
何も思い出したくない…
私は…
「…っ」
いつになれば…
「、…っ!」
乗り越えられるのかな
「香苗!!」
…、え…っ
その声は…
東「っ!香苗!!」
腕を引っ張るこの感触は…ぬくもりは
覚えがある
私の体は引っ張られる力に持ってかれて、電車の外に…。東堂の体が、遠くに…そして扉が閉まった
周りの人が見てる、視線を感じるけど…それどころじゃない
背中に感じるぬくもりは温かく
仄かに香る甘い匂い…変わってない
「香苗…っ」
声も、感触も…変わってなかった
『ブ、ン太…っ』
なんで、あなたはここにいるの…?