満たす条件はノーマルエンドから


生きていくためにせかせか働いていたら十年くらい近く経ってて、時の流れ早いと黄昏れる。友人たちには帰れないとわかったときに、性別は自らバラした。騒動はあったものの受け入れてくれている。そのツテで当時の先輩たちにも伝わったが、驚かれたものの彼女の人柄で受けいられ済み。バラした理由は異性である彼らが、いつか別のパートナーを見つけたときに性差で問題が起こらない関係でいるべきだと思っていたから。それを踏まえて20代前半の頃は、デュースの就職お祝いしたり、予定を合わせて飲み会したりして楽しく過ごせていた。そのうち、ぽつぽつと交際してると聞いたり結婚の報告を聞くようになり、少しづつ距離を置くように。十代の頃なら彼らに何かと頼ったりしたのだが、家庭を持つ友人や先輩たちをもう巻き込みたくはない。理解はしていたがやはり寂しいなて、この世界には血のつながりはいないのだと改めて思いだしてひっそり泣く。

そんな彼女にもそれらを超えるつながりがあって、相棒のグリムとか後見人の学園長とかとは、昔と変わらず関係を築けている。意外と小まめに連絡を寄越してくれた。なにかと心配してくれる。それとは別枠で、妖精王であるマレウスに託されて、代わりにリリアが卒業してから不思議な関係を築いていた。この世界線でのリリアは、過去に幾度が人間の妻を持ったことがあるが寿命差でお別れしてる。今後結婚するつもりや恋愛する予定もないので、見た目はあいかわらずの若々しさのまま、シルバーと別のベクトルで天涯孤独の少女を約10年見守っている。在学時約500年くらい生きているかもしれないという情報がでてきたので、その500年色んな人生を歩んでいるんだろうなと、勝手に想像してます。

小規模なトラブルに巻き込まれて忙しないが、平穏に暮らして、なんでもないことを幸せに感じていたら………なんかヤバそうな人身売買生業とする組織に捕まって、闇オークションに出品されるはめに!冗談じゃないと隙を伺って逃げ出すが捕まる。帰れなかったんだから、残りの人生くらい平穏に過ごさせくれと、居もしない神に悪態をついて死を覚悟する元監督生。

「おや、見覚えのある方だ」

捕まえていた人間を、足技でブッ飛ばして登場するジェイド・リーチ。

実家(捏造仮マのつく自営業)継いでそうなジェイド・リーチが見たい。なんの因果か、卒業後。海へと戻りボスになっていた海のギャングと裏の世界で再会した───愉快そうな表情で彼は、彼女を見下ろしていた。流れは王道。助けてもらったとき、ラブストーリーが始まりそうだったがすぐ正気に戻る。ほぼ悪条件の取引だったが、約十年ぶりに再会する先輩に救出され。元監督生は一時平穏な生活を取り戻すように見えた。これが、ツイステッドワンダーランドのアングラな人々の抗争に巻き込まれてってしまうことに。彼女はまた運命に翻弄される。

元監督生を餌に利用して、群がってくる奴らを釣るジェイドに「あいかわらず先輩は先輩だな」て遠い目をする。根本が昔と変わってなくてある意味安心する元監督生。物騒さには磨きがかかっているが、アダルティーな関係にはならない。ジェイドは結婚はしてないが、ちらちら女の影が見える。意を決して自分に対するアダルティーな疑問を聞いてみる。

「そもそもそういう欲の対象の好みじゃない」

嫌味混じり言われ、ウツボの顔面にクッションシュート。愛のない交わりをしても虚しいだけ。そういう対象じゃなくてよかったのだと自身に言い聞かせるが、26歳の成人女性として腑に落ちない元監督生。

「それはそれでどうなんだ……」

昔みたいにさすがに楽天的にはなれずにいつつも、結婚願望はまだなくそれを諦めることにした。

異世界人である自覚はあったが、それでいまさら狙われるとは思わなかったから。どことなく、もう今までみたいに暮らせていけないと思ってしまう。今まで勤めていた仕事は辞めて、学園長にだけ事情を話しお願いして、関わったみんなに『元の世界に突然帰った』と連絡してもらう。監督生だけが使える姿くらませの術。学園長はグリムにだけ彼女の情報を与える。学園長の優しいさ。マレウスはリリアはそもそも存在の特殊さが次元を超えてるので、なんとなくまたなにかに巻き込まれたなと察している。デュースはマジカルフォースなので、ジェイドに自分の存在がバレないように情報操作をお願い。あらかた準備が終わり。

「先輩の元で働くことにする。パシリでもなんでもいいので仕事をください」

元監督生は要求する。ジェイドは監督生の思いきった身辺整理やお願いに目を瞬かせるが、こういう人間だったなて昔を思いだす。かくして元監督生の───少し早いセカンドライフが始まりを告げた。

基本的に囮という危ない橋は渡らされているが、安全は保障されている。それに、学生時代と打って変わってジェイドとの関係は時間が経つことに変化。精一杯生きる元監督生の姿にらしくなく絆されていく。その過程で、なぜジェイドがアズールやフロイドと一緒に働いていないのか、なぜ実家(捏造)を継いでいるのか、一緒に過ごしていくうちに彼らの約10年が語られたりして。ジェイドはフロイドには縛られず自由に生きて欲しいと願ったり、本当はアズールと一緒に陸で働きたいと願っていて、彼らとの思い出や記録を大切にしていることを知る。

そんな心情を知ってしまった元監督生は、ジェイドに会いにきたフロイドと一悶着を起こしながら、余計なお節介を焼いたり。それで、ジェイドを怒らせたりして契約解除で地獄のすれ違い展開が巻き起こったり、いっぱいぶつかりあっていく。行き場を失った元監督生は息倒れ寸前で、グリムとリリア先輩に救出されたりするが、食欲不信の無気力状態の元監督生。放っておいたら死んでしまいそうなのでリリアが、茨の谷の隠し里(色んな事情で人の世では暮らせない人間の住処)で面倒を見ることに。ダークマターを食事に与えようとして里の人々に止められたり、しばらく仕事の有給休暇とったグリムと、オンボロ寮にいたときの暮らして、元監督生は立ち直っていく。

元監督生がいなくなったジェイドは、彼女が居なかったときみたいに過ごしていた。学生時代の彼女や、大人になってから彼女との日々を思いだしていた。失ってから気づく。思った以上に彼女との日々に安らぎを見出していたジェイドは、自ら首を絞めていることに気づかない。そんな兄弟を見かねたフロイドがゲキを飛ばし、数十年ぶりの深海兄弟喧嘩が勃発する。フロイド伝て話を聞き、呆れているアズールは(絶対に言わないが)ものすごく心配していて、彼のために仕事の傍ら元監督生の手掛かりに奔走。茨の国の隠し里にいると突き止め、フロイドとアズールが両脇に挟みジェイドが連れていかれるが。元監督生の自称リリアパパが、ジェイドを門前払いをして煽りに煽って。

「お主にあの子はもったいない。そこらの女でも番にするといい」
「……は?」

図的に、リリア(立ち位置・自称パパ/勲章持ちの元近衛兵)vsジェイド(立ち位置・お嬢さん僕にください(付き合ってすらいない)・カタギじゃない職業)

本人の知らぬところで訳のわからんバトルが展開する。事情の知らないグリムと元監督生は、里の外で轟音が聞こえてくるので住民を避難させてその場に駆けつける───そこにジェイドを足蹴にするリリアの姿が。元オンボロ組とアズールはドン引きで、桁違いの強さのリリアに興奮するフロイドがいた。

思った以上にどんどん長くなりそうなので、少しばかり省略。この後は仲直りしたり、色々両親と一悶着ありの話し合いをつけてアズールたちと働くことになったり、元マのボスで現エリートという経歴の濃ゆいジェイドが爆誕する。そこらへん、ジェイドの過去はアズールがなんとかする。だいたいアズールにぶん投げる。元監督生がヤバい奴にコロされかけたり、ジェイドがゴスマリを思い出して愛のキスしたら、シにかけの元監督生が生き返ったり、動物たちが集ってきたり。でも、人魚と人間の寿命だけはどうしよもなくて、方法はいくつもあるが元監督生はそれを選ばなかったし選ばせなかった。ジェイドは人間式でのプロポーズをしようとしたが、彼女はそれを言わせなかった。その代わり、自分が死ぬまでの間は一緒にいてくれと願った。名のある関係にはならなかったが。年老いていく元監督生の側に、ジェイドは彼女が亡くなるまで寄り添い続けていた。

彼女の願い通りにジェイドは火葬してあげるが、その周りには涙が真珠になってポロポロ落ちていく。気をきかせて、その場にいないアズールとフロイドとグリム。思案顔のリリアが、無言で涙が落ちるジェイドにソッと寄り添った。リリアはジェイドが彼女に何も伝えていなかったのを察している。自分もかつてその選択をしたこともあるから。ジェイドがリリアのように受け入れるには、それは、また長い時間をかけることとなる。

「愛していたんじゃな」
「………えぇ」

ジェイドの代わりにリリアが言葉にしてあげた。かつての自分にも言うように。ジェイドはリリアの言葉に肯定したが、終ぞ言葉にしなかった。


True End/終ぞ言葉にはしませんでした
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