闇に散る華
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監督生が召喚された廃墟から外へ出ると、空は晴れ渡り、爽やかな風が身体を包み込んだ。森からは小鳥の囀りが聞こえてくる。
異世界に来た経緯…鏡から出てきた腕に体を掴まれて引きずり込まれたのはトラウマ級の恐怖体験であるが、来てみればまるで歓迎されているような雰囲気である。
しかし、ふとある事が頭によぎった。ここに来たのは仕方ないとしてどこで寝泊りすればいいのだろうか。これだけ広い学園であれば、そういう所がないとは考えにくい。
「あの、私はこれからどこで生活すればいいんでしょうか?」
クロウリーと学園へと続く森を歩きながら尋ねてみると。恐らくその事は考えていなかったのか、返答が返ってくるのに数秒間が空いた。
「ここでは闇の鏡がその者の魂を見て寮を決めるようになっているのですが、魔力のないあなたを迎え入れる寮はないでしょう。」
物に寮を決定されるなんて、まるで某魔法学校のようだと思った。
「一つ、誰も使っていない廃墟のようなオンボロ…いえ、年季の入った寮があるのでそこで生活をしていただければと。家電も揃っているので、そこで生活できるよう手配しておきます。」
言い切って、その後何故か言い直していたが、つまり廃墟を使えと。
確かに下手に人がいる寮で生活をして、諸々の事情がバレてしまうのはかなり面倒だ。自分がいる事で周りに迷惑をかけてしまうのなら、一人でいる方がよっぽど良いのでは。
いく宛もないためこの際生活出来るのであればそのオンボロ寮でもいい。
「わかりました、お願いします。」
「それと、これは私からの贈り物です。異性であると知られれば少々厄介な事に巻き込まれる可能性もあるので。」
クロウリーからは、女だと分かりにくくする魔法をこめた白のブレスレットをもらった。ただし、魔力の高い生徒には見破られやすい。
そこで、その魔力を高めるために購買部に行くこととなった。
森に隠れるようにしてある小屋。その扉を開くと…。
「HEY、小鬼ちゃん。ようこそ、Mr.Sのミステリーショップへ。今ならなんでもIN STOCK!品揃えなら自信ありだよ。」
「は、はい…」
クロウリーもなかなか見た目が凄いが、Mr.Sことサムもかなり個性が強い出で立ちをしていた。髑髏をモチーフにしている洋服に、ド派手なショッキングピンクのベスト、そして腕には骨のボディペイント。
英単語を交えながら話してくる男に監督生はタジタジとなった。この世界にはこんな人ばかりなのか。
「サムさん、すみません。実は…」
クロウリーは監督生の事を簡単にサムに説明する。異世界人である事やΩである事は話されていたが、女であることは伏せられていた。クロウリーのみ知っている秘密として扱ってくれるらしい。
サムは少し考えた後、それなら…と店の奥に引っ込んで少しの間ゴソゴソと物を漁った。そして。
「これなら、君にピッタリな魔法のアイテムになる。とある商人から譲り受けた、特別な物でね。」
監督生に渡されたのは、他の生徒と同じ黒のチョーカーだった。特別という割には極普通の物にしかみえない。
この学園に通うには、必要不可欠な物にはなるのだが。
「そのチョーカーは普通の物と同じΩのフェロモンを抑える効果もあり、発情期が来ても一定の相手にしか分からない優れもの。ただのαには体調不良に見えて分かりにくいが、番候補には分かる仕組みとなっている。そしてそのブレスレットの魔力を上げて、秘密にしたい事を完璧に隠してくれる万能アイテムさ。都市伝説とされている魂の番には秘密ごとは瞬時に見抜かれるけどね。」
そういう宣伝なのだろうが、ニヤリと意味ありげに口角を吊り上げられ、監督生はギクリと肩を震わせる。
「わざわざすみませんね、ありがたく頂戴します。さあ監督生さん、それを付けてみて下さい。」
これを付ければもう後戻り出来なくなるような気がするのだが、自分の運命を受け入れて素直にチョーカーを装着した。締め付けられているような違和感は殆ど感じられない。
その後生活品等をクロウリーに買ってもらい、購買部から学園長室まで向かった。
その間にこの世界での日常について聞き、学園長室にて教科書や魔導書、式典服等学園生活を送るのに必要な物を一式もらった。
「荷物はまた後ほど寮へお送りしますので、これから他寮に行くついでに寮長へ挨拶をしておきましょう。先日入学式を終えたばかりなので、あなたの同級生となる生徒にも会えるかもしれないですね。」
男子ばかりで正直不安がありまくりだが、ここまで来たからには覚悟を決めていくしかない。
「それと、監督生さんが学園生活を送る間に元の世界に戻れる方法も探しておきます。私、優しいので。」
「ありがとうございます。」
「さあ、早いうちに行きましょう。」
こうして監督生はこの学園の生徒として通いながら元の世界へ帰れる手がかりを探す事となった。
そして同時に、逃れられない運命の時も近付いていた。
◇To be continued◇
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