感情の名
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「カリム…それと監督生も。何をしたらそんなになるんだ。」
「ずぶ濡れになっちまったな~、調子に乗りすぎたか、あっはっは!」
「はは…」
太陽のような眩しい笑顔で笑うカリムと苦笑いする監督生。両者ともカリムのユニーク魔法によってずぶ濡れ状態である。遅れてやってきたジャミルはその光景を見て溜め息を吐いた。
スカラビア寮内・砂漠。
午後から宴をするから監督生も来いよ!大勢いる方が楽しいだろ、と寮長であるカリムに誘われて。
午前中の授業だった今日はたまたまモストロ・ラウンジでのバイトは休みのため、監督生はスカラビア寮へやって来た。
グリムは、授業中脱走した途中で遭遇したエース、デュースと喧嘩になった挙句、高価な置物を壊し、窓ガラスを割った罰として学園内の掃除を学園長から命じられていた。
宴の最中に魔法の話題になり魔力を持たない監督生にとっておきを見せてやる、と熱くなった身体を冷やすため水浴びも兼ねて、砂漠の入り口あたりでカリムはユニーク魔法を使用した。
「俺のユニーク魔法は少しの魔力でも、こんなに水を出せるんだ。」
「凄い…!しかも冷たくて気持ちいいですね。気温も暑いから、熱くなった体には丁度いいです。」
「へへっ、そう言ってくれて嬉しいぜ!もっと出してやろうか!?」
猛暑の中、サーッ…と降り続く冷たい恵みの雨。監督生がふと顔を上げると…。
「カリム先輩、見てください!虹がかかっています!綺麗…。」
キラキラした顔で自分を呼び、虹を見上げる監督生の横顔にカリムは釘付けになる。
「(あれ、監督生って…)」
虹を見上げる人は、とても同性とは思えなくて…。気が付いたら濡れた頬へ手を伸ばしていた。
それに驚いて目を丸くする監督生と目が合って、ドクンと心臓が跳ね上がる。
「カリム先輩…?」
「あの、さ…俺…」
今までなかった感情。それが何なのか、どうすればいいのか分からない。ただ、目の前の人の顔がもっと見たくて顔を近付ける。
「…あの、そろそろ魔法止めないと…!」
「え、あっ、わっ…!」
穏やかな雨がいつの間にか大雨級に降り注ぐようになり、ユニーク魔法を慌てて止めてみたものの。
服を絞れば水が出て、髪からポタポタと滴が落ちる程降らせてしまった。
「カリム、こんな所にいたのか!…って、監督生!?」
宴の最中ジャミルは料理を作っていたためといえど、自分がいない間に談話室からいなくなったカリムを寮中探し回っていた。
ホリデー中のオーバーブロット事件では、カリムがいなくなればいいと願っていた事を告白した。しかし、それはあくまで個人的な感情であって。アジーム家に仕える従者として在学中に、しかも少しの間目を離した隙に刺客に拐われ終いには…そんな事があったら、バイパー家はどんな末路を辿る事になるか。
探している最中、風が吹いた方から微かに雨の匂いがしたため、念の為にタオルを数枚持って思い当たる場所へ行けば、ずぶ濡れになったカリムと、彼のユニーク魔法によって同じ状態になった監督生が砂漠の入り口にいた。そして、冒頭へ戻る。
「ジャミル、そんな怖い顔をするなって。悪かったよ、もう戻るからさ。」
「まったく…魔力を無駄に消費するんじゃない。君も、カリムを止めてくれないか。」
「すみません…。」
ジャミルはタオルの1枚をカリムに渡し、監督生には広げた2枚のタオルを両肩と頭にかぶせた。
少し肌寒かったが、フワフワしたあたたかいタオルが肌に触れて、触れた所から体温が上昇してくるのがわかった。
「ジャミル先輩、ありがとうございます。」
「…君は、もう少し自分の状況を把握した方がいい。カリム、行くぞ。」
ふいっと不自然に目を逸らしたジャミルは、カリムが監督生から目を逸らすようにわざと2人の間に入り、カリムに先を歩くよう誘導した。
はて、と監督生が濡れた自分を改めて見ると…。
ずぶ濡れになったために服が体にぴったりと張り付いて露わになったボディライン。
サラシを巻いているといっても、透けているため最早意味が無くなってしまっている。
それに気付き、さあっと青ざめる。
「(えっ、え…まさか…)」
ジャミルの態度からしてひょっとしたら…という思いがよぎった。さっきもタオルはカリムには渡すのみだったが、自分の時にはわざわざ広げてかぶせてくれた。しかも不自然に目も逸らされたし…。
2人の後に付いていきながらモヤモヤしていると、ジャミルが振り返った。
「ああ、それと…オンボロ寮まで遠いし、濡れたままじゃ冷えるから、寮に帰ったらまず風呂だな。俺の部屋のを使うといい。」
「え、何でだ?一緒に入れば…」
「いいから…。カリムは先に風呂に入ってろ。俺は監督生を案内した後で行くから。」
確かにここからオンボロ寮までは鏡を使ってもかなり遠いし、タオルがあるも冷えたままでは風邪を引くのは間違いない。
帰りが遅くなるためグリムには申し訳ないが、ジャミルの言う通りにした方が良さそうだ。そう判断した監督生は大人しく付いていく事にした。
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