雨恋。
君の名前教えて?
名字じゃない方、教えて?桃川夢子
全てのモブ系女子。
主軸のストーリーには一切かまない、悟が付き合ってるわけではないけと手を出した大勢の女の総称。
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雨か降ると私は少し浮かれてしまう。だってあの人に会えるかもしれないから。
雨の日は少し早起きしてクッキーを焼く。あの人が褒めてくれるから。
いつもよりちょっぴりお洒落な服を着て、Diorのリップを塗って、部屋の掃除をしながら午後三時を待つ。平静を装っていても浮かれている事はきっとバレバレで恥ずかしい。
こんなに待ち望んでいても事前連絡は無いし約束もしてないので来るかどうかは分からないのだ。
掃除機を止めてソファで紅茶を飲んでいると窓の外がピカっと光った。その後三秒もしないうちにゴロゴロと聞こえる。雷が近くに落ちたのだろう。
このくらい悪天候の方が彼もここに来る言い訳が出来ていいのだろうか?などと考える。
友達でも恋人でも親戚でもない成人した男女がビジネスを介さず、平日の真っ昼間に二人きりで会うには何らかの言い訳が必要だ。
なんて面倒臭い関係だろう、とため息を吐いた。こんな関係いつ終わってもおかしくは無いし、期待するなんて馬鹿げている。
そこは大人の女として重々承知の事実として受け止めているつもりだ。
それなのに会いたくてたまらないなんて矛盾している。
雷の音を聞きながらぼんやりしているとインターホンが鳴った。すぐにモニターを確認すると待ち人本人がヘラヘラ笑いながら手を振っていた。
『夢子、濡れちゃって寒いから入れてくんない?』
ちょっと待ってて、と返事をして玄関へ向かう。玄関前の鏡の前で髪とメイクを確認して深呼吸してから鍵を開けゆっくりドアを開いた。
やっ、と片手を上げた悟君がスッと玄関に入って来る。
「いらっしゃい、悟君」
元気そうで良かったと笑うと君もね、と頭をポンポンと軽く叩かれる。
よく見ると結構彼の身体は濡れているようだったので近く戸棚からタオルを出して渡す。
彼はそれを受け取りながら、近くまで車だったんだけど、思ったより濡れちゃって寒いわ~と少しダルそうに言った。
そんな彼を温めたくてそっと抱き締める。
「だめだよ~、夢子が濡れちゃうでしょ。」
彼は困ったような声で言いなからも私を引き離す事はしない。
「本当に冷えてるね、身体。」
お風呂沸かすから、と言うと、助かる、と彼は答えて私の髪を撫でた。
お風呂が沸くのを待つ間、焼いておいたチョコチップクッキーとコーヒーを出した。
「君の焼くクッキー好きなんだよね~」
彼は上機嫌でクッキーを摘まんで次から次へと口へ運んでいく。
面白いくらいよく食べるのですぐなくなってしまった。
あ~全部食べちゃったけど大丈夫?なんて今更聞いてくる彼に笑いながら、食べちゃったもんは仕方ないでしょ~と答える。
「私のクッキーこんなに喜んでくれる人、他にいないから嬉しいの。」
急に彼は私を抱き締めて、こんなに可愛くていい子なのに世間の男共は何やってんだか、と言った。
少し照れながら彼の胸に顔を埋めて、それな~と言って笑う私。
だって彼氏が出来たら悟君が来なくなっちゃうじゃん、なんて言えるはずがない。このままどうしようもない気持ちを抱いたまま、彼に抱かれている事しか出来ない私は愚かで、狡い女なのだ。
程無くして風呂が沸き、彼とバスルームに向かった。
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