おい！待てよ！！今日は逃さねーぞ！！！」
足早に玄関を出ていこうとしたら、母親の彼氏に腕を捕まれながら怒鳴られた。
帰宅して待っていたのは母親の何人目かの男。
あたしはコイツに幾度となく襲われてる、、、
助けて、、誰か、、、助けて欲しい、、、、
今日は諦めようか。怒らせたら殴られるだけ。
何もかもを諦めた方が楽なのを身を持って体感してる。
今日は逃げ切れると思ったのに、、あと一歩だったのに、、、そんな事を考えてたら少しだけ開いていた玄関のドアが思いっきり開いた。

「っ、、！じ、ん、、、、、、仁！！」

そこには隣に住む幼なじみ、仁が立ってた。

あたしを追い越して男に掴みかかる。
一瞬のうちに男は殴り飛ばされてた。
その後はもう、仁は無言で殴り続けるだけ。

「仁、、もう止めて、、、。」
ピタリと止まる仁の動き。
男を見下ろす鋭い目。
そのままの表情であたしの手を掴んで玄関の方へ歩き出す。
男を見ると、顔面血だらけで痛いのか、唸り声を上げてうずくまってた。

あたしは隣りにある仁の家に入れられて、仁の部屋のベッドに座らされる。

「仁、、、ママにはこの事、、、、言わないで」
様子を伺いながらポツリとこぼす。
「はんっ！お前はそれでいーのかよ」

コクン、、とうなずけば
「、、、、わかった」
と小さく言ってくれた。
「だがな、、お前はもうあの家には帰さねえ」
再び殺気だった仁の声。
「うちで面倒見る」
驚いた、、正直そこまでお世話になる訳にはいかない。
あたしの母親は常に育児放棄。
男は取っ替え引っ替え。
そんな家庭環境にいたあたしはいっつも仁のお家にお世話になってた。
家に一人の時、いつも仁が一緒にいてくれた。
仁のママの優紀ちゃんも、いつもご飯を作ってくれた。
今日だって助けてくれて、このままだとあたしは自分の家の問題から逃げたいと思ってしまう。

「ダメだよ仁、、、あたしはこれ以上お世話になる訳にはいかない」

「今日やっと、お前がここ最近目に光がねぇ理由が分かったんだ。逃がすわけねえだろ」

っえ、、、！
仁は気づいてた、、、、
ずーっと心配してくれてたんだ。

「、、、、ありがとう」

言った瞬間から涙が溢れて止まらなくなった。
そんなあたしの頭をそっと撫でてくれる仁の大きな手。
あたしは仁に抱きついて、優しい手に安心しながら思いっきり泣き続けた。