私とテニスと自転車と
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職員室に行きパソコンとUSB、部日誌を提出して出て行くと廊下で着替え終えた荒北が立っていて横に並ぶとがに股で着いてきた
『別に待ってなくてもいいんだけど、バス来るから』
「っるせぇ、黙って送られてろボケナス」
やっぱり筋トレ4倍にしてやろう。明日のメニューが楽しみだ…なんてね、照れ隠しで言ってるのは明白だから…仕方ない2倍のままにしておくか
「なぁ…そろそろ惚れたァ?」
『…残念ながら』
不意に、あまりにも不意に言われたそれに…冷静答えるとあからさまに不機嫌に舌打ちされた
「ケッ!そーかよ」
無駄だと…何度も伝えてる筈なんだけどね…と言うか部内恋愛禁止だとも言ってるはずなんだけど…
玄関に着いて靴を履き変える。荒北が後ろにいることに気づかなかった
バン!!
『!』
真横に荒北の手の甲が見える。振り返ってはいけない。きっと…あり得ないくらい、距離が近い
「…ナァニビビってんだよ」
『っ!』
息が…さっきみたいに首にかかる。全然懲りてないじゃない…
「…さっきよォ」
『え?』
「レースん時…終わったあと…」
『っ!』
真横にあった手は、ゆっくり近づいてきて…肩に乗った
「普通によ…テメェは疲れてねぇくせに"お疲れ"なんてよ…俺は頑張れとかそういうの嫌いっつーのにな…香苗に言われっと…
やっぱ好きだって思っちまったんだよ」
『荒北…』
力はそんなに入れられてない。拒めば振り向かなくてもいい…わかってる、けど…体は荒北と対面している
「インハイまでは俺もそーいうのは後回しだって…わかってんのによぉ」
肩にあった手は…ゆっくり動いて、頬に…
「お前が欲しくて仕方ねェ」
『あ、らき、た…』
「香苗…」
あ…キス、され…
ズキッ…!!
あ…
肘が…痛む…
"香苗…!!"
過去が…駆け巡る…
『っ駄目』
手が無意識に動く…左手は荒北の口を覆った
「…」
また不機嫌になった。眉毛がつり上がって…少し怖い
『…だ、め…だから…』
絞るように声を発すると覆っていた手を強く握られた。そして…冷えた声が耳に響いてく
「…チッ!テメェ今"誰を思い出した?"」
『っ!?』
なんでこうもお前は…私の心を見透かすの…?答えない私にイラついた荒北は私の右肘を掴んだ
ズキッ
『!ったぁ…っ』
昔のケガだ。もう3年はたったのに、未だに痛みは消えない。何せ障害扱いされた肘だから、ずっと…一生付き合っていく痛みなんだ…それを知ってるはずだ。特に3年は皆知ってる…荒北も例外じゃない…
わかってて掴んでる
私が痛むことを知っている
私が痛みで声を出すと僅かに緩められた。でも肘を離さず掴んだまま、鋭い獣みたいな目が私を睨んだ
「…福ちゃんにはよ…ケガが原因で恋愛に臆病になったって聞いた。意味わかんねェ、…何をそんなビビってんだって、今まで思ってたがよぉ…事実はちげぇんだな。テメェの反応見てわかった」
『…っ』
「何があった…」
『それは…』
言えない…言いたくない…
あの頃の話なんて…
「!なんだっつーんだよ、あん時言った、許されねぇって…っ!恋愛ってのはよォ自由だろうがよ!何に怯えてんだ!テメェの中学時代、何があった!?」
『!わ、わた、し、は…』
ズキッ…!
『っ!』
これだ。少しでも思い出せば痛むこの右肘…。この痛みを感じると、過去の…テニスをしてきたあの時代を思い出す…っ
ズキッ…!
『っ、いや…っ、ごめ、んな、さ…』
「!香苗…」
あぁ、思い出していく…
声も体も震えてくる
違うの
私は悪くない
『わた、し…わ、るく、な…っ、た、だ…す、なだ、け…っ』
「…」
あの時の…奥底にしまってた、あの頃
ズキィッ!!!
"、お前なんか、やめちまえ…っ!"
『テニス、好きな、だけ、なの、に…っ』
"俺の…っ"
やめて、言わないで
聞きたくない…っ
"っ、俺の前から、消えろ…っ"
ズキィッ!!!
『ブ…ブン…太…っ』
「!香苗!」
スッと意識が、一瞬なくなった。崩れそうになった私の体を、荒北が支えた。抱きしめられる感覚で意識がハッキリしてくる
…温かい
気持ちが…スッと楽になってく
『荒北…』
「香苗…」
『ごめん…』
「!?」
『やっぱ…言えない…ごめん…ごめんなさい…』
「香苗…っ」
『まだ、怖いの…っ。忘れたいのに…ごめん…荒北…っ』
「、わかった…」
抱きしめる力が強くなる
どうしよう…嬉しいのに
このままときめいて…
好きになれたら…
幸せになれるはずなのに
ごめん…
私の心はその想いを
拒否してる