闇に散る華
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ーー…おいで…さあ、こっちだ…
バイト帰り。夜道を歩いていると、突然闇から聞こえる男の囁く声。
振り返るが、誰もいない。
チカチカと、今にも消えそうな街灯。店のシャッターは閉められ、周囲の建物の明かりは消えている。
…気のせいか。
再び歩こうとすると。
ーー…早くしろ。
気のせいじゃない、聞こえる声に辺りを見渡せば。
「(こんな所に道なんてあったっけ…)」
いつも通る道なのに、どうして気付かなかったのだろう。
一層深まった暗闇、先の見えない舗装されていない道。
何故か分からないが、行かなければいけない…。
引き寄せられるようにフラフラと歩み始める。
ーー…さぁ、こちらへ。
囁き声から徐々にはっきりした声に変わってくる。
木々が生い茂り、深まる闇の世界。もうどこを歩いているのか分からない。
それなのに、不思議と怖いと思わない。
ーー…俺を信じろ。
目の前に現れた廃墟の館。外壁には蔦が絡み、雨風に晒されて空洞になっている部分もある。
生まれてからこの街で生活しているのに、初めて来る場所だった。
ーー…早く来なさい。
暗闇の最奥、月明かりに反射した何かが監督生の顔を照らした。
もっと近くで見たいと思い廃墟の館へ入った。
妖しくも幻想的な光を放つそれは…。
長年人の目に晒されず、手入れをされていなかったため砂埃を被り、所々錆びれている。
2体の大蛇が施され、人を丸呑みにできそうなくらいの見たことのない大きな鏡がそこにはあった。
触ってみたい…。
こんな寂れた鏡を触りたいと思った事がないのに。
す…と埃をかぶった鏡に手を伸ばした。
これが、後悔する事になる事も知らずに…。
ーー…来なければ良かったのに…
「ひっ…!」
パチパチ、バリバリと雷のような眩い光を放ちながら鏡の中から伸びた腕に短い悲鳴を上げた。
現れた腕は迷いなく監督生の腕を力強く掴んだ。
その腕を振り払おうとするがびくともせず、ぐいぐいと鏡の中に引き摺られていく。
「やっ、誰かたすけーー…!」
その助けを求める声は、誰にも届かない。闇に呑まれた。
眩い光は徐々に細く、小さいものになり…あたりはシン、と鎮まり返った後にピシッと鏡にヒビが入った。
ーー…この時を待っていた。
もう、返さない…。
闇の鏡よ、この者を歪んだ世界へ導きたまえ。
本当のハッピーエンドをみせてやる。
◇To be continued◇
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