まるでお伽噺の様に、
君の名前教えて?
名字じゃない方、教えて?桃川夢子
全てのモブ系女子。
主軸のストーリーには一切かまない、悟が付き合ってるわけではないけと手を出した大勢の女の総称。
この小説の夢小説設定月白幽結(つきしろ ゆうゆ)
うちのヒロインの中では姫ポジの子。
秤と星の同期。
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彼女は少し不満げな顔をしたまま、隣へやって来た。
椅子の向きを変えて向かい合い、彼女の手を取ってキスをすると頬がまた赤くなって不満の色は忽ち見えなくなる。
そのまま、手を引き寄せ膝に座らせて抱き締める。
こうすれば、大抵の不機嫌は直せてしまう事は分かっていた。
君のそういう所好きだよ、楽で。
「せんせ……目、見せて。」
僕の胸に顔を埋めた彼女は甘えた声でねだる。やれやれとため息を吐きながら包帯の解き始めた。
「いいけど……キスしてよ、幽結」
「……私から?」
「うん。」
解いた包帯を首に掛けて、額部分の包帯は少し巻いたまま残した。
まるでミイラ男の仮装みたいだ。
彼女にとって僕はモンスターみたいなものかもしれない、と思う。
彼女の指を唇に触れさせ、ここだよと言うと吸い寄せられるように彼女が顔を近づけてきた。互いの唇の間が約五センチくらいのところで留まり躊躇う様に目を伏せ、熱のこもった息が漏れてそれがこちらの唇にかかる。
焦れったい。こちらから口付ける事は簡単だけれどそれじゃつまらない。
「幽結……して。」
わざと囁くような小声でねだると、観念したように目を閉じてゆっくり距離を詰める。
僅かに震えている彼女の指を優しく握りながら少しの罪悪感と背徳感に酔った。
彼女のくれたキスはほんの少し唇の先が触れ合うだけの細やかで優しいキスだった。
可愛いけれど、物足りなくて、ますます欲しくてたまらない。
「もう一度、だよ。」
泣きそうな顔をした彼女が意地悪しないでと言ったが勿論、引き下がる気は無い。ただもっと耳障りのいい言葉で優しく誘導してあげるには、と少し考える。
「君のキス無しには僕は王子になれないんだよ。」
「モンスター?」
「僕ってあまり人間扱いされてない気がするんだよねー。」
「私は……平気だよ?」
ちゃんとキスして証明してみせて、と言うとそれで本当に信じてもらえる?と彼女は不安げな顔で僕を見つめた。
純粋そうな目で見つめられると隠してる気持ちまで知られそうな気がして冷や汗が出そうだと思った。
まだ知らないでいてよ、この頭を占めている悪い大人の狡い打算も汚い欲望も。
夢から覚めるにはまだ早いでしょ?
「こんな化物でもただの男として愛されてるって実感したいんだ。」
彼女は僕を抱き締めて、たとえ化物でも構わない、と言った。
彼女の指はもう震えていなかった。
「呪い、解いてあげる。」
そう言って優しく微笑んだ彼女は目を閉じてもう一度僕にキスをくれる。
ちゅっと軽く唇を吸われ、思わず吸い返すと彼女の唇から甘い声が零れ落ちた。
それから互いの指を絡め合って、口付けし合った。長いキスの後、彼女はうっとりとした顔で僕の胸に頬を寄せ、少し乱れた呼吸を整えるようにゆっくりと息を吐く。
彼女を見ながら、その身体をまさぐって僕で汚すところを想像して身体の奥が火照る。
鎮めるために慌てて頭の中から追い出した。
君は呪いを解くと言ってくれたけど、呪いがかかっているのは君の方かもね。
こんな化物を愛してしまうって呪いが。
可哀想で可愛い幽結のためにもう少しこの目眩がするほど甘いお芝居を続けよう。
まるでお伽噺の様に、ご都合主義にまみれたロマンスを。
「仕事するから少し眠ってて。」
僕は彼女の髪を撫でる。
彼女は小さく頷いて瞼を閉じた。
終わり