短編
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"今日、何時に終わる?"
大学の講義中、付き合ってそろそろ3か月になる川上さんから、突然連絡があった。珍しい。口下手で恥ずかしがり屋なのか、付き合う前も、付き合ってからも彼は自分からめったに連絡してこない。
"4限受けて終わりです。何かありましたか?"
少し心配しながら返信すると、
"仕事終わったから、迎えに行く。"
最近会えなかったから、顔を見ることができて嬉しいと思う気持ちと、恋人として隣を歩くことすら恥ずかしがる彼が、こんなことを言うなんてという驚き。
その二つの感情がぐるぐると心をかき混ぜていて、授業の後半は集中できなかった。唯一安心できたのは、川上さんに見せても恥ずかしくはない格好をしていることくらい。
授業を終えてすぐ教室を飛び出した。
私の大学のタイムテーブルを知っている川上さんは、講義が終わると同時に"南門で待ってる"と連絡が入った。
南門は、私がいた場所から一番近く、かつ利用する人が少ない場所で、そこを待ち合わせに指定したのが彼らしくて少し笑ってしまった。
南門で待つ川上さんを見つけるのに時間はかからなかった。門にもたれかかってスマホを見ている彼の横顔は、やっぱりかっこいい。
『川上さんっ!』
「お疲れ、急に来てごめんな」
『いえ!迎えに来てくれてすっごく嬉しいです』
「ん、じゃあ帰ろ」
そっぽ向いているが、耳まで赤い。喜んでくれているようだ。
『川上さん、何で今日迎えになんて来てくれたんですか?』
「仕事早く終わったし、最近会えなかったし。」
川上さんはそういうと口をもごもごとしながら、少し言いづらそうにまた続けた。
「…前に名前が俺の大学まで来てくれたことあったやろ。」
『ありましたね。私の取ってる授業がいきなり休講になった日。懐かしいなぁ。』
「うん。あれ、嬉しかった。」
『そんなに?』
「俺、中学も高校も男子校やろ?なんか校門で彼女が待ってんの、青春っぽくてさ。だから俺が名前にやってもらって嬉しかったことをやりたかった。」
『……』
「最近、俺忙しくて中々時間取ってやれんくてごめん。もしかしたら、これから先も忙しい時はこうやって会えない日が続くかもしれない。」
『……それでも、私は川上さんと一緒にいたいです。』
「……先言われた」
『川上さんも私と同じ気持ちですか?』
「当たり前。」
川上さんは強くそう言ってくれた。
知ってるよ、川上さんが私を大事に思ってくれていること。会えなくたって知っている。そんな川上さんを、私の方こそ離してなんかあげられない。
「だからってわけじゃないけど、今日はいつも我慢させてるから何でも言う事聞く。」
本当はこうしてお話しているだけで、そばにいてくれるだけでいいんだけど、そんなことを言われてしまったら。
『手を繋いで帰りたいです』
ちょっとくらいわがまま言ったって許されるかな。
川上さんは一気に顔を赤らめ、先ほどまで合っていた視線を顔ごと横にそらし、
「ん…」
とそっぽ向いたまま手を出してきた。
その一生懸命な姿がなんだかかわいらしくて、私はくすくすと笑いながらその手に飛びつき握った。
川上さんも、ぎゅっと握り返してくれて、私の胸は幸せであたたかくなった。
このあたたかさをずっと抱えたまま、川上さんの家に一緒に帰った。
大学の講義中、付き合ってそろそろ3か月になる川上さんから、突然連絡があった。珍しい。口下手で恥ずかしがり屋なのか、付き合う前も、付き合ってからも彼は自分からめったに連絡してこない。
"4限受けて終わりです。何かありましたか?"
少し心配しながら返信すると、
"仕事終わったから、迎えに行く。"
最近会えなかったから、顔を見ることができて嬉しいと思う気持ちと、恋人として隣を歩くことすら恥ずかしがる彼が、こんなことを言うなんてという驚き。
その二つの感情がぐるぐると心をかき混ぜていて、授業の後半は集中できなかった。唯一安心できたのは、川上さんに見せても恥ずかしくはない格好をしていることくらい。
授業を終えてすぐ教室を飛び出した。
私の大学のタイムテーブルを知っている川上さんは、講義が終わると同時に"南門で待ってる"と連絡が入った。
南門は、私がいた場所から一番近く、かつ利用する人が少ない場所で、そこを待ち合わせに指定したのが彼らしくて少し笑ってしまった。
南門で待つ川上さんを見つけるのに時間はかからなかった。門にもたれかかってスマホを見ている彼の横顔は、やっぱりかっこいい。
『川上さんっ!』
「お疲れ、急に来てごめんな」
『いえ!迎えに来てくれてすっごく嬉しいです』
「ん、じゃあ帰ろ」
そっぽ向いているが、耳まで赤い。喜んでくれているようだ。
『川上さん、何で今日迎えになんて来てくれたんですか?』
「仕事早く終わったし、最近会えなかったし。」
川上さんはそういうと口をもごもごとしながら、少し言いづらそうにまた続けた。
「…前に名前が俺の大学まで来てくれたことあったやろ。」
『ありましたね。私の取ってる授業がいきなり休講になった日。懐かしいなぁ。』
「うん。あれ、嬉しかった。」
『そんなに?』
「俺、中学も高校も男子校やろ?なんか校門で彼女が待ってんの、青春っぽくてさ。だから俺が名前にやってもらって嬉しかったことをやりたかった。」
『……』
「最近、俺忙しくて中々時間取ってやれんくてごめん。もしかしたら、これから先も忙しい時はこうやって会えない日が続くかもしれない。」
『……それでも、私は川上さんと一緒にいたいです。』
「……先言われた」
『川上さんも私と同じ気持ちですか?』
「当たり前。」
川上さんは強くそう言ってくれた。
知ってるよ、川上さんが私を大事に思ってくれていること。会えなくたって知っている。そんな川上さんを、私の方こそ離してなんかあげられない。
「だからってわけじゃないけど、今日はいつも我慢させてるから何でも言う事聞く。」
本当はこうしてお話しているだけで、そばにいてくれるだけでいいんだけど、そんなことを言われてしまったら。
『手を繋いで帰りたいです』
ちょっとくらいわがまま言ったって許されるかな。
川上さんは一気に顔を赤らめ、先ほどまで合っていた視線を顔ごと横にそらし、
「ん…」
とそっぽ向いたまま手を出してきた。
その一生懸命な姿がなんだかかわいらしくて、私はくすくすと笑いながらその手に飛びつき握った。
川上さんも、ぎゅっと握り返してくれて、私の胸は幸せであたたかくなった。
このあたたかさをずっと抱えたまま、川上さんの家に一緒に帰った。
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