夏の終わり/河内鉄生



ひんやりとした風が頬を撫でると彼女は軽く身震いした。秋の訪れである、と実感すると共にある一人の人物が頭に浮かんだ。


「馬鹿野郎っ…」


空に向かって小さく呟くと彼女は目頭が熱くなるのを感じ、慌てて頭を無にするのだけれど。
一度、思い出されたそれは簡単には消えてくれない。彼女は嫌というほどわかっていたし経験してきたのだ。

それ、というのは彼女の過去の恋人で今は亡き人である。
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