【はじまり】

「ケイト先輩とマジカメ対決することになったんだけど、監督生いい案ない？」

次の授業の準備中のことだ。事の発端は、エースが監督生にそうしゃべりかけてきたのがはじまりだった。

寮長たちの連続オーバーブロットも落ち着き、学園はここ最近プチ騒動はあるものの平和な雰囲気だ。監督生もまだ帰り方がわからず、残留の処置をとってもらっている。

毎日、穏やかに学校生活を送る日々。でも、そこは男子高校生。なにか楽しいことを探してるようだ。

「なにそれ、どういうこと？」
「正確にはマジカメ限定じゃなくても、SNS関連でイイねの数が多い方が勝ちっつーはなし」
「なんで、そんな対決に？」
「昨日寮の談話室でさ先輩たちと喋ってたらさ、暇を持て余したケイト先輩がマジカメ片手にそう提案してきてさ、たしかに最近おもしろいことないし対決してみようかなーと」
「ふむふむ、で勝ったらご褒美とかあるの？それでも賭けとかしてるの…？」
「やっぱ、バレたか。勝ったら、トレイ先輩が好きなタルトや菓子作ってくれるってよ。あ、負けても罰ゲームはなし」
「健全的！それなら協力しようかな。食い物あるならグリムとかも乗りそうだね」
「今はいないけどデュースも誘った。じゃあ今日の放課後、部活ないし作戦会議と行こうぜ！」

会話も終了して、次の授業に取り組む。

監督生は考える。マジカメで勝負するなら、ケイト先輩には絶対敵わない。静止画の技術力ならあちらの方が上だ。それに、自分はスマホをまだ持っていない。そこはエースやデュースのがあるから問題ない。いい加減、そろそろ持たないとな。

みんなの持ち味を生かしたもので…なにか…そうだ。楽しそうな動きがわかる動画で対抗してみるのはどうだろうか？提案してみよう。この世界にも動画投稿サイトもあったはずだ。
でも、仮にもナイトレイブンカレッジ生で顔出し身バレをネットに投稿しても大丈夫なのか…うん。ケイト先輩の身バレ上等精神とあの学園長のノリだから、変なのじゃなければ、ある程度見逃してくれるかな。でも、自分は顔出しはしたくない。ねっとコワイ。紙袋かぶらせてもらおう。


◇


【作戦会議と練習】

その①(放課後:作戦会議中／場所:中庭)
監督生「はい提案！ダンス動画上げてみない？」
エース「動画かぁ、オレ編集技術とかないんだけど」
デュース「ダンスか…準備体操とかじゃダメか？苦手なんだ」
エース「マジでwwwそれはそれでシュールwww」
監督生「シュール…みんな真顔でやるならいいと思う」
エース「やwめwてw」
グリム「オレ様、手足が短いからムリなんだゾ」
デュース「マスコットキャラ枠でならいけるんじゃないか」
監督生「短い手足がパタパタしているのはグッとくるよね」
エース「親バカやめろww」
デュース「お前、抱え込んで腹筋どうした？」
監督生「内容は、バルガス先生式準備体操でいいの？」
エース「まとめるな！」

その②(動画内容:流行りのダンス動画に決定／練習用動画を撮影することに)
デュース「結局…ダンスになった」
グリム「動画に出れるだけいいんだゾ…オレ様、撮影係に任命されたんだゾ」
監督生「ちょうどよく動き回れる、小型カメラ的機能能力てグリムしかいないんだよ」
グリム「誰が！カメラじゃーーーーー！！！」
エース「おーい！軽音部から携帯音楽機借りてきた。ちょうどあの音楽CDもあるんだとよ！」
監督生「そうなの？」
エース「流行りの曲も練習する場合もあるからって、カリム先輩が言ってたわ」
デュース「アルアジーム先輩に会ったのか、あとで乱入してきそうだな」
グリム「さっそく練習するんだゾ！」

その③(練習中／通りすがりのサバナクロー寮生を確保)
エース「だいぶ、いい感じになってきてねー？」
デュース「この部分的なら、いけるかもしれない。フルは自信ないな…」
グリム「オレ様も踊りたくなるんだゾ！」
監督生「グリム！？スマホブレてる！ブレてる！あ、ジャック」
(ランニングのジャック、まずいものを見たという感じで逃げた)
デュース「いでよ！大釜！」
エース「逃げるとは、ヒドイな〜ジャックくん？」
ジャック「ガルル…ユニーク魔法で妨害するとは…お前らのことだ、俺のこと巻き込むつもりだろ！また！」
エース「大当たりーーー！イエーイ！１名様ご案内！」
ジャック「…こいつ、どうしたんだ？」
監督生「この場は男子高校生のノリで満たされてるから」
ジャック「意味がわからない」

その④(ノリとノリでぶっつけ本番！乱入してきた先輩たち！)
ジャック「こんなもんか？」
監督生「すごっ！サバナクロー寮生！身体能力すごっ！」
デュース「キレッキレッだな！ジャックすごいな！」
エース「半時間で…お前さては、こっそり練習しててただろう！」
ジャック「するか！」
グリム「そろそろ日が暮れそうなんだゾ。一通りの流れを撮るぞーーー！オラァ、お前ら配置につくんだゾ！！」
デュース「すっかりカメラマンになっちまって…」
監督生「その前に自分、紙袋被ってもいい？顔出しＮＧなんで」
エース「マジフト大会で、全世界に円盤直撃シーン放映された奴が何言ってんだ」
監督生「う、うるせーーーーー！」
デュース「と、とりあえず。ミュージックスタート？」


◇


【オドッテミタ】

(動画内容)撮影者:グリム

左からジャック、センター左にデュース、センター右にエース、右に紙袋in監督生

スマホカメラにより
ジャック(キレッキレッ)デュース(若干動きが硬い)始終テレてる
エース(ノリノリ普通にキレがいい)
監督生(紙袋によりテンポ少し遅れてる。キレはいい)

ミュージックに沿い、4人ともダンスをしはじめる。
ステップを踏む、フリを揃えている。
少々、複雑なダンスのフリ(ご想像にお任せします)
手を叩く、指パッチン。

全員、顔面アップ
ジャック・デュース(顔真っ赤)
エース(不意打ちのカメラ:グリムの顔面接近により色んなもの噴き出す)
監督生(紙袋)

手で銃の形を作り、視聴者に向けてバンッて打つ。
サビの盛り上がり部分に入り、4人同時でジャンプする。

カメラ:グリムが全体像を写す。背後の存在に気づき、画面が激しくブレる。
その様子に、エースと監督生がギョとする。若干動きが止まりかける。

フロイド「なぁにしてんの〜カニちゃん、小エビちゃん」
エース・監督生「フロイド先輩！？」

通りすがりのフロイド(機嫌がいい)が乱入。

左側、無心で踊り続ける。
右側、説明のため少し動きをとめる。どぎまぎしてる。
説明を聞いておもしろそうなので、フロイド急遽参加。

エース「踊れるんですか！？てぇ、フリが完璧ぃ！？」
監督生「これが噂の天才気質！？」
フロイド「あははっ！なーんかおもしれーーー！」

ジャック、なにかを察して音楽ループをするためスイッチを入れ直す。
デュース、疲れはじめてる。
音楽ループのためフロイド以外の、みんな踊りを延長する。
フロイドの位置はエースと監督生の間。右側の存在感。

ステップを踏む、フリを揃えている。
少々、複雑なダンスのフリ(ご想像にお任せします)
手を叩く、指パッチン。

全員、顔面アップ
ジャック(真顔)
デュース(疲労)
エース(顔青ざめ、手とかあたったらヤベェと思ってる)
フロイド(セクシーな顔面、ニヤッと笑って歯が出たのでカメラ:グリムが恐怖でブレる)
監督生(紙袋つられてカメラ:グリムが恐怖でブレてる)

手で銃の形を作り、視聴者に向けてバンッて打つ。
サビの盛り上がり部分に入り、5人同時でジャンプする。

カリム「宴か！フロイドもいるじゃないか！オレもまざっていいか！」
フロイド「いいよ〜」

左側にカリムが乱入。フロイドが勝手に了承する。
ジャックとデュースが引き寄せられる。えっ！という顔する。
独自な踊りでそれっぽく踊りだす。

ヤケクソでジャックのシッポが荒ぶったり、デュースが元ヤンでてきたり、カリムがエースに抱きついたり、フロイドのテンションがブッチきって、監督生の両足を持ち、振りましたり、監督生は紙袋を死守した。

音楽の残りの時間までカオス。

最後、ポーズを決めて終わり。


◇


【動画投稿してみよう】

その⑤(その後)
カリム「楽しかったな、今度はジャミルを誘おう！」
エース「はぁ…はぁ…次があるかわからないっすけど、問答無用で巻き込まれるジャミル先輩…」
デュース「疲れた…」
ジャック「…もう二度やらない」
監督生。撮影で疲れているグリムを撫でながら、エースのスマホで動画を確認する。
(これは……！)
監督生「………これ練習用の動画だったんだだけどな………フロイド先輩、カリム先輩」
フロイド「ん〜〜〜？小エビちゃんどうしたの〜？」
カリム「どうした、監督生！」
監督生(スゲェ上機嫌だ)
監督生「この動画、サイトにアップしたいんですが、先輩方に許可を貰いたくて」
疲れてる一年ズが『監督生！？』と叫んでいる。
二人とも別に気にしないので、いいよと了承してくれる。
カリムは、軽音部の途中なのでついでに音楽器具を持って帰ってくれた。フロイドは上機嫌で帰ってた。
監督生、サイトの説明を見て確認し、編集せずに投稿する。
エース「それ編集してないのにいいのか！？」
ジャック「ガルル、どういうことだ？踊りだけじゃないのか？」
デュース「ほ、本当に投稿するのか！？」
監督生、グリムを撫でながら紙袋のまま言った。
監督生「我々の勝利だ！」
この後、ジャックに土下座でめちゃくちゃ謝った。


投稿された動画は男子高校生たちの賑やかで楽しい動画になっており、再生回数は普通に10万以上超えた。固定されたタグいがいに【撮影者:魔獣、男子高校生かわいい、一年ズがかわいいすぎる、乱入する先輩たち、ブレブレなカメラ、かなり恐怖を感じた、顔面アップの威力、右側の存在感、ハートを撃ち抜かれた、ブレない紙袋】……等ひっきりなしタグ編集されたのは言うまでもない。

もちろん賭けは、エースたちの勝利である。

ケイト「これ普通にズルくない！？今度はけーくんも混ぜてよ！」
エース「協力者に制限なかったスもん！先輩、混ざりたかったんかい」
ケイト「楽しそうだったからね！」

動画を見たケイト先輩は、この後色んな先輩たちに見せたそうで反響(お叱り)がすごかった。

動画を見た、オクタヴィネル寮の寮長が紅茶を噴いたとか、副寮長が含み顔していたとか、サバナクローの苦労人ハイエナが自分とこの寮長のキメ顔動画で稼げそうとか思ったり、各ナイカレ生に衝撃を与えたため、一年ズとか、二年ズとか、三年ズとか、寮長ズ(欠席一名)とか、各寮生で踊ってみたとかあったとかないとかしだすのは時間の問題だった。


後日。
監督生(紙袋)とグリムとディアソムニア寮の寮長がダンス動画を上げて、別の意味で世界に衝撃を与えてしまったのは別の話である。

監督生「ダクとコメントがすごいことになってる…【マレウス様ご乱心】【マレウス様何してるんですかww】【これはいいマレウス様】…だってツノ太郎、セベクに怒られるなぁ」
マレウス「楽しかった」
グリム「こいつ、やりきった顔してるんだゾ」

個人的に、リーチ兄弟のダンス動画見たいです。