黒百合
君の名前教えて?
名字じゃない方、教えて?桃川夢子
全てのモブ系女子。
主軸のストーリーには一切かまない、悟が付き合ってるわけではないけと手を出した大勢の女の総称。
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不意に悟の手がシャツを掴んていた私の手を握った。いつもの温かくて大きい手。
「力、入れ過ぎ。」
「ごめん……」
ゆっくり力を抜くと少し緊張も緩んだ気がした。冷たいと感じてた彼の目も普段と同じに戻った様に感じて安堵する。
「彼女の言った通り、相談を受けただけで他は何も。」疑われるなんて心外だな、と肩を竦める傑君。
「分かった。でも、次二人でいた時は……」
「気を付けるよ。」
じゃあ私はもう行くよ、と片手を上げて目配せしたあと階段を降りて行った。
傑君の姿が完全に見えなくなると悟はいつもより強い力で私を抱き締めた。
「焦らせやがって。」
結局お前も傑に取られるのかって思ってさ、と悟はため息交じりに言った。
「……傑君とはそんな関係じゃないよ。」
「別れる気ないって知ってんのに、あいつが世衣に手を出す訳無いって分かってんのに……」
私の事は信じてくれてない、という当たり前の事実も目の当たりにするとこんなにもダメージを食らうものなんだ、と知った。
それでも傑君を魅力的に感じたのも事実だし、そういう意味では彼の心配は的を得ていたとも言えなくもない。
今回は私が少し軽率だったか、と反省した。
「ごめんね!…硝子も連れてけば良かった。」
「えー!それ、俺だけハブられてるみたいでムカつくんだけどー。」
子供みたいにあからさまに拗ねた顔をする彼を優しく諭すように微笑みながら、じゃあ、どうしてほしい?と訊く。
んー、と少し考えたあとで彼は、何でも俺に言ってよ、と言った。
「隠し事されんの、嫌。」
チクリと胸が痛む。私は悟に言えないことがあるんだった。それは彼をいずれ深く傷付けてしまう。それが、今は怖い。
「上手く言えない事もあるかも。」
こんな回答は誤魔化しだ、と私は自分を心の中で責めた。それでも無理とは言えなかったのは彼を不安にさせたくなかったから。
それでも言わないよりはマシ、と彼は言う。
私は頷いて背伸びして彼の頬を撫でる。ムカつくほど綺麗なこの顔が少し前まで苦手意識あった気がするのに今は笑うと可愛いんだよなぁ、なんて思ってしまう。
するとニヤニヤしながら彼は顔を近付けて来て、キスかと思って目を閉じたら、軽く額と額がぶつかり少し面食らう。
「ちょ!何?」
「お仕置き!」
もーびっくりした、と私は笑う。思いがけない彼の悪戯がとても可愛く思えた。笑っているとまたぎゅっと抱き締められる。
「今度はなぁーに?」
そう訊ねると彼は私の胸元に片手を置いて言った。
「服で隠れる所でいいから、キスの跡付けたい。」俺のもんだって証拠欲しいんだ、と彼は珍しく何だかしょんぼりしているような浮かない顔で言った。
いや、そんな顔されて断ったらまた私が悪いみたいになるよね、と思いながら苦笑する。
「それで機嫌直してくれるならいいけど?」
彼はうん、直る、直る~とご機嫌な顔になって頷いた。
仕方ないな~、とワイシャツのボタンを上から三つまで外す。下着がギリギリチラっと見えるか見えないか程度にはだけさせた。
「わー世衣すごくエッチ!」
露になった胸の谷間に彼の視線が集中する。
「ん~坊や、童貞なのかな?」
「違う。」
急に真面目な顔で答える彼を見ながら、冗談なんだけど、笑う。
そんなおふざけのあとで、悟は私の胸に顔を埋めた。そして深呼吸する。
「は、恥ずかしい…汗臭くない?」
「平気……世衣の匂い好き。」
早くしないと予鈴なっちゃうかも、言うと右胸の上の辺りを甘噛みされた。
「あっ……」
思わす上擦った声が出て恥ずかしさに頬が火照る。痛くしないで、と言うと彼は舌先で噛んだ所をペロっと舐めた。
心臓の鼓動が大きく、早くなってゆく。
誰か来たら、見られたらどうしようなんて今更ながら心配になってくる。
そんな心配を他所に彼はちゅっちゅっと音を立てて肌にいくつも赤い跡を付けた。
「ちょっと……もうお仕舞いだよ。」
優しく髪を撫でながら声をかける。
漸く顔を上げた彼は、今度は私の唇を優しく吸った。
「……ごめん、我慢出来なかった。」
一つ二つで止めるつもりだったのに、そう言って赤くなったところを指でなぞった。満足そうな笑みを浮かべながら。
初めて彼の中に独占欲の火がパチパチと爆ぜたのを見た気がして私の身体の奥がカッと熱くなるのを感じた。
まるで燃え移ったみたいに。
黒百合[ 終 ] 次の章へ続く