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第八章 歪な群れ


 翌日。
 早朝の訓練もそこそこに、クリスはリビングに全員を集めた。
 朝の訓練が半分くらいで終わったことと、クリスが一緒にいること―――全てが普段と違うことに、全員の表情に緊張の色が浮かんでいる。
 全員の関心を引いていることを確認してから、クリスは重い口を開いた。
「本日の午後より、本部からの輸送作戦に応援として呼ばれている。メンバーは少人数で良いらしいが、こちらとしては経験も兼ねて新人を送りたい」
 その言葉に新人達の表情は引き締まったが、クリスの目を引いたのは別の二人の視線だった。レイルはニヤついた笑みを隠すこともせず、ロックもこちらの意図に気付いたのか冷たい表情をしている。
「よってルツィアと、有事に備えてレイルを送る。両名は午後一に迎えの車に搭乗し、後のことは無線での指示に従うように。以上だ」
 視線に耐えかねて、それでも顔には一切出さすに言い切ると、ルツィアの燃えるような視線に捕まった。彼女の瞳には、恐怖と、プライドからくる競争心が浮かんでおり、一言も発していないのに、彼女の考えていることはクリスにも手に取るようにわかった。
「さぁ、早く準備しようぜ?」
 そんな彼女にレイルは挑発とも取れる笑みを浮かべながら、いつものように話し掛けている。戦いを早くも繰り広げている女二人を無視して、ロックがこちらに近づいてきた。
「何のつもりだ? リーダー」
「お前こそ何のことだ?」
 他の人間には聞こえないように小声で聞いてくる彼に、クリスはわざとわからないふりをしてやる。
「リーダーのくせにふざけんなよ? 今の状態で二人を一緒にしても衝突するだけだろ?」
「レイルはお前が思っている程バカじゃない」
 ぴしゃりとそう言い切りながらロックを見ると、意外なことに彼は真面目な表情をしていた。
「それは僕もわかってるよ。ただ、ルツィアが爆発しそうなんだ」
「そういうことなら……たまには荒療治も良いんじゃないか?」
 クリスがそう言って笑ってやると、ロックも心配そうではあったが一応は小さく笑ってくれた。ロックの本心を聞き、クリスは安心してこの計画を進めることが出来ると確信した。
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