【オドッテミタ】のは【ナイカレ生】


【偏見と妄想に塗れたイメージ】
リドル
創作ダンスとか苦手そう。形式通りのダンスは得意だと思う。
レオナ
お前ら足引っ張んじゃねぇぞ。やればできる第二王子。
アズール
裏で努力して完コピしてそう。そして、幼馴染たちにバラされる。
カリム
公式公認済み。楽しみすぎてアドリブ凄そう。
ヴィル
公式実証済み。お遊びだろうが、いかなるものでもプロ意識。◯ou◯ube寄り。
イデア
ある種のダンスはキレがいい。完コピしてドヤ顔しながら煽りそう。ニ◯ニ◯動◯寄り。
マレウス
運動神経はいい。もろもろの手加減、微調整の指示等、指導者の腕が試される。



某日、寮長会議にて。

今日はいつもの会議とは違い、それがリドルは気が重かった。自身の寮生から始まったNRCプチ動画ブーム。流行に詳しくないリドルには理解しがたいが、ギスギスしているよりはいいのではないかと思っている。その雲行きがおかしくなったのは、そこに目をつけてしまったあの学園長の一声である。

『ナイトレイブンカレッジからも、公式動画を作ってみましょう!』

そして、抜擢されたのがリドルたち寮長。この学園の生徒、すんなりと従うことはない。その内、約一名は部屋に立て篭もり、約一名は某オンボロ寮と楽しく踊っていたらしいが想定外の高評価で世間を騒がせた。図らずして、学園長にファインプレーの後押しだが。

元から決まっている学校行事等や、思わぬ騒動ならともかく寮長の肩書は忙しい。よって、話を聞いた寮長たちは様々な反論をした。交渉している者ももちろんいるが。いつも以上に強引に押し通す学園長は、あの手この手の口車で押し通し。結果は、各寮の代表者である寮長たちの動画作成会議が行われる成り行きとなり。つい先ほど、学園長との話し合いは済み。最低限ナイトレイブンカレッジの品位を落とさないようにという条件、学生らしいエネルギッシュな自由さで。そう言い、放り投げてそそくさと退室している。

リドルは正直、学園長を恨めしく思う。そんな娯楽的なこと今の今まで縁遠いものだったのだ。どう表現しろというのか。社交パーティー類いのダンスなら踊れるが、創作ダンス等のアレンジ系は苦手なのだ。憂鬱な面持ちで席に座っているリドルだったが、それ以上に絶望しているイデアの姿を見つけてしまい、今回は逃げ切れなかったんだなと少しだけ同情している。タブレットではなく生身で、目からハイライトが消え顔色はいつも以上に蒼白く、椅子に物理的に縛られブツブツと怨差が漏れでている。いつもは腹ただしい先輩だが、その様子に驚き、声をかけようか迷ったくらいだ。その隣にアズールが気にした様子がなく、手元の資料かなんらかを見ていたのでだいだい予想はついた。

そんなリドルにカリムが元気よく話しかけてきたので、何か知っているかと何気なく聞いてみると。オルトと天敵の双子が絡んでいると知り察した。そこに繋がりがあったのは意外だったが、イデアはオルトに弱いとデュース伝に聞いたことがあり、蔑ろにはできなかったのかと思った。

「それで、あんな姿にされてしまったのか」
「なはは。説得しに行った時も部屋に立て篭もってすごい騒ぎだったぜ!今日は参加してくれてよかったな〜」
「……あれは参加とは言わないよ」

他者のことより、自身もどうするか考えねばならない。


◆◆◆


「……ねぇ、アズール氏」
「僕はなんで椅子に縛りつけられてんの!?おかしいよね!?僕に人権無さすぎでは!??」

イデアは……絶望していた。

「説得した時にすんなり出てくれば、いくらでも対応しようがあったというのに……まさか、オルトさんがあの二人を連れてくるとは思ってもいませんでしたから」
「うう、以前も問答無用で脅されたけど、今回も酷い目にあった……あのギャングども……」
「そのギャングどもの顔馴染みの前で言うところですよ、イデアさん。オルトさんが動画を楽しみにしてるそうなので、顔出しは避けられませんね」
「あああ、目立ちたくないでござる!!あんな顔面の化け物たちに紛れ込むとか、引き立てにしかならんぞ!?どうしていつもスポットライトが拙者にーーー!!」
「あなたの言う、フラグを立てるからじゃないですか?」

あの凶悪な人魚たちにダイレクトアタックされたら、籠城なんてできないのである。必死の訴えはそっけなく流され。よほどのことでなければ、隣にいるこの男から求めている慈悲は得られない。散々調子のいいことを言っていたくせに、結局生身のまま捕獲され身動きを封じられるという。追い討ちに逃走できないように、魔力も込められている。

二重にする必要ある?
今回は部屋に籠っていたはずなのにナゼ?

いつぞやのマリッジにしろ、伝統行事にしろ、これでもかというくらいスポットライトのあたる場所に引きずり出されるのか?(※ただしハロウィンは除く)

このままされるがままではいけない。このピンチをイデア自身でどうにかするしかない。そう、己が持つ編集技術でーーー踊るのは回避できなさそうだが、肝心なのは『映像』の方である。オルトには『正規』のものを渡すとして、『ダミー』映像の編集に携わる役につければ!

(陰キャにも譲れない戦いがあるでござるよ!!)


◆◆◆


「あの学園長のことだから、利権だのが絡んでる気がするわ」

それぞれの定位置で各々に会話をしているのを尻目に、いつも変わらず美しい美貌の持ち主は呆れた顔で呟く。

「指導者に率先して立候補してただろ……ヴィル」
「あら、当たり前よ。このアタシが直々に参加するのよ?半端なクオリティでNRC公式として出すわけにはいかないもの」
「チッ、忌々しい記憶がチラつくぜ」
「意外よね。アンタならサボりそうな気もしていたのに」
「こっちはこっちで色々あんだよ……」

気だるそうに言うレオナと、そう答えるのはヴィル。どちらも積極的に楽しみたいという気持ちはない。

レオナに関してはどこぞの鴉がうっかり、彼の苦手とする甥っ子に情報漏らしたのが原因で、映像を視聴させないと、どんな行動を起こすのか予想がいくつも浮かぶのでやらざるおえなくなった。ヴィルに関しては芸能活動もある忙しい身だが、なんだかんだ学生生活を大切にするのと、極限まで高められている己の美学ゆえ、生半可なものを生みだすのを嫌がったからだ。それとして、長年の芸能活動、部活動での経験、VDC・フェアリーガラでの実績があるため指導者として受け持つのも必然だった。

「そろそろ話し合いを始めたいところだけど、マレウスは?」

《あっ》

「呼んだか?」
「呼んでねぇよ、帰れ」

お決まりのヴィルの指摘によりレオナ以外の声が揃うのはもはや風物詩になっているが、今回は違った。軽やかな音ともに現れたのは、マレウスだった。絶妙なタイミングで登場。全員まさか現れるとは思わず、見慣れた転移魔法にかかわらず硬直。条件反射で返すのはレオナのみだ。

「……マレウス、よく来れたわね」
「ふ、間に合ってよかったようで。ローズハートのところの寮生からオンボロ寮の人の子に伝わり。そして、僕へと伝わった」
「相変わらずの〝因果〟とやらが効かないのね、あの子」

嬉しそうに答えるマレウスに声かけしたヴィルは、いつぞやのこの男の動画を思いだす。人外離れした魔法力と、独特のテンションさえ調整できれば問題なそうだと思うことにした。

(動きは悪くないし、素質はあるのよね)

探しだすのは、あのリリアでも苦労するので仕方がなく参加かと思っていたが。自らこちらに足を運んでくれたようだ。またも思わぬ伝言、縁の繋がりというのだろうか。あいかわらず、マレウス関係のファインプレーをあの『トリックスター』が成したらしい。

「さて、7人揃ったことだし。話し合いを始めるわよ」



【※MMD寸劇風味なイメージでお送りしています】


1.曲を決めよう


【ヴィル】使用する曲名についてもう既に決めてあるの
【イデア】話し合いの必要性は?
【ヴィル】設けられた練習期間が短いの、省けるところは省いて時間を回す、ちなみに曲はカリムも知っているあの曲よ

【カリム】オレ!?もしかして、VDCのときの本番の曲か?
【ヴィル】少し惜しいわ、選抜候補の時に使用した曲の方
【リドル】そういえば、うちの寮生たちが練習用でよく流していたね、でも、あれは外部の……?
【ヴィル】そこは安心してちょうだい、仕事関係で事務所が直接やりとりする機会があったから、使用許可を頂けたの

【アズール】いやはや、さすがヴィルさんのネームバリューですね
【レオナ】おい、練習期間て一日で終わるんじゃねぇのかよ?
【ヴィル】7人の動きを合わせるのよ?一日で揃うわけないじゃない、だからってそんなに時間もかけれない……だいたい一週間前後かしら

《一週間!?》

【ヴィル】何?嫌そうな顔ね、さぁ、あんたたち。アタシは厳しいわよ、ビシバシ行くからね
【マレウス】それはどういう曲なんだ?(ウキウキ)
【カリム】マレウスは知らないのか?えっーと、曲はな、ねじれーーー
【ヴィル】今、歌いださなくていいのよ!流すから待ちなさい!

【フル配信を待ち望む主題歌が流れはじめた】


◆◆◆


2.練習期間


【一週間の日々、省略】
【それぞれ合間合間の時間を見つけては練習する日々】

【途中経過】
【自信ありげに余裕の表情でキレがいいスライドするアズール】
【苦虫潰した表情でぎこちない動きをするリドル】
【ヴィル、あたりまえのようにキレがいい】
【イデア、やたらキレがいい】
【レオナ、やればキレがいい】
【カリム、キレはいいがアドリブ、豪快な動き】
【マレウス、キレがいいがちらちら魔法力の片鱗】

【アズール】リドルさん、苦戦しておられるようですね?どうです、この僕が慈悲でアドバイスでもしましょうか?
【リドル】ウギギ……自由性を表現するものは苦手なんだ。形式通りのものなら踊れるけど……ありがたい申し出だけれど遠慮しておくよ
【リドル】(どんな対価を要求されるか、ごめんだよ)(アズールも苦手そうなイメージを持っていたのだけれどダンスは得意なのか)(なんだ……この敗北感)
【イデア】(アズール氏、絶対隠れて猛練習しましたな)
【リドル】それよりも、納得いかない方々が

【リドルが恨めしそうにジト目で、イデア、レオナを見る】

【レオナ】どこぞの鬼教官に扱かれたからなぁ、ロクな目に遭う前に合わせてやってんだよ
【ヴィル】随分な言い様ね、扱いやすくてスムーズだからいいけど
【イデア】僕は……まぁ……体を動かさなきゃいけないモノがあるので
【イデア】それにしても、リドル氏もうまくいかないことがあるんですな

【イデア、お馴染み煽り顔】

【リドル】ウギィ……コホンッ、これはこれは激励ありがとうございます。すぐに追いついきますよ
【リドル】(このまま、あの二人に煽られたままじゃ終われないよ!)

【ヴィル】ああ、そうそう、スターゲイザーで太鼓叩いてたあんたの動き悪くなかったものね
【イデア】ソレ、掘り返すのやめてくれます!?


【リドルは猛特訓で追い上げた】


◆◆◆


3.動画撮影終了


【イグニハイドの技術力】
【学園長の魔法力】
【ステージは全寮の要素を組み込んでいる】

【動画の内容は省略】
【省略の理由:MMD見すぎてネタ被りそう】
【とりあえず、なんかめっちゃスタイリッシュ動画】

【リドル】このどこからともなく聞こえてくるナレーション、誰かの心の中代弁してないかい?
【イデア】学園長、そこへ無駄に有能発揮すんの?


◆◆◆


4.動画編集


【イグニハイド、イデアの部屋】
【イデア、クマを作りながら連日夜鍋し動画編集中】
【同時進行で2本作成、ここで頑張らねば全世界に顔面を公開されてしまう危機】

【イデア】なんとか不審がるヴィル氏から、動画編集権をもぎ取ってきたが
【イデア】何が楽しくて自分のキメ顔編集しなくちゃならないの……はぁ、ツラ……
【イデア】オェ……改めて見ても、拙者の顔色悪すぎでは?公開処刑過ぎない?

【※彼は自分の顔が良いことを自覚していません】

【イデア】はぁぁ、本当に拙者よくガンバッタよくオドリキッタ
【イデア】オルトから癒し摂取したし……でも、動画絡み中はオルトも警戒しないと……はぁ、ツラ……
【イデア】さーて、あとは【公式】用と【すり替え】用のダミーを、奴らにバレないように

【連絡用のスマホ】
【鳴り響く重低音BGM】
【イデアの好きなラスボス戦BGM】
【劇画タッチで固唾を飲むイデア・シュラウド】

【イデア】イ、イヤな予感

【画面に浮かぶその名は】
【ヴィル・シェーンハイト】

【イデア】気づいてないことにしよ

【永遠と鳴り響くラスボスBGM】

【イデア】うぅ……はーい……もしもし
【ヴィル】出るのが遅かったわね?妙な小細工とかしてない?
【イデア】(ギクゥゥゥ)
【イデア】もう夜も遅いですし!ヴィル氏が非常識では!?
【ヴィル】まだ8時にもなってないでしょ……

【ヴィル】完成したら見せて頂戴。イデアの技術は信頼しているけれど動画のシーンごとにこだわりたいの。アタシも映画研究会の部長よ、自信があるわ
【イデア】了解シマシタ

【イデア】(かっーーーーー!これだから意識高い系はーーーーー!)

【ヴィル様による場面編集指導】
【スタイリッシュな動画が着実に仕上がっていく】
【やたらカッコイイ自分に〝これが、拙者……?〟となりながら現実逃避するイデア】


◆◆◆


5.動画確認


【場面転換】
【イデア、バレる】
【最初からクライマックス】

【イデア】何も隠してないでござる!ござるよ!

【訴えは届かず隠していたブツをヴィルに回収される】

【ヴィル】編集に付き合ったとき、不審な動きしていたから注意深く見てたのよ。取り押さえたけど呆れた……

【ブラックを強調したスタイリッシュな映像】
【それぞれの寮長の魅力を違和感なく魅せるハイクオリティ】
【………それをぶち壊すように、一部モザイク処理された物体】
【腹立つことに、これがまた絶妙にマッチングしておりシュールな笑いを生み出している】
【一部にウケる可能性は秘めている】
【オタクの孤軍奮闘に、呆れてる勢と、必死な攻防に密かにウケてる勢、これはこれで味があっていいんじゃない勢と、三勢力に分かれていた】

【ヴィル】イデア!このモザイクは何よ!?髪部分の青であんただって丸わかりじゃない!!
【アズール】イ、イデアさん……いつから……卑猥物に転身してしまったんですか……
【イデア】アズール氏が裏切ったのが悪いから!強制参加という義務は果たしたし!シュールでよくない?意外とウケるでしょ(ヤケクソ)
【ヴィル】内輪ネタなんて人を選ぶでしょ!
【ヴィル】……ったく、投稿する前に阻止できてよかったわ。まったく……やり直し!
【イデア】ヒッ、そんな!

【カリム】青色の物体が写っててこれはこれで面白いな!
【リドル】なんでも前向きに物事が見れるカリムのそういうところ嫌いではないよ……

【純粋に楽しむカリムと、燃え尽きているリドル】

【マレウス】この機械はどう操作する?
【レオナ】おいコラ、触んっ

【データが吹っ飛びました】


◆◆◆

6.完成


【後日、再び】

【ヴィル】ふぅ、途中データが消えるハプニングはあったけれど、なんとかなんとか完成したわね
【イデア】拙者的にはナイスマレウス氏だったのに
【ヴィル】なにか言ったかしら?今度こそちゃんと動画編集してるのよね?
【ヴィル】今回は最初から最後まで監視したはず大丈夫でしょうけど

【保存されている動画を再生する】
【編集技術により、完全にある人物が消えている】
【寮長が6人でも違和感がない】
【イデアはまだ諦めていなかった】

【ヴィル】ここまでくると、あんたの執念に感心してきたわ……
【イデア】僕の手にかかればこのくらい……ふひひ

【してやれれた表情のヴィル】
【勝ち誇った表情のイデア】

【アズール】オルトさんが悲しみますよ
【アズール】(この人、こういうところあるよな)
【イデア】オルトにはちゃんと正規のものを見せ、ないで、ござるよ!ない!
【アズール】(自ら暴露してる)
【カリム】イデア消えてても違和感ないな!
【イデア】陰キャの身からすると、その言い方別の意味で捉えられますぞ!?

【マレウス】参加できて良かった

【満足した表情のマレウス氏】

【リドル】はぁ、なんでこんな部分で才能を無駄に発揮するんですか、イデア先輩
【アズール】そうですよ。まだ性懲りも無く抗って……なんーて、この僕が何も対策していないと?ちゃんと【公式】のコピーはしてあります
【イデア】へ?
【レオナ】ロクでもねぇ企みしてやがるのはわかってんだよ。こっちはこっちでデータバックアップ済みだ。さっさとこの茶番終わらせたいんだよ、このカイワレ大根

【▶︎動画投稿】

「や、やめてくだされーーー!イデア・シュラウドの喪失があああ」



イデアがオルト用に制作した真面目な完成動画。
評価は、保護者たちからの反応含めて言わずもがな凄まじく。

常々、世間を賑わすNRCの名と、決定打となるヴィル・シェーンハイトの存在のコラボで、あらゆるSNS、テレビ、雑誌と話題を一時期総ナメした。ちなみにヴィルは当たり前として、他の寮長たちが軒並み顔がいいのがテレビ的に受けて話題になったのは、学園長的に誤算の一つだった。

「え?ウチの生徒、顔良すぎるんですか??」
(ヴィルはともかく、生徒の顔は見慣れすぎているし、なんとも思っていない困惑した鴉の図)


クロウリー自身も、ミステリアスな学園長として注目されるとは夢にも思っていなかった。
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