雨恋。
君の名前教えて?
名字じゃない方、教えて?桃川夢子
全てのモブ系女子。
主軸のストーリーには一切かまない、悟が付き合ってるわけではないけと手を出した大勢の女の総称。
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「一緒に入ろうよー夢子」
服を脱ぎながら、悟君は言った。
脱いだ服を受け取り洗濯機入れながら、だーめ、と私は答える。
「お風呂は一人でゆっくり入った方が疲れとれるよ。」
「気ぃー使い過ぎ!なんかお母さんみたい」
意地悪そうな笑みを浮かべる彼の背中を軽く叩いて、こんな大きい子、産んだ覚えはありませーん、と言った。
あはは、と今度は無邪気な顔で彼は笑う。
大人の様で子供みたいな、優しいようで、意地悪な捕えどころのない彼だからこそ抱き締めたくなる。
黙ってその大きな背中に抱き付くと彼の腹部に回した手を彼の大きな手が優しく握った。
「君の子供、可愛いんだろーな……。」
「何、急に?」
「俺があの家に生まれてなかったら夢子 のお祖父様に勧められるまま、俺達結婚出来たのかなって。」そしたら、今頃君と子供と普通の男として楽しくやれたかも、と彼はやけに静かな声で言った。
その声を彼の背中越しに聴いていた私の胸はじわりと痛んだ。
あったかもしれないハッピーエンドを想像する事は今の私には辛す過ぎる。
「言わないで……今が虚しくなっちゃう。」
「そうか……そうだね、今の二人の時間を大切にしなきゃね。」
「それに五条家じゃなかったら呪術師にならなかったんじゃない?」しんみりした空気感を変えたくてわざと明るい声で言う私。
「あーたしかにー!そーかも。」それなら呪具コレクターと縁がないや、とヘラヘラと笑う彼。
少し場の空気が緩んだ事に安心した私は彼から離れた。
「俺達ってさ、歯痒い関係だよね。」
「だよね~。」
今度は私がヘラヘラ笑って、涙雨に濡れた心を隠した。辛さ吐き出してこの関係を失うくらいならこのままでいたかった。
辛くても、罪深いことだとしても、彼に触れていたかった。
洗濯機を回してからバスルームを後にすると付けっぱなしだったリビングのTVから芸能人の不倫に関するニュースが流れて来た。
何が面白いんだか、と呟いてTVを消す。
相変わらず雷雨は降り続いていて、今夜中降り続くなら彼は泊まっていくかもと、自分に都合のいい事をついつい考えてしまってしまった。
甘い期待を捨てて、台所へ向かう。冷蔵庫の中身を確認しながら作るものを考える。
洗濯機は回したばかりで乾燥までは二時間以上はかかる。それなら少し早いけれど夕食なら一緒に食べてくれるだろうと思った。
作るのはナポリタン。ポテトサラダは作り置きしてるもの、コーンスープも温めれば出せるものだからそんなに待たせる事もしないはずだ。
なんだか楽しくなってきて、鼻歌交じりに調理を開始した。
「なーに作ってんの?」
二十分くらいして、バスローブ姿でバスルームから出て来た悟君が後ろから抱き付いて来た。
「ナポリタン作ったよ~」
一緒に食べよ?と誘うとん~と彼は少し迷っているような顔をした。
「……ナポリタン嫌いだっけ?」
多分、そんなわけないと思うけれど、嫌いなものなら覚えてるはずだけど、少し不安になった。
彼を見上げると彼は人差し指で私の唇をゆっくりなぞりながら、食事の前に君が欲しいな~、と言った。
「ま、待って……」そう言いながら、顔が火照るのを感じて恥ずかしくて目を伏せる。
どうしよう、コーンスープだってもう温めたのに。
「待てない。」
彼は噛み付くみたいにやや強引な口付けをして来た。貪るように唇を吸われれば、身体の奥が熱くなり、胸の鼓動が速くなる。
すぐにキスに夢中になってもっと欲しくたまらなくなってしまう。
待てないのは本当は私の方だった。
長いキスの後でおいで、と手を引かれリビングのソファに押し倒される。
「雨が降るとさ、時々夢子が泣いてる様な気がして慰めてあげなきゃって、ここに来ちゃうんだよね。」
相手は俺じゃない方が本当はいいと思うけどさ、と私の頬を優しく撫でる。
「だって俺、悪い男でしょ。」
悟君はとても綺麗に微笑んだ。
この顔で迫られたら大抵の女の子は参ってしまうだろう。
私はこれが営業スマイルだと知っている。彼には沢山の遊び相手の女がいる。そんなことは言われなくても分かっている。何をしたって私だけのものにはなってはくれない。事実結婚ですら彼を縛れてはいないのだから。
「……それでもいい……悟君がいいの。」
涙が溢れて頬を濡らした。
彼は私に覆い被さって、さっきとは違う優しいキスをした。
「じゃあ、好きなだけ抱いてあげる。」
だから我慢しないでもっと欲しがってよ、と甘い声で囁かれ、理性がとろとろと溶けていくのを感じて彼を抱き締めた。
ずっとこの雨が止まなければいい、と叶うはずもない事を願いながら。
終わり