満たす条件はノーマルエンドから


昔から、誰かを探している。
細かくはっきりは思いだせないのに、その存在の記憶を気のせいだと片づけられず。

〝それっていわゆるゼンセってヤツじゃね?〟
〝新たな場所でなら、案外見つかるかもしれませんね〟

生き残ったたった一人の兄弟に話せば。興味なさげに言われるが、話は真剣に聞いてくれたらしく、彼独自の感覚ではかれた言葉はしっくり。

「お前は意外とロマンチストなんですね」

面白い努力家の幼馴染にも話したりして鼻で笑われる、陸へと上がるか上がらないかのときに。昔話した内容を覚えていてくれ思わずふきだす。そのことを揶揄すると顔を真っ赤にして怒ってきて墨を吐かれ、兄弟共々笑って馬鹿騒ぎした。その頃には引っかかるものの折り合いはつけ、気持ちを整理していた。



それは、NRC二年目の式典の日。新入生で誰か騒ぎを起こしたらしい。なんでも、使い魔に魔獣を連れ込んだとか。いつも通りの退屈な式典よりかは楽しめそう。ざわざわと内緒話が聞こえてくる。学園長がその新入生を連れてきたようだ。さて、どんな顔をしているのかと、ジェイドはその頭二つ飛び抜けた身長で、その方向へ目を向けると───フードが外れ冴えない人間の姿が、二つ色の瞳に映った。

『ドクン』

知らない人間のはずなのに鼓動が激しく脈を打つ。
ジェイドは自分の胸に手を当てて、動悸をおさめようとするがうまくいかない。

(………おかしいですね)

そんなジェイドをよそに闇の鏡がその人間に告げる。

〝無である〟

ジェイドは、このやりとりは知っている。
『昔』興味深いと、その光景を眺めていた。
覚えていたかったのだ。

「………何を?」

金色の瞳からほろりと雫がこぼれ、もうカタチにはならなかった。


彼と彼女は一緒になれても山ほど問題や困難はある。
きっと今度は二人はそれらを乗り越える。
最後にこう締めくくられるだろう。

二人はいつまでも、幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。


Hidden True End/恋も愛も抱いている
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