眠り姫、春を知る。
君の名前教えて?
名字じゃない方、教えて?桃川夢子
全てのモブ系女子。
主軸のストーリーには一切かまない、悟が付き合ってるわけではないけと手を出した大勢の女の総称。
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声が聞こえる。私の名前を呼ぶ、その声を私は知ってる気がする。耳に馴染むその声はまだ少し遠い。
誰かが私に触れている。私はその手を知っている。深い眠りの底から引き上げてくれる。暗い悪夢の森から連れ出してくれる。大きくて温かい手。大好きなあの人の。
「幽結!」
今度こそはっきり聞こえたその声に応える様に瞼を開く。思っていたより薄暗くよく見えず三度瞬きを繰り返す。
「せ…んせ…?」掠れたか細い声が喉から零れ落ちた。
「生きてる、良かった。」
見慣れた五条先生の笑顔が見える。
先生は出張に行っているはず、と思いながら片目を指で擦る。
まだ夢、見ているのかな?
「せんせ…何で?出張…は?」
「今さっき帰ってきた。」幽結が昼休みに出たきり帰って来てないって綺羅羅が言うから探したのと片手で私の髪や頬に付いた桜の花弁を払いながら先生は言う。
花見ついでに少し昼寝のつもりが大幅に寝過ごしてしまってたらしい事に漸く気付き、恥ずかしさと申し訳なさが込み上げてきた。
「す、すみません!私ったら…」
すぐに立ち上がろうとするも私の脚は硬直したまま動く気配がない。恐らく手足どころか身体のあらゆるところが硬くなっている。これは体質によるもので、私の呪力操作の一種の弊害だった。
眠る事で呪力を蓄える事が出来き、意図的に仮死状態になる事で呪霊を誘き寄せる事が出来るが二時間以上仮死状態を続けると死後硬直に似た症状が出る。ストレスを強く感じていると通常の睡眠中に仮死状態になる事があり、今の状態はそれが原因なのだと思う。
先生が小さくため息を吐いたのが聞こえた。
無言のまま私を抱き上げる。
なす術もなく簡単に持ち上げられるしかない私は無力感に苛まれながら先生の顔を見上げる。その顔にもう先ほどまでの笑みはない。
「あの……怒って…ますよね?」
「……少しね。」
表情は変えないまま、いつもより低い声。
ちょっと怖い、と思いながらも逃げる術がない以上は大人しくしているしかなかった。
その後は互いに黙ったままで私は高専の先生が実務室兼休憩スペースとして使っている個室まで運ばれた。廊下で数人とすれ違い、そのいずれの人も見てはいけないものを見るような目でこちらを見ていたのが、辛かった。
先生は私を抱き抱えたまま、自室の椅子に腰掛ける。一体何が今から始まるのだろう、と緊張していると右手首を掴まれ、左腕で腰を抱かれた。
続く