Viola
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初めて目があった時、声を聴いた時、熱いものが突然体中をめぐって流れて、自分の心音しか聞こえてこない程胸が躍動していた。
これが恋…、と恥ずかしい言い回しがふと浮かんでしまって、その痛々しさに頭を抱える。
中学受験をした私は、中学高校と6年間女子校育ち。出会いなんかないし、そもそも異性にもちっとも興味がなくて、周りの人に恋人ができる中で置いてきぼりを食らっていた。
そんな私がバイトとして始めたライターの仕事。初出勤の日、動画で活躍しているライターの方々と顔を合わせて自己紹介をした。
その中に彼は、川上さんはいた。
彼は名前を名乗っただけだった。それだけだったが、私はいとも簡単におちた。
彼が名乗った後何も言わず突然静止した私を不思議に思ったのか、ライターに誘った張本人であり、この団体のリーダーである伊沢さんが私に声をかけた。
「どうかした?」
『あっ……いや、何でもないです。すいません。』
ハッとしてすぐ我に返ったが、心臓はうるさいままだ。変な人と思われたかもしれない。そんな自己嫌悪に陥りながらも、川上さんの声が時々思い出されてドキドキしてしまう。後半の人達の自己紹介は、もはや記憶になかった。この後は打ち合わせ室で伊沢さんから、仕事について話を聞くことになっていた。それらの内容もきちんと聞いていたつもりだったけど、半分くらい頭から抜けていることに、帰宅してから気が付くのだった。
「一気に説明しちゃったけど、少しずつ慣れて行けばいいよ。わからないことはいつでも聞いて。」
『ありがとうございます。本日はこれで失礼します。』
「明日からよろしくね。」
川上さんと離れた事で、少しずつ私の心臓は落ち着きを取り戻し、頭もクリアになってきた。オフィス案内と仕事内容の説明を終え、手を振って伊沢さんが見送ってくれる。このオフィスで、私は明日から働く。
ライターになったきっかけは伊沢さんからのスカウト。SNSで書いていた文章がたまたま彼の目に留まり、言い回しや文体を気に入ってもらえたらしい。ライターを募集していたQuizKnockにとっても、バイト探しをしていた私にとっても、ちょうどいいタイミングだったわけだ。
本を読むのが好きで、文章を書くのも好きで、私にとってきっと素敵な経験になる。そう確信し、足取り軽く家路についたけど、それでも川上さんの事を思い出すと胸がきゅっとなった。
この“きゅっ”の正体は、恋愛経験の乏しい私にはすぐにわからなかったが、実は帰宅してから“恋”という単語にたどり着いてその日のうちに悶絶することになるのだった。
これが恋…、と恥ずかしい言い回しがふと浮かんでしまって、その痛々しさに頭を抱える。
中学受験をした私は、中学高校と6年間女子校育ち。出会いなんかないし、そもそも異性にもちっとも興味がなくて、周りの人に恋人ができる中で置いてきぼりを食らっていた。
そんな私がバイトとして始めたライターの仕事。初出勤の日、動画で活躍しているライターの方々と顔を合わせて自己紹介をした。
その中に彼は、川上さんはいた。
彼は名前を名乗っただけだった。それだけだったが、私はいとも簡単におちた。
彼が名乗った後何も言わず突然静止した私を不思議に思ったのか、ライターに誘った張本人であり、この団体のリーダーである伊沢さんが私に声をかけた。
「どうかした?」
『あっ……いや、何でもないです。すいません。』
ハッとしてすぐ我に返ったが、心臓はうるさいままだ。変な人と思われたかもしれない。そんな自己嫌悪に陥りながらも、川上さんの声が時々思い出されてドキドキしてしまう。後半の人達の自己紹介は、もはや記憶になかった。この後は打ち合わせ室で伊沢さんから、仕事について話を聞くことになっていた。それらの内容もきちんと聞いていたつもりだったけど、半分くらい頭から抜けていることに、帰宅してから気が付くのだった。
「一気に説明しちゃったけど、少しずつ慣れて行けばいいよ。わからないことはいつでも聞いて。」
『ありがとうございます。本日はこれで失礼します。』
「明日からよろしくね。」
川上さんと離れた事で、少しずつ私の心臓は落ち着きを取り戻し、頭もクリアになってきた。オフィス案内と仕事内容の説明を終え、手を振って伊沢さんが見送ってくれる。このオフィスで、私は明日から働く。
ライターになったきっかけは伊沢さんからのスカウト。SNSで書いていた文章がたまたま彼の目に留まり、言い回しや文体を気に入ってもらえたらしい。ライターを募集していたQuizKnockにとっても、バイト探しをしていた私にとっても、ちょうどいいタイミングだったわけだ。
本を読むのが好きで、文章を書くのも好きで、私にとってきっと素敵な経験になる。そう確信し、足取り軽く家路についたけど、それでも川上さんの事を思い出すと胸がきゅっとなった。
この“きゅっ”の正体は、恋愛経験の乏しい私にはすぐにわからなかったが、実は帰宅してから“恋”という単語にたどり着いてその日のうちに悶絶することになるのだった。
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