第九章 繋ぎ合わせたモノ
屋根の上は夜風が身に染みる。そんなことを考えながらルークは、愛しいリーダーの顔を見詰める。いつ見ても美し過ぎるその顔が、ルークにとって一番のお気に入りだ。
身体をたまに重ねているロックだって、そこらの男よりよっぽど美しいが、彼のそれは色気やフェロモンが詰め込まれたものだ。単純に、そして鋭利な美しさを備えるリーダーとは違う。
愛しいリーダーは明日に向けての準備に余念がない。明日は大陸の南東に位置する都ルナールに向けて発つ予定だ。文字通り南部と東部の国境の狭間にあるその都は、昔から『複雑な内部構造』をしていることで有名だ。
南部と東部の国境の狭間に栄える都は、その領土を国境によって分断されていた。都の中心部から綺麗に分断されて、南部と東部の文化が栄えているのだ。その文化が混ざり合うようなこともなく、ただ『情勢不安』という膿が、闇の中で暗躍する特務部隊とそれぞれの軍によって浄化されたり増幅されたりしているらしい。
ルークはもちろん、クリスも足を踏み入れたことのない都だ。昔から有名なその都には、先日も見せつけられた『召喚の伝説』が残っているため、本部の方でもあまり干渉しないようにしている節がある。そのため現地の特務部隊はなかなかに苦労しているだろうが。
今回もそんな現地の特務部隊からの連絡により、この作戦が立案されたとリーダーは言っていた。
「……それ、マジで朝までする?」
美しいリーダーの顔を見ているのは、ルークにとっては至福の時間である。しかしそれだって、限度がある。そろそろ寝たい時間だし、何よりこの状態のリーダーは自分に甘い言葉を吐いてくれない。仕事の顔をしてしまっている。
「明日の“足”には餌が必要だからな。このまま持っていけば荷台が“これの匂い”で充満してしまうのは、お前だって嫌だろ?」
異臭を放つ木材のようなものをパックに詰め込む作業を続けているクリスは、そう言って匂いが移ってしまった手をわざとルークに近づける。それから逃れる為に立ち上がったルークに、クリスは苦笑いをしている。
「イグムス運ぶのに輸送機使っちまうからそんなことになるんだろ? せっかく問題の“護衛”を殺したんだから、あとはあいつらが“足”でイグムス運べば良かったのに。ルナールには空路でも問題ないけど、イグムスの洞窟の上空には少しだけど砂嵐の影響もあるんだろ?」
「人体には少ししか影響しないレベルでも、あんな砂嵐の中で輸送機を飛ばすのは無理だ。イグムスの輸送には陸路を使っている。あの洞窟の地脈から離れることがどういう事態になるか、俺は興味があるが……まずは明日からの任務に集中だな」
「なんで俺達は馬車なんだよ? 確かに南部沿いに砂嵐に紛れて向かうのはわかるけどさぁ……」
「そう言うな。これは俺のプランだからな。理由は明日にわかるさ」
「……なんか、リーダーがそう言う時って……すげぇどうでも良い理由なこと多いんだよなぁ」
ルークが溜め息混じりにそう言うと、クリスは珍しく大きな声で笑った。