【BLサイコロ】お題を掘り下げて書きました
「あいあいがさ」
ぼくは、颯太 が好きだ。
なんでも一生懸命取り組んで、結果を出す。努力できる。まっすぐなところが好きだ。
大人には「おにいちゃんは愛想がない」「かわいげがない」なんて言われてしまうこともあるけど…全然そんなことないよ。ぼくとふたりだけでいるときは、よく笑うしたまに甘えてくるし、眠るときはくっついていないと駄目なんだ。かわいいでしょ?
尊敬しているし、そのくせ実はすごく寂しがりやなこともしっている。ぼくは颯太が、大好きだ。
***
どんよりした曇り空。部屋のあたたかさと外の冷気の温度差で、窓はまっしろだ。颯太はひとり、洗濯物をたたんでいる。
ぼくも手伝うって言ったのに、宿題をしてろって言われてしまったんだ。
颯太は、宿題を学校でやってしまったから… そうやっていつも、ぼくに楽をさせようとする。
でもぼくはできればね、颯太と並んでいたいんだ。
どんなことだって、ふたりがいい。一緒にやったらもっと、はやく終るはずなんだからさ。
「ちぇ。…宿題なんてぼくも、終わってるんだけどなあ」
なかなか部屋に戻ってこない颯太のことを考えながら、曇った窓にひとさしゆびを滑らせた。
-そうた-
-なぎ-
ふたつ並んだその名前に、おおきな傘を描いた。
てっぺんには…ハートマークを描いたらおかしいだろうか?
ぼくは、颯太と並んで歩きたい。
守られたいなんて、思っていないんだから。
冷たい窓は、ぼくが描いたあいあいがさを白く曇らせてしまう。
ホッとするような、さみしいような。不思議な気持ちになった。
***
今日も、冷たい曇りの日。
颯太はぼくを残して、母さんのお使いに出かけた。
「雨が降りそうじゃん…颯太のばか。なんでひとりで行っちゃうんだよ」
もうそろそろ帰ってくる時間。でもぼくは面白くない。今日も今日とて、颯太は「兄さん」然としているからだ。
そういうところが頼れる存在ではあるが、それが「ふたりでひとつ」のぼくたちを否定するようにも思えて、いらつきが生まれてしまう。
ぼくは颯太が好きだ。
ぼくを置いていかないで。
ぼくの颯太なんだから、傍にいてよ。いつでも、ぼくのために傍にいてよ。
「凪 ?どうした?」
後から飛んできた声にハッとした。颯太がおつかいから帰ってきたんだ。
「…なんでもないよ。おかえり。遅かったね」
「公園とこでクラスのやつに会った」
「そっか~…」
嫌な気持ちになってしまう。本当は、寒かったね、大変だったね、って抱きしめてあげたいのに。うつむいてしまうと、颯太は言った。
「それでな。凪と一緒に公園行きたくなったから…行こうぜ」
返事をするより先にぼくの手をとって、走りだす。颯太の腕には、ぼくの上着。それから、ひとつの傘。
玄関でぼくに上着を着せると、大人には見せないような笑みを向けてくれた。
「バカだなぁ。俺と出かけたいならはやく言えばいいのに」
それはただの、「兄」としての言葉だったかもしれないけど。
ぼくは嬉しい。
ぽつぽつと降り出した小雨の中、ぼくたちは相合傘で公園を目指す。きっと他の子たちは帰るだろうから、ふたりで遊ぼう。寒くても平気だよ。
「傘さすと、そのぶん離れて歩かないとだから、嫌いなんだよな。ふたりでさせばいいんだな」
「そうだよ。それに、寒くない。手もつなげるし」
「あはは!凪、こうしたかったんだろ?知ってたぞ」
“あまえんぼう”な弟が、違う想いで手を握っていることもまだ知らないんだろうなぁ。こうして隣をずっと歩けたらいい。ぼくは颯太の傍を離れたりしない。
いまごろ、白く曇る窓ガラスには、いつか描いた相合傘が浮かび上がっているだろう。
ぼくは、
なんでも一生懸命取り組んで、結果を出す。努力できる。まっすぐなところが好きだ。
大人には「おにいちゃんは愛想がない」「かわいげがない」なんて言われてしまうこともあるけど…全然そんなことないよ。ぼくとふたりだけでいるときは、よく笑うしたまに甘えてくるし、眠るときはくっついていないと駄目なんだ。かわいいでしょ?
尊敬しているし、そのくせ実はすごく寂しがりやなこともしっている。ぼくは颯太が、大好きだ。
***
どんよりした曇り空。部屋のあたたかさと外の冷気の温度差で、窓はまっしろだ。颯太はひとり、洗濯物をたたんでいる。
ぼくも手伝うって言ったのに、宿題をしてろって言われてしまったんだ。
颯太は、宿題を学校でやってしまったから… そうやっていつも、ぼくに楽をさせようとする。
でもぼくはできればね、颯太と並んでいたいんだ。
どんなことだって、ふたりがいい。一緒にやったらもっと、はやく終るはずなんだからさ。
「ちぇ。…宿題なんてぼくも、終わってるんだけどなあ」
なかなか部屋に戻ってこない颯太のことを考えながら、曇った窓にひとさしゆびを滑らせた。
-そうた-
-なぎ-
ふたつ並んだその名前に、おおきな傘を描いた。
てっぺんには…ハートマークを描いたらおかしいだろうか?
ぼくは、颯太と並んで歩きたい。
守られたいなんて、思っていないんだから。
冷たい窓は、ぼくが描いたあいあいがさを白く曇らせてしまう。
ホッとするような、さみしいような。不思議な気持ちになった。
***
今日も、冷たい曇りの日。
颯太はぼくを残して、母さんのお使いに出かけた。
「雨が降りそうじゃん…颯太のばか。なんでひとりで行っちゃうんだよ」
もうそろそろ帰ってくる時間。でもぼくは面白くない。今日も今日とて、颯太は「兄さん」然としているからだ。
そういうところが頼れる存在ではあるが、それが「ふたりでひとつ」のぼくたちを否定するようにも思えて、いらつきが生まれてしまう。
ぼくは颯太が好きだ。
ぼくを置いていかないで。
ぼくの颯太なんだから、傍にいてよ。いつでも、ぼくのために傍にいてよ。
「
後から飛んできた声にハッとした。颯太がおつかいから帰ってきたんだ。
「…なんでもないよ。おかえり。遅かったね」
「公園とこでクラスのやつに会った」
「そっか~…」
嫌な気持ちになってしまう。本当は、寒かったね、大変だったね、って抱きしめてあげたいのに。うつむいてしまうと、颯太は言った。
「それでな。凪と一緒に公園行きたくなったから…行こうぜ」
返事をするより先にぼくの手をとって、走りだす。颯太の腕には、ぼくの上着。それから、ひとつの傘。
玄関でぼくに上着を着せると、大人には見せないような笑みを向けてくれた。
「バカだなぁ。俺と出かけたいならはやく言えばいいのに」
それはただの、「兄」としての言葉だったかもしれないけど。
ぼくは嬉しい。
ぽつぽつと降り出した小雨の中、ぼくたちは相合傘で公園を目指す。きっと他の子たちは帰るだろうから、ふたりで遊ぼう。寒くても平気だよ。
「傘さすと、そのぶん離れて歩かないとだから、嫌いなんだよな。ふたりでさせばいいんだな」
「そうだよ。それに、寒くない。手もつなげるし」
「あはは!凪、こうしたかったんだろ?知ってたぞ」
“あまえんぼう”な弟が、違う想いで手を握っていることもまだ知らないんだろうなぁ。こうして隣をずっと歩けたらいい。ぼくは颯太の傍を離れたりしない。
いまごろ、白く曇る窓ガラスには、いつか描いた相合傘が浮かび上がっているだろう。
1/1ページ