捻れた世界で生きてゆけ


「レオナさん、いくら女に飢えてるからってアレはないっスよ〜」

茶化して言うが、わりと冷や汗かいた出来事だった。

最初は、珍しくレオナさんが起きて植物園で行動しているなと様子見をしていた。近くに小柄な少年がいたから、何かしでかしてしまったのだろう。シシシっと笑って見てたら、いきなりレオナさんが少年の体をまさぐりはじめるので目玉が飛びでそうになった。雲行きがおかしな方向にいこうとして、止めようと飛びだした。

「飢えてねぇよ」
「一応サバナクロー寮の一員として言っとくっスけど。誰かに見られてたら、人間の子を片手で口塞いで首元触って襲うとしてるサバナクローの寮長とか噂されるんスからね、気をつけて下さいよ?」

その言葉の裏には、来月のある大きな目的のために問題はおこすなという意味を添えておく。慎重にそこらへん計画しているこの人が、あんな変な行動をおこすとかこちらもどう対処すればいいか困る。

「だから、確かめてただけだ」
「性別をスか?女々しい男にしか見えなかったスけど…男装でもしてたんスか?それで、触ったんなら、レオナさんのムッツリすけべ!イダダダ!すんませんっス冗談っス!」
「趣味じゃねぇよ。ただ、オトシマエつけさせるために歯の一本でも置いてってもらおうかと思ったんだが、なんーか気分が乗らなくてな、まさか…と思って」
「え!?マジで!?女の子だったスか!?」
「いや、男だった」
「やっぱり男じゃないっスかーーー!」

違和感を感じるという、我がサバナクローの寮長の顔は納得できてない顔だった。ならば中身が女寄り。ポムフィオーレ寮長の顔を思い浮かんだが、あの人とこの男は仲が悪い。自分は特に興味はないが、植物園の少年がもし女の子だったのならこの男は誠心誠意、相手に謝罪してもてなすのだろうなと思った。

でも、体をまさぐるのはアウトだと思うッス。

怠惰な百獣の第二王子を、縁の下で必死にフォローし続ける苦労人のハイエナは大きなため息をはいた。

[chapter:それでは〝まだ〟気づかない]
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