闇に散る華
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どれくらい眠っていたのだろうか。
気が付くと真っ暗な空間にいた。起き上がろうとしたが、目の前に壁があるようでそれができなかった。
状況を把握するのに時間はかかったが、どうやら監督生は仰向けになっているようだ。そして、すぐ前には壁。僅かだが隙間から漏れている光。足を広げようとしたが、それも出来なかった。
人が一人入れるような長細い箱に入れられていると解釈した。
とりあえずここから脱出しようと腕を上げて壁を押してみるが、かなり重たい。それでも少しずつ開き、徐々に自分がいる場所が見えてきた。
「ここは…」
薄暗く、埃っぽい見慣れぬ部屋。カーテンはボロボロで天井の隅には蜘蛛の巣が張っていた。
長い間誰も使っていない古びた部屋なのだと理解して、立ち上がった。
そして、自分が押し込められていた箱をまじまじ見て…。普段見慣れない物だったために理解するのには時間がかかった。
「これって、棺桶…?」
鏡の中に引きずり込まれた自分は死人となったのか。では、ここは死後の世界か。
冥界はこんなにオンボロなのか。毎日誰かしらが訪ねてくるからもっと綺麗だと思っていたのに…。
監督生は考え込んでいたため、近付いてくる足音に全く気付かなかった。
突然バタンと大きい音がして扉が開かれ、それに驚いた監督生は小さく悲鳴を上げた。
「ああ、こんな所にいましたか。君が最後の一人の生徒ですね。」
「(生徒…?)」
埃をかぶった割れた鏡に映った自分の姿を見ると、スカートだったのにスラックスを履いており、黒を基調とした制服を着ていた。
しかし、性別は女のままだが、何故か胸にはサラシが巻かれていた。
なるほど、息苦しいのは埃っぽい部屋のせいだけではなかったのか。…しかし、何故?
「探しましたよ、さあ行きましょう。」
「え、あのっ…待ってください!」
その男は静止の声も聞かずスタスタ歩いて行ってしまった。ずっとこんな所にいるわけにはいかないため、監督生は追いかけるしかなかった。
それにしても、かなり怪しい。黒のシルクハットをかぶり、顔には烏を彷彿とさせる仮面。全身黒のスーツに、紺の羽織り…これもまた烏の羽をイメージさせた。
「あの、あなたは誰ですか?」
「おや、私をご存知ないと?ナイトレイブンカレッジの学園長のディア・クロウリーです。以後お見知り置きを、監督生さん。」
「どうして名前を…」
まだここに来てから名乗っていないのに、どうして知っているのか。ひょっとしてこの世界に連れてきた張本人なのか。
「学園長たる者全生徒の名前は全て把握するのは当たり前です。それが、異世界から来た者だとしても…。」
「……っ!」
何故そんな事まで知ってるのか、いったいどこまで知ってるのだろうか。思うことは色々あるが。
「あの、私っ…」
「ああ、大丈夫。誰にも言ったりしません。あなたが女性であることは。…私、優しいので。」
恐らくクロウリーは怖がらせないようにニッコリ微笑んだのだろうが、監督生にとってはもはや恐怖の対象でしかない。
取り敢えずここから出たらこの男から逃げよう。そう思っていたのに…。
「それと、ここは男子校になります。女性一人になるのはとても危険だと思いますよ。それでなくてもあなたはΩなんですから。」
「Ω…?」
書き慣れない単語を聞き返せば、今度はクロウリーが目をパチクリさせる。
「まさか、何も知らない…?」
「…ここに来たばかりなので。」
「ああ、そうですよね。実は…」
学園長室に向かいながらクロウリーからこの世界について教えてもらったのと同時に、とんでもない所へやってきてしまったと感じたのだった。
◇To be continued◇
+