黒百合
君の名前教えて?
名字じゃない方、教えて?桃川夢子
全てのモブ系女子。
主軸のストーリーには一切かまない、悟が付き合ってるわけではないけと手を出した大勢の女の総称。
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呪術高専の最上階へと続く階段は殆んど人通りがない。それもそのはずで、最上階には今は空き教室と倉庫しかないからだ。故に、告白呼び出しやプレゼント渡し、内緒話の定番スポット化していた。
「 世衣ちゃん、デートは楽しかった?」
私が立っている段の一段下に傑君が立つとほぼ目線の高さが同じになった。
「……微妙、かな。」
私かそう答えると傑君は困ったような顔で笑う。
「私に手助け出来る事、あるかい?」
私は頷いて、デート中に感じた違和感について傑君に話した。
「急に素直に謝って来たり、キスの誘い方上手くなったりしたのって……傑君、入れ知恵してない?」
「入れ知恵だなんて……聞こえが悪いなぁ。」
でもアドバイスはしたよ、と傑君は言った。
「あの日、メールしたんだ。」
そのあと電話がかかって来た事、悟から喧嘩したと報告を受けて、別れたくないなら今すぐ追いかけて謝れとアドバイスした事を傑君は順を追って話してくれた。
「あー……そっか。」
違和感の正体を突き止められ、少し頭の中のモヤモヤがすっきりした気がした。
「あと、キスプリ撮って見せびらかしたかったらしいよ。」
「何、それ……」
馬鹿じゃないの、と呟くと傑君は馬鹿になるくらい世衣ちゃんが好きって事さ、とウインクした。
その男前のウインクを見ながら、やっぱ皆付き合うなら傑君ってなるよね~と思った。
優しいし、気が利くし、大人だし、色気があって。
そう思っていると不意に悟にキスされた事を思い出して罪悪感が心の中に広がった。ほろ苦くて切ない気持ちに戸惑っていると、誰かが階段を上がってくる気配を感じた。
「……悟?」
気配の主が顔を出す前に気付いた傑君が名前を呼んだ。
やや間があって下の階から悟がやって来た。
「何やってんだよ、傑。」
眉間に皺を寄せて悟は傑君を睨んで言った。
「話をしていただけだよ、悟。」
そんな怒らなくてもいいだろう?とため息を吐く傑君に対して悟は表情を崩さず、ゆっくりこちらに近づいてくる。
「悟、あのね、」
私は何とか喧嘩を避けようと二人の間に立って悟に話し掛けた。
「黙ってろ。」
こちらを見ずに悟は言った。
言わなくても怒りが伝わってきて、張り詰めた空気に飲まれそうになって足がすくむ。
でも、二人に喧嘩してほしくない一心で、悟の傍へ行きシャツの裾を掴んだ。
「悟の事、相談してた……付き合ったばかりで不安、だったの。」傑君なら悟の事いっぱい知ってるからいいアドバイスもらえるかなってさ、と緊張に負けたぎこちない笑顔で言うと漸く悟はこちらを見た。
その顔から先ほどまでの怒りは消えて、無表情だったがサングラスの奥の目は冷たく見えた。
まるで心臓をぎゅっと握られているような感覚に襲われる。錯覚だと分かっていても苦しい。それでも目を反らさず見つめ続けた。シャツを掴んだ手は恐怖に対抗するかのように自然と力が入っていた。
数秒の気まずい沈黙の後、悟の目線がシャツを掴んでいた手に移動した。
振り払われるのかな、と思った。
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