覚えてないから諦めな
※本編前に投稿したものです
※『覚えてないから諦めな』の内容が含まれています
◆
目が覚めると、まず初めに全身に違和感を覚えた。
スースーした寒さがあり、あちこちじんじんと肌が切れたような痛みを感じ、筋肉痛を患ったように怠い。極めつけは、下半身。人体の大切ところ、思春期なので具体的に言うのはちょっと恥ずかしいところ。とにかく、大事な部分が尋常じゃないほど痛い。ぶっといのが突き刺さった感覚がある。
(すごくしんどい)
瞼を開けるのも億劫で二度寝でもしようかと思っても、一度気づいた違和感に無視できない。腕を動かさそうとして、シーツをさわさわ動かすと物体に接触した。触り慣れた相棒の体毛ではないーーー人特有の感触。
「おや、目覚めましたか。お加減はいかがです?」
聞き覚えありすぎる艶のある低音。この声の特徴は、ジェイド先輩だ。びくりと体を震える。
(え!?)
寝惚けていた頭はじわじわ覚醒する。オンボロ寮の寝室にジェイド先輩が居るのだから混乱した。そもそも、ここが自寮ではない可能性が浮上し、さらに体の違和感が強調されていく。
考えてないで目を開けて確かめればいいが、その開ける行為が怖い。なにやら、自分はとんでもないことをやらかしてしまった気がするのだ。
「起きてらっしゃるようですが、動けないそうですね」
「無理もありません。媚薬効果の軽減対応に加えて、体格差によりかなり負担させてしまいました」
「体力消耗が激しいのでしょう。ご安心下さい、アフターケアもバッチリこなしましょう」
(媚薬!!?)
状況把握ままらないまま一方的に進行する話。自分に向けられているであろう言葉の意味を半濁すると、とんでもない事態に巻き込まれたようだ。
唐突に自分の腹部を大きな手によって覆われる。するりと撫でられる。妙にひんやりした感触にぶるりと震えた。
……チョットマッテ、ジブンゼンラデハ?
もう頭は冴えきっている。先生、この展開知ってます。恋愛系のマンガやドラマとかで見たことのある伝家の宝刀。思春期を超えて乙女たちが通るシチュ。
意を決して、ソッと目を開ける。
ぼやけた視界、はっきりしていき。どう見えても衣服を身につけておらず、シーツに埋もれる自分の体。シーツからでている体の部位には、エグいくらいの傷跡がつけられているのが見えた。アトとか生優しいものじゃない、肌に穴があいてる。鋭い牙を持つ生き物に齧られ可哀想なことになっていた。どおりで痛いはずだ。
シーツの下、蠢く手の持ち主へソッーーーとソッーーーと視線を辿ると、乱れたワイシャツを羽織るほぼ全裸の美形がいた。
「……ん、おはようございます。監督生さん」
美しく冷ややかなヘテロクロミアと視線がぶつかり、自分は叫ぶ。声枯れしていて詰まる。
これって………!?これって、もしや………!?
「ワ、ン、ナイト、ラブーーー!?」
悩ましげな吐息をだし挨拶する先輩を直視した自分は、再度元気よく気絶した。
次目覚めたときに体は清潔にされ身なりは整えられていた。お世話(?)をしてくれた先輩も、後はネクタイ締めてブレザーを羽織る状態で衣服を身につけていた。自身より優先して事故現場(?)を後処理していたようだ。ついていけていない頭は呆気に取られながら眺める。
どういう状況なのか、自分たちに何が起こったのか尋ねようと、口を開いては閉じていたら、見兼ねた先輩が説明してくれた。
「ふむ……〝少し〟記憶が飛んでいるようですね」
少しどころかこれぽっちもこの状況に関する覚えはないが、まずは彼の話を聞くことにする。下手に話の腰を折っては、進まなくなってしまう。
「ことの始まりは、よからぬ劣情を持った生徒によって貴方は媚薬系の魔法薬をかけられてしまったのです。すぐに発情してしまい性交渉しなければ治らない類の厄介な代物です」
「なんて、もんが、存在してる、んですか!?」
「非合法のいわゆるラブグッズといったところでしょうか」
「ふつう、にはんざ、い!?」
淡々と語られる内容。理解が追いつかない。あいかわらず返す言葉も声枯れしている。
「事件当日、その犯行現場は植物園の近くでした。たまたま、育てているきのこの様子を見にきた僕は居合わせたのです。その時間帯というのも、誰も人のいない時間を見計らったとのことだったので、極めて悪質な性犯罪を起こそうとしたようですよ」
語られる内容が内容すぎて、記憶はないが想像して心臓が冷えて青褪めていく。
「どうして、それをリーチ先輩が、詳しく知って」
「捉えた際に色々お話をしたんですよ、大丈夫ですよ。その犯人は貴女の目の前に現れることはないよう処置しました」
「あ、はい」
犯罪を犯そうとした相手の処遇はすでに終了してるらしい。
はたしてそれは正規のルートを通りなされたのか、性犯罪を起こそうとしたやつの所在なんで知りたくもないし、詳細をつつくのもこれ以上別の意味で怖い。オクタヴィネル生のいう処置などろくでもなさそうだ。
そして、聞かねばならない、この……非常にアダルティーな状態。着替え終わっていた先輩の纏う空気は〝エッチなんてしてませんよ?〟といつも通りだった。仮にも後輩の女子とエッチしたにしては反応は薄すぎる。元々とそういうところコントロールするのに長けたヒトだ。しかも、あのこなれた所作の数々。
ごくりと、息をのむ。
自分の顔はさながら劇画タッチの表情しているに違いない。
(この余裕……相当な経験人数の持ち主なのかもしれない)
百戦錬磨の貫禄が滲みでていた。ズバッと聞いてしまっても問題なさそうだ。
「自分とリーチ先輩は」
「〝相手〟をするのは、僕しか居ませんでしたので」
「えと、合意なんですよね?」
「ーーーええ、そうですよ」
何一つ動揺していない、淡々と紡ぐ言葉。
なんの色も映していないーーーいや、イキモノを観察するヘテロクロミアを伺うしかなかった。
※『覚えてないから諦めな』の内容が含まれています
◆
目が覚めると、まず初めに全身に違和感を覚えた。
スースーした寒さがあり、あちこちじんじんと肌が切れたような痛みを感じ、筋肉痛を患ったように怠い。極めつけは、下半身。人体の大切ところ、思春期なので具体的に言うのはちょっと恥ずかしいところ。とにかく、大事な部分が尋常じゃないほど痛い。ぶっといのが突き刺さった感覚がある。
(すごくしんどい)
瞼を開けるのも億劫で二度寝でもしようかと思っても、一度気づいた違和感に無視できない。腕を動かさそうとして、シーツをさわさわ動かすと物体に接触した。触り慣れた相棒の体毛ではないーーー人特有の感触。
「おや、目覚めましたか。お加減はいかがです?」
聞き覚えありすぎる艶のある低音。この声の特徴は、ジェイド先輩だ。びくりと体を震える。
(え!?)
寝惚けていた頭はじわじわ覚醒する。オンボロ寮の寝室にジェイド先輩が居るのだから混乱した。そもそも、ここが自寮ではない可能性が浮上し、さらに体の違和感が強調されていく。
考えてないで目を開けて確かめればいいが、その開ける行為が怖い。なにやら、自分はとんでもないことをやらかしてしまった気がするのだ。
「起きてらっしゃるようですが、動けないそうですね」
「無理もありません。媚薬効果の軽減対応に加えて、体格差によりかなり負担させてしまいました」
「体力消耗が激しいのでしょう。ご安心下さい、アフターケアもバッチリこなしましょう」
(媚薬!!?)
状況把握ままらないまま一方的に進行する話。自分に向けられているであろう言葉の意味を半濁すると、とんでもない事態に巻き込まれたようだ。
唐突に自分の腹部を大きな手によって覆われる。するりと撫でられる。妙にひんやりした感触にぶるりと震えた。
……チョットマッテ、ジブンゼンラデハ?
もう頭は冴えきっている。先生、この展開知ってます。恋愛系のマンガやドラマとかで見たことのある伝家の宝刀。思春期を超えて乙女たちが通るシチュ。
意を決して、ソッと目を開ける。
ぼやけた視界、はっきりしていき。どう見えても衣服を身につけておらず、シーツに埋もれる自分の体。シーツからでている体の部位には、エグいくらいの傷跡がつけられているのが見えた。アトとか生優しいものじゃない、肌に穴があいてる。鋭い牙を持つ生き物に齧られ可哀想なことになっていた。どおりで痛いはずだ。
シーツの下、蠢く手の持ち主へソッーーーとソッーーーと視線を辿ると、乱れたワイシャツを羽織るほぼ全裸の美形がいた。
「……ん、おはようございます。監督生さん」
美しく冷ややかなヘテロクロミアと視線がぶつかり、自分は叫ぶ。声枯れしていて詰まる。
これって………!?これって、もしや………!?
「ワ、ン、ナイト、ラブーーー!?」
悩ましげな吐息をだし挨拶する先輩を直視した自分は、再度元気よく気絶した。
次目覚めたときに体は清潔にされ身なりは整えられていた。お世話(?)をしてくれた先輩も、後はネクタイ締めてブレザーを羽織る状態で衣服を身につけていた。自身より優先して事故現場(?)を後処理していたようだ。ついていけていない頭は呆気に取られながら眺める。
どういう状況なのか、自分たちに何が起こったのか尋ねようと、口を開いては閉じていたら、見兼ねた先輩が説明してくれた。
「ふむ……〝少し〟記憶が飛んでいるようですね」
少しどころかこれぽっちもこの状況に関する覚えはないが、まずは彼の話を聞くことにする。下手に話の腰を折っては、進まなくなってしまう。
「ことの始まりは、よからぬ劣情を持った生徒によって貴方は媚薬系の魔法薬をかけられてしまったのです。すぐに発情してしまい性交渉しなければ治らない類の厄介な代物です」
「なんて、もんが、存在してる、んですか!?」
「非合法のいわゆるラブグッズといったところでしょうか」
「ふつう、にはんざ、い!?」
淡々と語られる内容。理解が追いつかない。あいかわらず返す言葉も声枯れしている。
「事件当日、その犯行現場は植物園の近くでした。たまたま、育てているきのこの様子を見にきた僕は居合わせたのです。その時間帯というのも、誰も人のいない時間を見計らったとのことだったので、極めて悪質な性犯罪を起こそうとしたようですよ」
語られる内容が内容すぎて、記憶はないが想像して心臓が冷えて青褪めていく。
「どうして、それをリーチ先輩が、詳しく知って」
「捉えた際に色々お話をしたんですよ、大丈夫ですよ。その犯人は貴女の目の前に現れることはないよう処置しました」
「あ、はい」
犯罪を犯そうとした相手の処遇はすでに終了してるらしい。
はたしてそれは正規のルートを通りなされたのか、性犯罪を起こそうとしたやつの所在なんで知りたくもないし、詳細をつつくのもこれ以上別の意味で怖い。オクタヴィネル生のいう処置などろくでもなさそうだ。
そして、聞かねばならない、この……非常にアダルティーな状態。着替え終わっていた先輩の纏う空気は〝エッチなんてしてませんよ?〟といつも通りだった。仮にも後輩の女子とエッチしたにしては反応は薄すぎる。元々とそういうところコントロールするのに長けたヒトだ。しかも、あのこなれた所作の数々。
ごくりと、息をのむ。
自分の顔はさながら劇画タッチの表情しているに違いない。
(この余裕……相当な経験人数の持ち主なのかもしれない)
百戦錬磨の貫禄が滲みでていた。ズバッと聞いてしまっても問題なさそうだ。
「自分とリーチ先輩は」
「〝相手〟をするのは、僕しか居ませんでしたので」
「えと、合意なんですよね?」
「ーーーええ、そうですよ」
何一つ動揺していない、淡々と紡ぐ言葉。
なんの色も映していないーーーいや、イキモノを観察するヘテロクロミアを伺うしかなかった。