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第十章 異に接する都


「オレは頭はわりいが鼻は良いつもりだ。あんたのことはそれなりに信頼してたつもりだぜ? もちろんあんたのお仲間のこともだ。だけどよぉ、こんなことされちまったら……オレはどこまで疑えば良いのかわかんねえよ」
 その声は怒りよりも哀しみの色を濃くしており、クリスは反撃を承知でエイトを強引に抱き寄せる。
 思った通り、散々背中や腹を殴られたが、しばらく抵抗もせずに好きにさせたままでいると、エイトからの攻撃が止んだ。骨まで痛む拳だったが、可愛い笑顔がこれから見れるなら我慢出来る。
「……何、してたんだよ?」
 愛しい人を懐に戻し、落ち着きを取り戻した声が問う。それにクリスはどう答えるか一瞬考え――敢えてそのまま伝えることにした。
「南部の砂嵐は魔力を遮断し機械を破壊する。それは地に落ちた砂だけとなっても有効かを、少し試していた」
「……デミの培養槽を、破壊しようとした、ってことか?」
「安心しろ。この籠の中に砂嵐が舞い込んだ時にお前の懐から“ソレ”を出してみたが、元気に稼働していた。おそらく砂を直接ぶち込んでも、見た目が悪くなるだけで機能には問題は――」
「――ふざけんじゃねえぞ!? お前は大切な人が同じ扱いを受けても同じことが出来んのかよ!?」
 叫びと同時に突き飛ばされて、しかしぐっと踏み止まる。天上だけは高い――軍用の銃器等を運ぶ為だろう――籠の中で、二人は立ったまま。沈黙。時間だけが過ぎていく。
「……俺にとって『大切な存在』は、フェンリルの仲間だけだ。だが、こいつらでその問いに答えるとしたら……今のお前の反応では甘い」
 クリスは、敢えてそのまま伝えることにした。
「俺なら……『大切な存在』と同じ状態に、その相手を斬り刻むだろうな」
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